「優しさって与えた人より受け取った人の方がずっと強く記憶に残る。
そういうことも書きたかったことのひとつです。」
そう語るのは『手のひらの音符』著者・藤岡陽子さん。
(※以下ネタバレになる可能性があります。)
ー 人は知らない間に一生のさよならをしている。
これで一生会えなくなると確信している別れは、
この世にどれくらいあるのだろう。 ー
年明けから、特に映像で、感動作との出会いに恵まれていたので
本を読むのは躊躇していました。
ですが、書店で見かける度に惹かれていた本作は
先日の仕事合間に、何よりも優先して読む!と決めて
読破致しました。
(結果としてその後の作曲作業にも集中できて、一石二鳥でした。)
タイトルからの予想と違って「音楽」の話ではありませんでしたが
時折巧みな回想を交え 語られていく物語は
パズルのように彼らの現在を埋めていきます。
救いようのないほど辛いシーンもあります。
それでも最後まで読み進めることができたのは、
ところどころで語られる登場人物の人生に対する考え方や言葉が、
著者藤岡さんが作家という職業の傍、看護師として勤める彼女が語る言葉の温かさが、
力強く前向きで、さりげなく私の心を捉えて離さなかったからでしょう。
過去を否定するのではなく、過去の上に成り立つ自分を、
どうやって愛していくのかー
「人によって、闘い方はそれぞれ違うんや。
だから、自分の闘い方を探して実行したらええねん。」
つまづいたとき、立ち止まりそうなとき、
そういう言葉を思い出すのかもしれない。
何かの本に書いてあったあの言葉…何の本だったっけ、とならないよう、
しばらく手元に置いておこうと思います。
天候の良さそうな週末はお出かけされる方も多いと思いますが、
たまにどっぷり読書しようと思えた時に
読むのに適しているような気がしました。