一体何が起こったのかを理解したのは二軒目の整形外科だった。肩の名医だというその医師は
「よく肩がおかしいって言ってあなたみたいな人が紹介されてくるんだけど、肩じゃなくて首です。頚椎ヘルニア」
と私に告げた。
頸椎4番と5番の間が左に出てるということがその翌日MRIで確認された。
私が思ったことは「なんで？」だった。
人より身体に気を払い、時間とお金をその調整につぎ込み、運動不足でも、逆に激しい運動をし過ぎているとも言えなかった。
「何故私が？」
お前は間違っていると、今まで自分が生きてきた道を真っ向から否定された気がした。
「どうして？そしてどうすれば？」
焦る自分に休むようにとの神の啓示だと言い聞かせた。
痛みに耐えてただじっとうずくまってただ横になることだ一日が過ぎて行く。
そんなとき、知人のピラティストレーナー葉坂多壱貴さんが「良かったら大阪まできてセッションを受けませんか？」
と言ってくださった。どうせ東京にいても何も出来ないのと、不安感から解放されたくて縋りつくような思いで新幹線に乗った。
「なぜ？どうすれば？」
その答えを知りたかった。
梅田にあるstudio DAGOBAHという葉坂さんのスタジオで3日に渡って施術していただくことになった。
葉坂さんは、私の状態を確認すると、悪さをしているのは痛んでるところではなく、もっと上だと言った。
まず頭と首の関係が良くないらしい。例えば頭を前に出すようにして頷いていたり、PCを見ていたりする。あるいは顎に溜まったストレス（歯医者に行くと「歯ぎしりしてるよね？」よく言われる）が結果としてヘルニアに繋がったという。
そして、自分の骨格が華奢でがっちりした体格の人より壊れやすいことを理解すること。
また、3日でやるところを2日でやっているようなストレスがかかっていると言われた。
施術は何が起きているのかさっぱりわからなかった。
背中の真ん中あたりを触られたり、肩を押されたり。ものによっては激痛だった。
二日目に受けた顎のリリースが一番痛かった。痛すぎて声も出なかった。終わったら小顔になりますと言われて右側だけやってもらった状態で鏡を見たら左右の顔が別人すぎて面白かった。左はその右の倍は痛かった。確かに小顔になっていたが、それよりもこれまで噛み合わせの悪さを指摘され続けて来た顎が安定したことに感動した。
一日目が終わったあと、帰りの電車の中で自分の骨組の変化に軽く気持ちの悪さを覚えた。自分がいかにストレスを溜め込んでいたのかを実感した。受けていくうちにだんだんと身体の自由がきくようになり、二日目が終わる頃にはしっかりと自分が地面を踏みしめて立てるようになっていくのがわかった。
印象深かったのは、後頭部にシャフトが入っているイメージを持って頷いてくださいと言われたときのことだ。頭を手で持たれた状態でへそに向かって顔を下ろす。
「左にずれているのわかりますか？」
と言われた。言われてみればそんな気がした。へそに鼻先を向けるようにと言われて位置を調整する。それです、と指摘もされたが、しっかりとはまった瞬間は自分でわかった。へそに向かって一本のエネルギーが通っているみたいだった。強い力がそこに生まれていた。
そして同時に怖くなった。これでもう逃げ場がなくなるのだと感じた。言い訳がきかなくなる。身体が自分のあるべきところになく、歪んだ状態はある種の逃げなのだということを感じた。
同じようなことを肩や足首でもやってもらった。三日目が終わり、スタジオを出た頃には私の身体は大きく変わっていた。一つ一つ確認をしながら御堂筋線まで歩く。足の向き、首の角度、肩の位置…。私の身体は来るときよりもずっと凝縮され収まっている印象を受けた。
今まで、無理をすることを努力することだと思っていたのだということを感じた。そしてそれは逃げであった。
ちなみにまだコルセットを外すと痛い。動けないせいで活動性が失われているようにも感じる。治るには一ヶ月以上かかるだろう。仕方がないけれど、これはきっと立ち止まり振り返る一つのきっかけを与えられたのだと思う。
今回お世話になった葉坂さんの個人HPはこちらです。
Tumblerには施術を受けてる私の写真を載せていただいてます。よく見るとたまに痛がってます笑。