支援者との会話の中でご利用者の事例で墓じまいについて話が出た。そのご利用者は両親がなくなっていて弟や妹がいるが遠方に住んでいるのだが、普段から連絡は取っていないと言う。実家から離れた場所で生活しており1人では墓参りにも行けないから気に病んでいるのだと言う。

 「墓じまい」とはお墓そのものを解体・撤去して片付けてしまうことである。費用は2060万円。手元には遺骨が残ることになる。尚、遺骨を勝手に処分することは墓地埋葬法でできないと決まっている。

 その為、①納骨堂などの永代供養タイプの墓で合葬・合祀してもらう。②樹木の元や海に散骨する。③手元供養する。のどれかを選ばないといけなくなる。

 墓じまいとよく似ている言葉に「改葬」がある。「改葬」はお墓の引っ越し、「墓じまい」は遺骨の引っ越し、と言う。

 墓じまいの費用が工面できないケースでは、無理に墓じまいをする必要はない。民法上は、お墓の承継者は、親族ほか、友人・知人でも可能。承継者を広げて考えるべきだと言う。ちなみに、お墓は祭祀財産(家系図などの記録物、仏壇なども含む)と言い、相続税が課される相続財産とは異なるとされる。墓を承継するとは、墓地の永代使用権と墓石の所有権を所有することと、祭具や法要の主催を含むとされている。

 ご利用者本人は僕が長男だから墓を守らないといけないと言うが墓の承継者(祭祀承継者)がそもそもその方なのかどうかを証明するもの(お墓の名義はご利用者の名前になっているのかどうか)はわからないのだと言う。

 故人の意思が示されていない場合、通常は家族の合意や意思決定に基づいて承継者は決定される。まずはご親族ないし墓地管理者(公営墓地であれば自治体窓口)に確認が必要だと感じた一件でした。(了)


参考文献小俣孝一.2023.葬式・お墓のお金と手続き弁護士・税理士が教える最善の進め方Q &A大全.東京.文響社