乳牛たちも、最後には 「お肉」 になってしまうのです。
これが酪農の現実です。
産業動物・経済動物(僕たち人間が作ったことば) としての命。
僕自身もお肉を食べるので、こんなこと書くのはおかしいと思いますが・・・。
ただ・・・、共に・一緒にいる時間は、少しでも快適に過ごしてもらいたいと
考えています。
牛たちは、「暑いよ~」 とか 「調子わるいよ~」 とか言葉で表現できません。
僕たち人間が、細心の注意を払って観察する必要があるのです。
何か気がついた事があったら、自分で判断せずに、社長や牧場長に必ず報告するようにしています。
一番いけない事は、経験の浅い自分が勝手に判断して行動してしまうことです。
なぜなら、その間違った判断の結果、牛の尊い命を奪ってしまうからです。
酪農という仕事は、「洞察力」 が凄く大切です。そして、「常に考えること」 も大切です。
その点、山の中にある当牧場は、大自然の中にあるので、感性を磨くには大変よい所です。
毎日、「ボっー」 と物思いに日々耽っています。
この子は172番なので、「イナフキン」と
密かに呼んでいます。
以前、こんな出来事がありました。
同じ種類のブラウンスイスの150番(イゴ丸)が
お肉になってしまう日が来たときの事。
その日が来ると、牛たちもわかるようで、
鳴く子もいます。(イゴ丸は鳴いてはいません
でしたが)僕が近寄っても 「来ないでよっ!」って感じで離れていこうといしました。
そんな時、イナフキンがイゴ丸の居る場所に近寄って来て、ずっと離れずにいるんです。
それだけでなく、イナフキンの目から涙が流れていました。
イゴ丸との別れがわかったのでしょう・・・。
「そんなことあるのかよ!」って思われるかもしれませんが、事実です。
(その後、イナフキンを観察していましたが、普段は涙は出ていなかったので・・・。
いつも涙が出ている子もいます。例えば、前回登場した113番のイイサン)
仲間の子の為に流す涙・・・。僕も辛かったです・・・。
こんなこと書くのはおかしいとは思いますが、美しい涙だと思いませんか?
友の為に流す涙。
出会いがあれば、別れが来る・・・。
一日、一日を大切に過ごしていかなきゃって、教わった気がしました。
(写真はその時に撮ったものではありません。そんな時に写真を撮る気分じゃないので・・・)
最後に、理不尽な事を書いている事はわかっています。
この仕事に就いた時、ただ動物が好きなだけでは駄目だなーって思いました。
言う事を聞かない子を、しかったりしなくちゃいけないんです。
でも、搾乳が終わった時などは、小声で「お疲れ様ー」ってつぶやいています。
牛たちに伝わっているかはわかりませんが・・・。
酪農とは、かんな感じです。