いま仮に、東京23区を東京市とします。

 都道府県に占める都市の人口比率が最も大きいのはこの東京市であり、都の7割近くがここに住んでいます。

 昼間人口も多いです。


 では次に多いのは、どこでしょう。

 何と、京都市であり、府の半分以上がここに住んでいます。

 都道府県の都市のうち、その半分以上が住んでいるのは、この2都市だけです。


 では、3分の1以上が住む都市は、どこでしょう。

 これは意外とたくさんあります。

 北から、札幌、仙台、横浜、新潟、富山、金沢、和歌山、鳥取、岡山、広島、徳島、高松、松山、高知、佐賀、熊本、大分、宮崎、鹿児島といった都市です。

 47都道府県のうち、半分近くが県庁所在地に人口が集中していることになります。


 ちなみに、都道府県所在市でない都市の方が人口が多いのは、静岡県の浜松市くらいでしょうか。

 遠江国の中心都市として、駿河国にある静岡市に対するライバル意識が強く、平成の大合併で政令市になっています。

 むかし、福岡市よりも北九州市の方が人口が多かった時がありましたか。

 本稿の趣旨と外れるので、ここはいい加減ですいません。


 あれ?

 では、大阪や名古屋は?


 これがなんと、どちらも府県の3分の1以下なのです。

 ということは、大阪府や愛知県よりも人口が比率として少ないのだから、二重行政は少ないのではないでしょうか。

 むしろ、3分の1以上が住む都市、東京を除き2分の1以上という唯一の関係である京都府と京都市の方が、二重行政なのではないでしょうか。


 そうです。京都府と京都市にこそ、そのような問題はずっとあったのです。

 しかし、それは調整されてきました。

 

 役所の職員にすれば、京都府職員と京都市職員でライバル意識は多少あるようですが、それによって行政がうまくいかなくなることはありません。

 政治家が変なことを考えなければ。


 大阪市や名古屋市は、関東の東京とともに、関西と中京を代表する日本の3大都市として発展してきたというプライドがあります。

 だから、大阪府や愛知県の下にいるのは嫌だと考える政治家もいた訳です。


 そう考えると、ちょっと分かってくるかと思いますが、大阪都とは、日本を代表する大都市である大阪市をもっと強くしたいという希望から、これまでも生まれた考え方というべきでしょう。


 ところが今の大阪都構想は、大阪市をなくして大阪府に吸収するというもので、これとは逆です。

 

 たぶんもし、橋下さんが最初に大阪府知事にならずに大阪市長になっていたら、上記のような大阪市を大都市にするために大阪府の権限も自分のところに一緒にする、と素直に考えたはずです。


 地方自治も、日本国政府という中央に対する戦いであり、大阪府に対する戦いでもあって、大阪市という都市を東京市のような大都市にしたいというものだったはずです。


 東京都という、世界的にも例のないイレギュラーな行政区域を参考に、大阪都構想を考えたことも、話をややこしくしているのですが。


 また、いまのような基礎自治体重視の考え方にもならなかったでしょう。

 東京のように現在でも発展する経済都市であれば、特別区ごとに議会を置いて区議会議員さんたちに給料を払うこともできますが、大阪で議会をたくさん作る無駄をしようとは考えなかったでしょう。


 それもこれも、東京に較べて関西、大阪の景気が最近ずっと良くないからでしょう。

 一時は東京市を抜いて全国一の人口を有した大都市であった大阪市も、いまでは横浜市にさえ抜かれてしまっています。

 その閉塞感を、東京に追いつけ追い越せ的発想である大阪都構想で、夢想したいのではないでしょうか。


 気持ちは解らないでもないですが、橋下さんのように、あえて平松市長を敵に仕立てたり、堺市長に送り込んだ竹山さんに、大阪都に来て堺市長は辞めろと迫ったりする喧嘩戦法は、閉塞感を紛らすものとして大衆的人気は一時的に得ることはできるでしょう。

 しかし、大阪市を大都市にするという本来の目的からは遠ざけるものでしかないでしょうね。

 関西全体の支持も得難い発想です。


 大阪市は、京都市や神戸市、堺市と連携しながら関西を引っ張っていき、バランスのとれた日本の発展を作り上げる核になる大都市にならなければなりません。

 でも、その逆に進みかけている。


 それが解らない一部の大阪の人たちには、困ったものです。

 関西のリーダーであるべき大阪市が、関西を駄目にしようとする。


 ライバル京都には都合がいい展開かもしれませんが、ライバルとさえ考えたくないかもしれないですね、内ゲバばかりの今の大阪には。