新緑の鮮やかな季節となりました。
初夏ですが、ときどき真夏のような気温になりますね。
八十八夜、新茶の季節でもあります。
 
さて、俗に葵祭と呼ばれる京都の祭りは、
正式には
賀茂祭
と申します。
今から約千四百年前、欽明天皇の御代に
凶作飢餓疫病に対して、祭礼を行ったのが
始まりだそうです。

著名なのは五月十五日の「路頭の儀」ですが、
五月三日の流鏑馬神事、
五月四日の斎王代御禊の儀、
五月五日の競馬会神事、歩射神事
五月十二日の御蔭祭、御阿礼神事など
前儀も見どころのあるものです。

五月十五日の路頭の儀は、実際には、前後に
宮中の儀、社頭の儀がありまして、
誰でも観られるのは、路頭の儀のみです。
宮中の儀は、現在では行われていないそうですし、
かつては、旧暦四月中の酉の日の行事であったそうです。

本来は、皇室から出される御杖代である
斎王(賀茂斎院)
がいらっしゃるのですが、現在は、
京都所縁の一般の未婚女性が
「斎王代」として、諸事を執り行います。
斎王の代理だから斎王代と言われます。
平安時代の装束を身にまとう路頭の儀など
華やか、かつ、荘厳なものです。

三大勅祭の一つで、南の石清水八祭に対して
北祭
とも呼ばれました。
平安時代で「祭」といえば、賀茂祭のことをさし、
枕草子、源氏物語、公家の日記などにも、
描かれている祭事です。

祭りの当日、すべてに、
葵鬘(あおいかずら)を飾ったことから
葵祭と称されます。

かざられるフタバアオイは、
両神社の紋でもありますが、
双葉葵も地域によっては絶滅危惧種で、
葵祭ではたくさん使用することもあって、
神社と関係者、有志の方々で、
育てていらっしゃるそうです。
茶会の花にも使えますので、
手元にあると嬉しいですね。

行列では、牛車、騎馬、女人列など
平安絵巻が観られます。

祭りにちなんで釜をかけるのは茶人の
楽しみでもあります。
京都では、葵祭が終われば、
単衣になってもよい、という
暗黙の了解があるようで。
昨今の亜熱帯化した日本では、
なかなかありがたいことです。
もっとも、特別な茶事や冠婚葬祭でもない限り、
天候に合わせて着まわせばよいと思います。
 
菓子としては、
十二単衣から、唐衣、五衣
などの袖の形をあしらったもの、
地紋に双葉葵の紋をつけたもの、
持ち物から、檜扇や笏、冠など。
季節の藤の花や葵の緑に因んだ、
紫と白のきんとんや、緑と白のきんとんなど。
きんとんは、蒸し暑くなると
あまりおいしく感じられなくなりますから、
そろそろ名残として、この時に出すのもよいですね。
 
色とりどりの緑が目に映るこの季節、
ぜひゆったりと風炉の始まりを
お楽しみいただければと存じます。
       桂月庵 記

 

<葵祭に王朝文化を偲ぶ>会記例
軸 「吟風一樣松」
花 藤

花入 竹一重切

香合 貝合わせ香合
茶器 住吉蒔絵棗
茶杓 銘「ほととぎす」
茶碗 歌人色絵茶碗(男女一対)
主菓子 袖の香
干菓子 水(雲平)、よし(有平糖)

 
 
賀茂別雷神社(通称 上賀茂神社)
https://www.kamigamojinja.jp/

賀茂御祖神社(通称 下鴨神社)
https://www.shimogamo-jinja.or.jp/

葵祭(京都新聞社)
https://www.kyoto-np.co.jp/feature/season/aoi
 
葵祭2024日程(路頭の儀・賀茂競馬・鏑馬神事・・・)
https://kyototravel.info/aoimaturi


緑輝く初夏の京 5月の和菓子 5選
斎王代【長久堂 北山店】
https://souda-kyoto.jp/blog/00704.html


葵祭 王朝の雅を感じる5月の和菓子 ~茶寮 宝泉~
https://souda-kyoto.jp/blog/00450.html