先週の土曜日は、2024年上半期の

第4回薬を使わない脳疾患の治療法

講座を開催しました。

 

最初に私が「認知症の改善に

成果を上げている、齊藤先生及び

心身機能活性療法に関して、

なぜ有効なのかを脳機能から

考察する。」というテーマで

講演をしました。

 

 

齊藤先生は渋谷区にある

特別養護老人ホーム「杜の風・上原」で

認知症改善において成果をあげ、

今は日本経営という会社で

介護福祉コンサルティングを行っており、

彼の認知症改善の方法論を

全国に広げているところです。

 

齊藤先生に関してのべた

私の講義の一部を以下にのべます。

 

「高齢者施設では、

通常高齢者のできないことを

お世話することが中心となりがちですが、

杜の風・上原では、徹底した自立支援、

つまり介護が要らない状態までの

回復を目指しているのが、

他のホームと決定的に違う点です。

 

なぜこの施設が自立支援を

めざすかといえば、

介護を取り巻く厳しい社会環境が

関係しており、今までのやり方、

つまり目の前の高齢者ができないことを

お世話するだけでは、現場の

労働環境は厳しくなる一方なので、

これからは高齢者が自分で

できるようになることを助ける

「自立支援」に軸足を移すことが

求められるようになったからです。

 

杜の風・上原の施設方針は、

その自立支援をして、

入所者をできるだけ幸せにしようと

いうことになります。

 

具体的には、「地域でも施設でも、

自分らしく暮らせる『家』に

住み続けることを支援する」

ということになります。

 

そのためには、

前述の「自立支援ケア」をめざし、

入所したときおむつをしていても、

おむつをはずしトイレで

排泄するようにもっていく

おむつゼロ活動などを通じて

元気になったら、

家に帰る「在宅復帰」の支援を

することで、

いわゆる地域包括ケアの

拠点施設となる、ということが

運営の柱になります。」

 

齊藤先生によりますと、

自立支援に興味を示している施設は

最近どんどん増えており、

風向きが変わったように

感じているそうです。

 

理由は、自立支援に保険点数が

つくようになったこともありますが、

そのほかの大きな理由として、

介護士が単におむつをかえるだけの

仕事だとやめていくことが多く、

自立支援であればやりがいがあり、

そのような施設に就職を希望する人が

増えているからだとのことです。

 

では具体的に齊藤先生の施設は

どのようなことをしているのかを

以下にのべます。

 

「人は老化に伴い、脱水、低栄養、

排便困難、運動不足のため、

認知症になることが往々にしてあります。

 

それに対処するため

彼らが取り組んでいる4つの基本ケアが、

1.1500mlの水分摂取、

2.1500Kcalの栄養摂取、

3.生理的、規則的な排便、

4.歩行を中心とした運動量の

確保になります。

 

認知症の症状をもつ利用者が

入所した直後から、

介護者がこの基本ケアに

徹底的に取り組みます。

 

そして、リハビリによる歩行の促進と、

トイレ誘導をすることによる

おむつゼロ活動により、

おむつの必要がなくなり、

介護度も改善し、

多くの人の認知症が改善して

在宅に戻るという

今までにないいい結果をだしています。

 

ではなぜ認知症になるのでしょうか。

これは、ストレスにより視床下部

(註:自然治癒力の中枢)が弱り、

それが続くことで認知の障害に

いたったと考えられます。

 

ストレスが続くことで視床下部が弱ると、

水分を適切にとったり、

栄養を必要な量摂取し、

身体をいい状態に保つ機能が落ちます。

 

身体を動かすのが次第におっくうになり、

そのためトイレに頻回に

行きたくないため、

水分補給が少なくなり、

脱水になります。

 

脱水が進行すると意識障害をきたして

認知機能が低下し、

認知症が発症するわけです。

 

つまり、視床下部が正常に

働いていれば起らないことが、

ストレスにより機能が落ちることで、

脱水に対して、

視床下部は通常それを関知して

水分を摂取することで

正常に戻そうするわけですが、

機能が落ちてそれをしなくなり、

意識障害まで至ってしまうわけです。

 

私は、これに扁桃体

(註:側頭葉に内側にあり、

右が逃げる逃走、

左が戦う闘争に関わっている)が

さらに後押しをしていると思っています。

 

扁桃体は、敵つまりストレスから

自分の身を守るためにあるのですが、

ストレスで扁桃体が刺激され続けると、

扁桃体が過剰に活性化し、

本来は守るべき自分の身を、

むしろ死の方向にもっていこうとする機

能がはいっているのではないかと

私は考えています。

 

つまり、動物界の法則である弱肉強食の

原理が扁桃体に入っており、

ストレスが続くと、敵(ストレス)は

強大で自分は弱いと思い込み、

弱肉強食の原理が働いて、

自分を弱らせ死ぬ方向にスイッチを

入れるのではないかと思われます。

 

そのように考えないと、

なぜ自分の身を守るためにある扁桃体が、

過剰に活性化すると、

自分の身をむしろ傷つけ、

はては死ぬ方向にもっていくのかが

説明できません。

 

また、扁桃体と歩調を合わせて働く

報酬系(註:快感にかかわる神経群)も

異常をきたします。

それにより、鬱や無気力、

妄想につながります。

 

 

杜の風が大きな成果をあげている

理由を、脳から解析してみます。

 

認知症になると視床下部が

弱っているので、脱水、低栄養、

便秘になり、それが認知症の症状と

結びついています。

 

それを入所当初から積極的に改善する

杜の風の治療法は、

認知症の根本原因である

弱った視床下部を元に

戻そうとすることに他ならず、

認知症を改善する

本質的な治療になるかと思います。

しかし、私がそれにもまして

認知症を改善させる一番大きな

要因であると考えているのは、

利用者に対して施設の職員が

大きな愛情をもって、

認知症の改善に取り組んでいる

ことだと思います。」

 

杜の風・上原の職員は、入所者に対して

上から目線ではなく、

同じ高さの目線で介護を行っているので、

入所者が職員に心を開き、

よくなっていくとのことでした。

 

入所者に対する細やかな心遣いは、

極めて日本的な介護だと

私は感じました。

 

 

次いで齊藤先生に

「自立支援介護における

認知症ケア理論とケアの実践」

についての講義をしていただきました。

 

 

その中の症例提示で、

アルツハイマー病で10年間

自宅にこもっていた92歳の男性が

3週間杜の風上原に入所しただけで

改善し、4月後には夏祭りに

参加するまでになったエピソードには

大変感銘を受け、

このような治療法が早く全国に

ひろがっていけばいいと感じました。

 

 

 

そして日曜日は、2024年上半期の

第2回篠浦塾健康指導師勉強会を

行いました。

 

 

指導師が若い引きこもりの女性にカ

ウンセリングを行い、

短期間で活動的になってきており、

医療相談会を経て指導師が

患者をフォローするシステムは

医療にとって大きな力になると

感じました。

 

今後の展開が大変楽しみです。

なお、今週の週末は帰郷しますので

1週間コラムをお休みします。

 

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