朝、作業所に行きたくない利用者(精神障害者)を行かせるにはどうしたら良いのでしょうか?


この題名について、今回はアドラー心理学の視点から考えてみたいと思います。また、あくまで行かない理由はこの利用者自身の「心」に問題があるとします。つまり、身体に重篤な病がある訳でもない、作業所という環境が苦手な訳でもない、利用者個人の生育歴や独自性もこの件では取り扱わないという事です。


さて、アドラー心理学と書きましたが、アドラー心理学について少し説明を。


アドラー心理学とは何かを簡単に説明します。


アドラー心理学とは、アルフレッド=アドラーという精神科医が「人は目的や目標に向かって生きる」という考えをベースに人間の行動や心理を理解するものになります。


その為、アドラー心理学は「目的論」であり、これに対する考え方が世の中の出来事を原因で説明する「原因論」です。


一例を挙げるとすると、家庭が貧しいからひねくれたと言う人がいる反面、同じように家庭が貧しいから辛抱強い性格になりました。という人がいます。


この例を先に挙げた「原因論」で考えると、結果は同じでなければならない筈です。「目的論」で考えると、貧しさは環境の諸要因の一つとなります。


また、それに対する意味づけ(原因論で考えるのか、目的論で考えるのか)はその人の態度によって異なります。


つまり、私達は経験に意味づけを行うことで見方を変える存在なんです。この意味づけの傾向をアドラーは「ライフスタイル」と呼んでいます。

意味づけによって、人生は変わる。人生にとって不適切な意味づけに本人が気づくことができたのであれば、自分の意味づけを変えることが出来るのです。何故なら、「意味づけ」自体が虚構(本人の思い込み)であるからです。


話を題名の問題に戻しましょう。


この場合、相談者(支援者)はこの課題に対して、「何が原因か」と起きない利用者に対して尋ねているのかもしれません。利用者は「(アレルギーで)目が痒いから」とか、「(仕事中に指を使いすぎて)指が痛いから」とか答えるかも知れません。


しかし、一方で時間を置くとテレビを見ていたり、指が痛いからという割に折り紙を折ったりしているとします。


明らかに言動が矛盾しています。


相談者は言動不一致を理由に、怒り出すかも知れません。怒って無理に行かせようとするかもしれませんし、行かないのならもう勝手にしなさいと利用者を放置するかも知れません、、、


結局、利用者は休むことによって何を得たのでしょうか。そこを考える視点は大事です。


様子を見ていると、丸一日布団に横になっていて、夕食時には何もなかったかのように食堂に顔を出します。夜には「明日は頑張るよ、朝起こして下さい」と言い寝ますが、翌朝はやはり起きません。行動から見てとれるのは、朝起きるのが面倒なだけのように見受けます。


さぁここでアドラー心理学※①です。


一つの解決への糸口となりますが、利用者に休んだ理由を聞くという行為はやめるべきです。

「目が痒い」「指が痛い」答えを話させることで誰が得をするのでしょうか、、、


利用者は相談者を困らせようという気持ちがないのであれば、本当は本人もその答えを知らないのかも知れません。


相談者が答えを聞くことで、「これが答えなんです。」と答えている可能性があります。


何故なら、施設に長くいる利用者ほど日課慣れします。結果的に、依存度が上がるのです。職員から質問されると本音ではない答えが口から溢れる傾向が高まることがわかっています。それが職員のイライラに繋がり虐待に繋がることも分かっています。※②


話が脱線しましたが、原因を尋ねることより、目的である仕事に行くためにはどうしたら良いかを本人と一緒に考えることが優先されるべきです。


その目的のために本人自身では難しいことを、相談者である支援員はするべきであり、本人ができることは自らさせるべきです。


そもそも目が痒くてもテレビは見れる、指が痛くても折り紙を折れるのであれば、原因論は成り立ちません。


本人の行動はどこから来るものなのだろう、そこを理解する為に私に足りていないものは何なのか、目的論で考えていく視点が大事です。「目が痒いから、休みました、」という話よりも、「仕事に行く為に、目が痒かったけど頑張りました。」という話の方が聞いていても楽しいです。本人もそのように物事を考えれるようになった方が幸せだとは思いませんか?


以上、アドラー心理学からの視点からの支援方法の一例でした。


なにか一つ参考になれば幸いです。最後まで読んで戴き、ありがとうございました。(了)


参考文献:

①図解決定版有機の心理学アルフレッド・アドラーが1時間でわかる本/中野明(2023418日第1刷発行)

②日本・アメリカ・フィンランドからみる障害者虐待の実態と構造/増田公香(2022526日初版第1刷発行)