黒曜石

 有名な産地ではないが、私の郷里の山では黒曜石が採れた。そのためか、1メートル四方の黒曜石を庭石にしている家があったぐらいだ。

 放課後や休日には、友人と気まぐれに黒曜石を掘りに行ったりしたものだが、あまりにもありふれていたので、拾ってきてもその辺に投げておいた。確かに貴石としての価値はないだろう。

 小学生の夏休みのことだっただろうか。

 友人と山の神神社の後ろの山道で遊んでいて、小さな黒曜石を拾った。

 私たちは黒曜石と言えば、ただ黒しか知らなかったのだが、それは少しおかしかった。模様が入っているのである。

 小さな石の中に白色の三角があり、更にその中に三角、更にその中に三角、と三角が三つの模様であった。ほぼ正三角形の形をしていたが、角の部分は少し丸みを帯びた鋭角であった。

 その模様を認識したとたんに全身が総毛立ち、私と友人は叫び声を上げて黒曜石を放り投げてその場を逃げ出した。

 しばらくはその場所に近づくこともできないほど怖かった。

 石に奇妙な模様が入ることなどままあるだろうに、あの時も今も、何がそれほど怖かったのかまるでわからない。