1歳の長女は重い心臓病を抱えており、通常の保育園に入園することが難しい状況。それならば、医療的ケアが必要な子どもたちが通える保育園を自ら作ろうと決意し、高知市にお住まいの主婦、西森真実さん(41)は園の設立に向けて動き始めています。
なんというバイタリティ!陰ながら応援したいと感じるイクメンパパです。
(※2024年6月19日 朝日新聞の記事を参考に要約しています。)  


医療的ケアが必要な娘と向き合う日々、希望を胸に


4月末、自宅前で迎えてくれた真実さんは、私と挨拶を交わす間もなく、抱いていた万桜ちゃん(1)に大きく明るい声で話しかけました。「記者さん、名前に神がついてるよ。神様だね~。なんかいいことあるかもね!」
真実さんは、妊娠24週目の2023年2月に高知大学医学部付属病院で検査を受け、左心低形成症候群の可能性が高いと告げられました。この病気では心臓の左側が非常に小さく、高知での出産は難しいと説明されました。そのため、専門医のいる岡山大学病院で、2023年5月に出産を迎えました。
生後3日目、万桜ちゃんは大動脈を太くつくり直す手術を受け、8時間にわたる手術を小さな体で耐え抜きました。手術後、胸は心臓が腫れたままで縫合されず、複数の管に繋がれた状態でした。医師は「万桜ちゃんは今がんばっています。管は一本ずつ、外れていきますからね」と話し、その言葉が真実さんと夫の茂人さん(38)にとって希望となりました。
約5カ月後、万桜ちゃんは静脈の血液を肺に流すための2回目の手術を受け、ペースメーカーも装着されました。


医療的ケアが必要な子どもの保育園問題に直面し、立ち上がる決意


岡山大学病院での手術や検査の際、真実さんは同じように子どもが入院している母親たちと知り合いました。退院後も、SNSや電話で連絡を取り合っていました。
「保育園ってどうなるんだろう?」と疑問を抱いた母親たち。自宅近くに医療的ケアが必要な子どもを受け入れる保育園があるという話は聞かず、「じゃあ私、働き続けられないの?」という不安を共有していました。
その悩みは真実さん自身の悩みでもありました。そして彼女は、「入れないなら、自分で保育園をつくろう」と決意しました。


世界を渡り歩いた末に、高知で新たな道を選んだ女性の人生


真実さんは東京で生まれました。海外への憧れから、13歳で単身英国に留学し、大学と大学院で法律を研究、そして講師として教鞭を執りました。
その後、出会った日本人男性とともにイタリアのミラノに移り住み、長男を出産しましたが、事情により男性は帰国し、二人は別れることになりました。それでも真実さんはイタリアの企業で働きながら、子育てを続けました。
長男が小学校に入学する時期に帰国し、東京にある花の卸売会社で輸出業務を担当しました。オランダで開催された花の展示会に出張した際、「グロリオサ」という花を出展していた高知市在住の茂人さんと出会いました。
その後、長男が中学校に入る前に真実さんは高知市に移住しました。自身の母はこの結婚に猛反対しましたが、英国、イタリア、東京、高知と渡り歩き、留学、就職、出会い、出産と、全ての選択に後悔はないと語ります。


保育園設立への決意、娘と共に進む新たな挑戦


真実さんの次なる挑戦は、保育園の設立です。今年5月、徳島市にある「ゆずりは保育園」を運営する会社「ハビリテ」を訪問し、先例を学びました。そこでは保育士だけでなく看護師も在籍し、医療的ケアが必要な子どもたちも長時間預かってくれる体制が整っています。
夫の茂人さんは、「万桜ちゃんの状態がもっと安定してから行動した方がいいという意見もありますが、それでは何年かかるかわかりません。私たちはすぐにでも保育園を作りたいと考えています」と話します。
万桜ちゃんの心臓の形を変えるには、3回の手術が必要とされており、その3回目の手術は来年5月、彼女が2歳になる頃に予定されています。
真実さんは、「一歩ずつ進んでいけば、どんなことでも実現できると信じています。これまでの経験からそう感じています」と語ります。
そのそばで、万桜ちゃんは取材用カメラにハイハイで近づき、手に取ろうとしました。「ダメ~!」と優しくも大きな声で制止すると、万桜ちゃんは驚いた表情を見せましたが、すぐにいたずらっぽく笑ってみせました。