今日は昼からJACDPの研修を受講しました

JACDPというのは、 Japanese Association of Clinical Developmental Psychologists (一般社団法人日本臨床発達心理士会)の略です。ちなみに、僕は臨床発達心理士です。

神経発達症と周辺領域の薬物治療について、獨協医科大学埼玉医療センターの大谷先生の話を聞きました。ありがとうございました。

その中で、起立性調節障害※1の話が出たので、以前に読んだ本を取り出して復習してみたのです。

気づいたこととして、僕が知っている方でもう成人なので起立性低血圧障害ではないのですが、朝起きるのがとても苦手な女性がいます。

先に伝えておきますが、個人情報の関係で実際の人とは少し設定を変えています。

その方は、40才前後の独身女性です。両親と同居されています。平日は清掃関係の作業所でパートタイム労働をしています。パートでも8時間働く日と4時間働く日があって、4時間の日は比較的起きて行かれるのですが、8時間の日は休みがち、休みの日は一日中部屋の中で寝ていたり、朝早くから起きて買い物に行く日もあったりマチマチの生活だそうです。

その人から話を聞くと、仕事にはやりがいを感じていて行きたい、でも朝起きれないんです、と。

家族(お父さんお母さん)にも協力してもらったんです。

本人は目覚ましをかけているのですが、それでも起きれません。そういう前提があって、ご両親が朝起こすとき、何回か声かけをする。でも、怒ったりはしない。カーテンを開けて朝陽を部屋に入れ、布団を剥がす。夜は眠くなくても平日は21時に布団に入るようにした訳です。

半年ほどそれでやって、月6回〜8回は起きれず会社を休まれたようで。それでも続けていたら、今月は26日現時点で休んだのは2回だけと話があって。よかったですね、という話をしていたら、お母さんより以下のような話がありました。

「夜に時々ふさぎ込んだり、ぼーっとしていることがあったり、逆にイライラしていることがあるから、そう言う時は、意識的に話を聞くことにしたんです。」と。

さすが、女性だと思いました。女性は生まれながらの心理士とも言われます。※3

お母さんによると、彼女の話は会社での人間関係に関することが多いそうなんです。正規職員の誰々がパートに対して物言いが悪いとか。そういうのを、ただそうなんだ、と頷きながら聞いているだけなんですけど、彼女はそれでスッキリするようです。

なにが言いたいかと言うと、対応方法として行っていることが、思春期の女性を対象とした起立性調節障害に行っている非薬物療法と同じなんです。

でもそれで改善しているってことは、成人でも自律神経失調症(あくまで臨床診断※4)の方には、この方法で良いんだ、と振り返った今日の研修でした。(以上)

※1起立性調節障害(少し詳しく解説)

起立性調節障害とは、orthostatic dysregulation、略してODと呼ばれています。

ODは循環器系の自律神経※2障害です。身体的疾患の一面を持ちながら、心身症の要素を抱えやすく、50〜60%に不登校を併存しています。
近年は増加傾向にあり、好発年齢は10〜16歳、有病率は小学生の約5%、中学生の約10%と小学校高学年から多くなり中学校で急増しています。男女比1:1.2〜1:1.5で女子に多く、夏場に憎悪しやすいものです。

ODの診断は、以下の手順で行います。
1.立ちくらみ、失神、気分不調、朝起床困難、頭痛、腹痛、腹痛、動悸、午前中に調子が悪く午後に回復,食欲不振、車酔い、顔色が悪い 
以上11症状のうち、3つ以上、あるいは2つ以上でも症状が強ければOD疑い
2.鉄欠乏性貧血、心疾患、甲状腺など内分泌疾患など、基礎疾患は除外
3.新起立試験を実施し、以下のサブタイプを判定
①起立直後性低血圧、②体位性頻脈症候群、③血管迷走神経性失神、④遷延性起立性低血圧
4.心理社会的関与の評価

OD治療における非薬物療法とは
・ODについて理解を深める失病教育
・生活指導として、水分や塩分の摂取を心がける、就床時間の厳守、筋力低下の予防

※2自律神経とは
末梢神経の一つ。内臓の働きや血液の流れなど、生命を維持するための機能を司っている。24時間休みなく働き続けるため、自分の意思ではコントロールできない。末梢神経には、自律神経の他に「体性神経」がある。体性神経には感覚を伝える「知覚神経」、手足などの筋肉を動かす「運動神経」があり、こちらは自分の意思でコントロール可能。

※3 女性は生まれながらの心理士
記憶違いでなければ、自己啓発系ユーチューバーの鴨頭嘉人さんが話していました。男性が小さい時に仮面ライダーゴッコなどしている時から、女性はママゴトをしたりして心理の学びをしていた、だから相手の心理を読むのに長けているという話。

※4 臨床診断
患者さんの症状や病歴、そして自分の感覚から、「おそらくこの病気であろう」という推定の病名

参考文献:
起立性調節障害の子どもの正しい理解と対応/田中英高/2017年3月15日初版発行
眠れなくなるほど面白い自律神経の話/小林弘幸/2021年3月1日第1刷発行