1972年2月24日 こう着状態 警察にあせり (あさま山荘事件) |   連合赤軍事件スクラップブック (あさま山荘事件、リンチ殺人事件、新聞記事)

■しぶとい"狂気の思想"(朝日)


連合赤軍事件スクラップブック (あさま山荘事件、リンチ粛清事件)-1972-02-24 朝日 朝刊03

 玄関脇につくられたいくつもの銃眼、そこから不気味にのぞいていた「銃」は近づくと、テーブルの足を切って作ったみせかけの銃だった。"にくさ"はまだある。23日の守りでも、同一人と見られるライフルマンが、山荘の表と裏から短時間に発砲し、人数を多く見せかけた、と警察はいう。20日の赤いネッカチーフ姿も、泰子さんに見せかけたニセモノだろうと、という見方もある。

 「チックショウ、うめぇなあ」-22日夜、投光器をただの一発で打ちぬかれた機動隊員、犯人のその腕前にため息をもらした。そんな犯人像に「おどしてもすかしてもびくともしない鉄の意志さえ感じる」と別の警察幹部はいうのである。


前日より装甲車を近づけ強行偵察を行っているが、成果は得られなかった。説得に返答もなければ、何か要求するわけでもない。あるのは沈黙の中の銃撃のみ。最大関心事である泰子さんの安否さえも確かめられていない。そのため焦りと不安の報道記事ばかりが目立つ。警察側は犯人に対し過大評価しはじめていた。


■ネをあげる長野県警(朝日)
<衣>
事件発生と同時に出動したため、全員が着替えを持っていない。犯人みたいな悪臭を放っては、と各所の留守番役が家族をまわって下着やセーターを集め、パトカーで軽井沢にピストン輸送している。
<食>
食事は200円の店屋物である。夜食以外は自己負担だ。あとで1日1700円の出動旅費から3食分600円が差し引かれる。ツケで頼んでいるが、飲食店が現金を要望するので、会計課長が金を取りに長野に戻ったりしている。
<人>
汚職、暴力団のベテラン刑事までが動員され、「別な重要事件が起こらなければいいが・・・」と県警幹部はこの面でもハラハラしている。


■現地記者座談会(読売)
D 人質の泰子さんはどうなっているのだろうか。
C ケガ説のほか、死亡説も一部にささやかれているね。
A 泰子さんはもう山荘にはいないという説もあるよ。逃げ込んだのは5人だが、3人しか確認できていない。だから2人は泰子さんを人質にして逃げている、という見方なんだが・・・。


■「一緒に帰ろう」坂東の母親も呼びかけ(毎日)
 「国ちゃん、お母ちゃんや。ニクソンと中国が手を結んだんだから、あんたらの役目は終わったんや」坂東国夫の母親が大津市からかけつけて呼びかけた。「こちらから撃ったりしないから奥さんといっしょにでてきてちょうだい」3人目の母は呼びかけた。「ネコかイヌかクマのようにいく山の中でしんぼうしたねえ。もういいから、その勇気で世の中を渡ってください。いっしょに帰ろ。国ちゃん、ほんとにきいてるんやね」。母親の声がむなしく谷間に流れた。


坂東君は、表情を変えず、黙って聞いていた。(「あさま山荘1972(下)」(坂口))


■その他の記事
犯人は3人という確信が高まった。(読売)
田中さん危篤状態を脱し、5分かかって紙に「牛乳が欲しい」と書いた。(毎日・夕刊)
専門家が泰子さんの状態を分析するがいずれも「もうぎりぎり」。(各紙)
警官くたくた、留置場にも"分宿"している。(毎日)