五行詩(245) | 五行詩人の散策

五行詩人の散策

ありふれた日常の中でふと思うこと、嬉しかったこと、切ない気持ちを五行で書いております。

冷めかけのカプチーノと
無理に作った笑顔

最後の優しさも
空回りする

木枯らしのオープンカフェ



=====


この寒さが

木枯らしのせいなのか

離れてしまった

二人の気持ちのせいなのか

彼には判別つかなかった


二人は他に誰もいない

オープンカフェで対峙していた

彼女が選んだカフェは

店内が禁煙

彼女は彼がヘビースモーカーだということを

忘れていたらしい


そんなちょっとドジなところが

可愛いと思えたのは

いつ頃だったろうな

と、彼は思い返していた


彼が浮気をしたとか

彼女が他に好きなヒトができたとか

そんなことなら

判りやすくて良かったのに


互いの都合の良い時間が

食事の好みが

旅行に行きたいと望む場所が

ちょっとずつ擦れ違っているうちに

彼も彼女も疲れを感じてしまったようだ


こうして向かい合っていても

目を合わす事も少ない

会話も途切れとぎれになっている


本当に言わなければいけない事を

どちらからも言い出せず

時間ばかりが過ぎていく


少し大きめのカップに入った

カプチーノからは

もう湯気は立っていない


ひゅうと木枯らしが吹きぬける

彼女はちょっとうつむいて

自分を抱きしめるような恰好で

肩をさすった


「寒いなら中に入ろうぜ・・・」

彼が促す

「ううん、大丈夫。タバコ・・・吸いたいでしょ?」

彼女は強張った笑顔を浮かべた


「・・・・・」

舌打ちしそうになるのを堪えて

彼はさっき開けたばかりの箱から

タバコを取り出し

せわしなく火をつける


彼が吐き出す煙を

木枯らしが掻き乱す

行き場の無い煙が漂う

まるで二人のように

何もかもが空回りしていた





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