2月に、東京都内の認可外保育施設で生後4ヶ月の男の子が睡眠時間中に意識不明の状態となり、その後亡くなるという事故が昨年末に発生していたことが明らかになりました。睡眠中には、食事や水遊び(プール)と同様に、重大な事故が発生しやすいとされており、行政による注意喚起も続けられています。このような事故を防ぐためには、どのような対策を講じるべきでしょうか。
(※2024年3月24日(日)朝日新聞朝刊の記事を参考に要約しています。)  



 川崎市ソラスト武蔵中原保育園における0歳児の昼寝管理



2月中旬に川崎市にある私立認可保育園「ソラスト武蔵中原保育園」を訪問した際の様子を要約します。訪問時、0歳児が利用する部屋では、8人の子どもたちが布団や簡易ベッドで静かに昼寝をしていました。これらの子どもたちは、個人差はありますが、日中に約2~3時間の昼寝を取るとのことです。保育士たちは、子どもたちの安全を守るため、顔色や体の向き、呼吸の状態を5分おきに細かくチェックしており、横向きに寝ている子を見つけると、すぐに仰向けになるように体の向きを調整していました。



乳児の安全な睡眠姿勢に関する国のガイドラインとは



国は保育施設における重大事故、特に窒息事故を防ぐためにガイドラインを定めており、乳児は医師から特別な医学的理由がある場合を除き、顔が見える仰向けの姿勢で寝かせることの重要性を強調しています。この対策の一環として、保育園では昼寝時間に部屋を適度な明るさに保ち、子どもたちの顔色を観察しやすくしています。このため、カーテンを開けたり、一部の照明を点灯させたりしていますが、これによって子どもたちの睡眠に悪影響を与えることはなく、以前と変わらず安心して眠ることができるとされています。



保育園における昼寝時間の安全管理強化策



保育園では、昼寝時間の安全管理を強化するため、異変を見逃さないよう複数人体制での見守りを徹底しています。特に0歳児には、小さなセンサーを服に装着し、体動や体の向きを検知し専用アプリで表示することで、子どもたちの状態を目視と併せて細かく監視しています。このセンサーは、うつぶせ寝や体動が静止した状態が続いた際にはアラートを出し、保育士が迅速に対応できるようにしています。大塚貴士園長は、保育事故を防ぐために仰向けに寝かせることを徹底していると述べ、子どもが一時的に起きたり泣いたりしても、子どもの命を守り、保育士が心の傷を負わないよう事故防止に努めていることを強調しています。



保育施設における安全対策強化と知識更新の必要性



国や自治体は、睡眠中の窒息事故や乳幼児突然死症候群(SIDS)の防止のため、保育施設に対して仰向け寝や定期的なチェック(0歳児は5分に1回、1~2歳児は10分に1回)などの安全対策の徹底を呼びかけています。また、睡眠時に口の中に異物がないか確認することも推奨されています。しかしながら、これらの基本対策が徹底されていない施設も存在するため、保育事故を未然に防ぐための更なる努力が求められています。「赤ちゃんの急死を考える会」の小山義夫会長は、危険な保育方法を改め、国のガイドラインに準じた保育を行うこと、また行政による抜き打ちの調査を増やすなど、より厳格なチェックを求めています。これにより、保育施設での安全管理の強化と、保育士の知識更新の重要性が再確認されています。



保育事故防止への環境改善と教育強化の必要性



保育ジャーナリストであり、駒沢女子短期大学の教授である猪熊弘子氏は、保育現場における人手不足や保育者のスキル不足が事故につながるリスクを高めていると指摘しています。中には、赤ちゃんを無理やりうつぶせにして寝かせる保育者もおり、特に環境が悪い施設では、子どもを早く寝かせたいという無理な力が働くことが事故の一因となっています。また、資格がない保育者や研修を十分に受けていない保育者、長いブランクのある保育士もいることから、行政は全ての保育者が研修を受けられるようにするべきだと述べています。さらに、事故は自分たちには起こらないという先入観を持つことは危険であり、全ての園が基本対策に立ち返り、事故は決して他人事ではないという意識を持つべきだと強調しています。