最近GTXターボ(GCGターボ)をはじめ海外のターボチャージャーの選択肢が増えてきました。
しかし種類が多いので、何をどう選んだら良いのか迷いますよね。
↓下記GCGターボのHPから目ぼしいターボチャージャーを選ぶと「コンプレッサーマップ」なるものが掲載されており、閲覧することができます。
https:/ /www.gc gturbo. co.jp/g arrett. php
「コンプレッサーマップ」とは何ぞや?
下のグラフみたいな図のことで、これを読み解くことでその車と目的とする仕様に見合ったターボチャージャーを選ぶことができるのです。
しかし種類が多いので、何をどう選んだら良いのか迷いますよね。
↓下記GCGターボのHPから目ぼしいターボチャージャーを選ぶと「コンプレッサーマップ」なるものが掲載されており、閲覧することができます。
https:/
「コンプレッサーマップ」とは何ぞや?
下のグラフみたいな図のことで、これを読み解くことでその車と目的とする仕様に見合ったターボチャージャーを選ぶことができるのです。
しかし少なくとも日本語で書いてあるサイトでコンプレッサーマップの読み方を詳しく解説しているものはありません。
ちょくちょく個人で書かれているのもありますが、肝心要のところまで至っていません。
つまり、排気量何ccのエンジンの車でブースト何kPaで何馬力を狙えるのか?
上で垂れたりタービンに負担のかかる状態はどこなのか?
何回転でいくつまでブーストが立ち上がってしまったらサージングが発生するのか?
コンプレッサーマップを読み解くと、それが分かるんです。
今日は僕なりにこれを読み解いたものを解説したいと思います。
このグラフのどこをどう見れば良いのか?を。
下に添付したのは上記GCGターボさんとこのGTX3584RSというターボチャージャーのコンプレッサーマップです。ちなみにその下のはこのターボのコンプレッサー側の写真です。
このターボを例に、排気量2771ccにチューニングされたRB26DETTに搭載することを想定して解説していきます。
GCGターボのHPからGTXシリーズ→GTX3584RSのところをクリックすると、このターボの詳細スペック及びコンプレッサーマップを見ることができます。
これまで国内チューニングメーカー等から発売されていたターボの場合はコンプレッサーマップまでは公表されていなかったので、寸法などからおおよその対応馬力などを推測するしかありませんでした。
例えばコンプレッサー入口径はそのターボの最大風量(さらには発生馬力)の目安になります。
概ねコンプレッサー入口径の2乗に比例して最大パワーが決まってくるのです。
(レースカーのレギュレーションで吸気リストリクター径によってパワー制限されているのもこの理屈ですね)
ちなみにGTX3584RSだとコンプレッサーホイール入口径は67mmとなっています。
近いものでメジャーなところだとTO4Zが66.7mmです。
普通に考えるとこの2つのターボは近い最大風量となることが予想されるのですが、最近のターボはコンプレッサー入口部に「ポーテッド・シュラウド(画像1の羽根の外周側にある溝状の穴のこと)」が設けられており、最大風量付近ではそこからも空気がコンプレッサーへ導入されるので一概には推測できなくなってきました。
そこで詳細スペックを把握するために「コンプレッサーマップ」の登場です。
再度このコンプレッサーマップを見ていきます。
これまで国内チューニングメーカー等から発売されていたターボの場合はコンプレッサーマップまでは公表されていなかったので、寸法などからおおよその対応馬力などを推測するしかありませんでした。
例えばコンプレッサー入口径はそのターボの最大風量(さらには発生馬力)の目安になります。
概ねコンプレッサー入口径の2乗に比例して最大パワーが決まってくるのです。
(レースカーのレギュレーションで吸気リストリクター径によってパワー制限されているのもこの理屈ですね)
ちなみにGTX3584RSだとコンプレッサーホイール入口径は67mmとなっています。
近いものでメジャーなところだとTO4Zが66.7mmです。
普通に考えるとこの2つのターボは近い最大風量となることが予想されるのですが、最近のターボはコンプレッサー入口部に「ポーテッド・シュラウド(画像1の羽根の外周側にある溝状の穴のこと)」が設けられており、最大風量付近ではそこからも空気がコンプレッサーへ導入されるので一概には推測できなくなってきました。
そこで詳細スペックを把握するために「コンプレッサーマップ」の登場です。
再度このコンプレッサーマップを見ていきます。
縦軸:PRESSURE RATIO・・・圧力比(コンプレッサーの出口気圧/入口気圧)のことですが、ブースト圧と代えて読んでも良いかと思います。但し、圧力比1=大気圧のことで、ブースト計の表示だとここがゼロになります。
圧力比から1を引くとブースト圧に相当することになり、つまり、圧力比2.0はブースト圧1.0k(100kPa)に相当するということです。
圧力比2.5だとブースト圧1.5k(150kPa)になります。
横軸:CORRECTED AIR FLOW(LBS/MIN)・・・空気流量のことです。実際はコンプレッサーで圧縮&加熱されるので、23℃-1atmにノルマル換算された数値ですね。
単位はLBSなのでポンド(重量)で、1分間に流れる空気の質量をノルマル換算してポンドで表示されているということです。
1(LBS)≒0.454kgで換算されます。
空気流量はエンジン発生馬力に比例します。
つまりこの横軸数値から発生馬力を計算することができます。
ここでは全開時の燃料消費率270g/PS・h(いわゆる熱効率で言うと23%程度。低いですね。)のチューニングRB26DETTの想定で話をします。
この燃料消費率だと、A/F=11.0でほぼインジェクターが1分間に噴く量(cc/min)の×6倍が発生馬力(PS)に近似します。6気筒のRB26だとよく「600cc/minのインジェクターが100%噴いてるから600PSだ」などと計算したりしますよね。その想定で考えてみましょう。
このコンプレッサーマップの横軸が100(LBS/MIN)のところで何(PS)になるのか?
1(LBS)≒0.454kgですから、
100(LBS/MIN) = 45400(g/MIN)と計算されます。
つまり1分間に45.4kgの空気が流れるということ。
A/F=11.0として、その時にインジェクターから噴射しているガソリン質量は
45400/11 = 4127(g/MIN)と計算されます。
圧力比から1を引くとブースト圧に相当することになり、つまり、圧力比2.0はブースト圧1.0k(100kPa)に相当するということです。
圧力比2.5だとブースト圧1.5k(150kPa)になります。
横軸:CORRECTED AIR FLOW(LBS/MIN)・・・空気流量のことです。実際はコンプレッサーで圧縮&加熱されるので、23℃-1atmにノルマル換算された数値ですね。
単位はLBSなのでポンド(重量)で、1分間に流れる空気の質量をノルマル換算してポンドで表示されているということです。
1(LBS)≒0.454kgで換算されます。
空気流量はエンジン発生馬力に比例します。
つまりこの横軸数値から発生馬力を計算することができます。
ここでは全開時の燃料消費率270g/PS・h(いわゆる熱効率で言うと23%程度。低いですね。)のチューニングRB26DETTの想定で話をします。
この燃料消費率だと、A/F=11.0でほぼインジェクターが1分間に噴く量(cc/min)の×6倍が発生馬力(PS)に近似します。6気筒のRB26だとよく「600cc/minのインジェクターが100%噴いてるから600PSだ」などと計算したりしますよね。その想定で考えてみましょう。
このコンプレッサーマップの横軸が100(LBS/MIN)のところで何(PS)になるのか?
1(LBS)≒0.454kgですから、
100(LBS/MIN) = 45400(g/MIN)と計算されます。
つまり1分間に45.4kgの空気が流れるということ。
A/F=11.0として、その時にインジェクターから噴射しているガソリン質量は
45400/11 = 4127(g/MIN)と計算されます。
これは質量ですから、容積に換算すると、ガソリンの比重が0.75だとして
4127/0.75 = 5503(cc/min)
インジェクター1本あたりに直すと(6気筒ですから)
5503/6 = 917(cc/MIN)
見たことある単位になりましたね。
6気筒でインジェクター1本あたりの(cc/min)が馬力(PS)に近時するので、
つまり100(LBS/MIN)の時にチューンドRB26が発生する馬力は917(PS)とイメージすることができました。
但し、ここで注意したいのはこれはあくまで「コンプレッサーマップ」だということ。
ターボチャージャーは「コンプレッサー」と「タービン」の複合体で成り立っていますが、あくまで「コンプレッサー」のみの発生する風量のマップなのです。
実際はタービン側のサイズによって、エンジン背圧が変わってきて、エンジン(内燃機関)含めてのシステム圧損が変わってきます。要はコンプレッサーで送り込んだ圧縮空気がエンジンに入って行き易いかどうか?が変わります。
タービンサイズが小さくて背圧が高まると、燃焼ガスがエンジンから流出しにくくなり、そうなるとエンジンに入っていくべき過給した圧縮空気も入っていきにくくなります。
エンジンに過給した圧縮空気が入っていきにくくなると、糞詰まったような状態になり、コンプレッサーをぶん回して空気を送り込もうとしてもエンジン入っていかないので、インテーク側配管内に空気がパンパンに詰まっていきそれでもコンプレッサーから空気が強制的に圧送されるので、配管内圧がどんどん上昇します。ここの配管内圧を測定したのがブースト圧ですから、つまりブースト圧が上がるということになります。
空気の流量としては糞詰まって入っていかないのに、ブースト圧はどんどん上がる。
設定最大ブースト圧まで上がると、ウェイストゲートが開いてタービン回転数を制御してブースト圧をそれ以上上がらないようにするので、結局はブースト圧は高いけどタービン小さいせいでエンジンに空気が入って行かずに馬力が出ないという結果になります。
同じブースト圧なのに大きいタービンと小さいタービンで馬力差が出るのはそういうところと、背圧詰まることでエンジンの体積効率(シリンダーの幾何学的排気量に対して何%の混合気が有効混合気として取り込めるか)が変わるためです。
よってここで言いたいのは「コンプレッサーマップ」の風量だけで馬力が決まるのではなく、タービンやエンジン含めたトータルのシステムで決まるということです。
それらを絡めて「コンプレッサーマップ」の解説を進めます。
再び話をこのコンプレッサーマップに戻します。

このコンプレッサーマップの図のところには5種類の線が描かれています。
①サージングライン・・・一番左端を右肩上がりで急激に立ち上がるライン
②チョーキングライン・・・一番右端を右肩上がりで立ち上がるライン
③コンプレッサー回転数・・・130000とか120000と書かれたところから生じる曲線
④断熱効率ライン・・・76%、75%と書かれた等高線状の周回ライン
⑤効率ピークライン・・・④の等高線の真ん中を通る点線
実際にエンジン回してターボを作動させると、実際にその圧力・風量が発生しこの図に対して「現在値」となるポイントをイメージすることになります。
「このエンジン5000rpmの時ブースト1.3kだったらこの図のココに位置する」といった感じで。
そのポイントをここでは「リアルポイント」と呼ぶことにしましょう。
RB26チューニングエンジンをかけて、低回転からアクセル全開で立ち上がっていくとどのような軌跡で「リアルポイント」は移動していくのか。
極低回転ではコンプレッサー部分でも風量は少なく(エンジンが吸い込む空気量も少ない)、過給圧も発生していないのでこの図の左下に「リアルポイント」は位置します。
そこからアクセル全開で加速していくと「リアルポイント」は右上に向かって移動していきます。
エンジン回転に対して、風量の立ち上がりの早いターボの場合(つまりタービン側A/Rが小さく、コンプレッサーがそこそこ大きいような場合)、①サージングラインに沿うような形で立ち上がっていきます。
逆にエンジン回転数に対して風量の立ち上がりが遅いターボの場合は②チョーキングラインに沿って立ち上がります。
基本的にミニサーキット等でレスポンスよく速く走らせるには①サージングラインに近いところで立ち上がるターボが良いでしょう。
当然レスポンスも風量も大きいに越したことはありませんので。
しかしそこの性能を追求しすぎた場合はどうなるか?
エンジンがそこまで回転数上がってないのに(もしくはスロットルをあまり開けていないのに)あまりに早く風量が立ち上がり過ぎると、①サージングラインの左側に「リアルポイント」が入ろうとします。
①サージングライン
これはそもそもどういうものか?
コンプレッサーブレードが速く回転して空気を送り込もうとするけど、その下流側の配管抵抗が大きくて空気が流れにくい場合(つまりスロットル開度が小さい時とか、エンジン回転数が遅くて空気を飲み込んでいってくれないような場合)にサージングが発生し易くなります。
サージングはコンプレッサーブレードの羽根に沿って流れていた空気が剥離して「失速」する現象。
コンプレッサーブレードに羽根を離陸する飛行機の翼だとして考えると、飛行機が空気に沿って適度な角度で上昇しようとすると綺麗に揚力が発生しますが、無理矢理急激に上昇しようとすると翼の裏面で空気の剥離が生じて揚力が発生せずに墜落してしまいます。
それと同じようなことが下流配管が糞詰まったように抵抗が生じているコンプレッサーの羽根で生じて空気を送り込むことができなくなります。
空気を送り込むことができなくなった瞬間、下流配管の糞詰まりも解消されます(流さないんだから詰まらない)。すると再びコンプレッサーは剥離が解消して空気を急激に送り込むことを再開してまた糞詰まって剥離する...。これを周期的に繰り返すのがサージングです。
RB26のシングルターボ仕様でもサージングは発生し、ブーストの立ち上がり時に「シュパパパパパ」という脈動振動音を生じながら立ち上がります。
RB26のツインターボ仕様で発生する「シュコシュコシュコ」といったもう少し周期の長い脈動振動音は、低回転でエンジン側へ吸気が上手く流れていかない時に、ツインターボの吸気の合流部で2つのコンプレッサーからの吸気がぶつかり合ってケンカしお互いを封じ込めるように働きますが、圧が少しでも高い方が優先的に流れて、流れると糞詰まりが解消するのでそっちのコンプレッサーからの圧が下がり、もう一方が流れ始める...の繰り返しだと思います。
そこにターボ1機あたりが発生するサージングが起因して、瞬間的に2つのコンプレッサーからの強弱のアンバランスを誘発して上記吸気干渉による脈動が発生し易くなるのでしょう。
話を①サージングラインに戻します。
ではエンジン何回転でどれだけ早くブーストが立ち上がったらサージングを起こすのか?
おおよそは計算で求められます。
RB26のチューニングエンジンで排気量2771ccの場合を想定します。
このエンジンが4000rpmの時に画像2のコンプレッサーマップのGTX3584RSターボでブースト圧1.5kまで立ち上がった時にサージングが発生するかどうか?
2771ccの4サイクルエンジンですから、4000rpmでは1分間に2000回2771ccの吸気が行なわれます。
その時のエンジンの体積効率100%だとして(バルタイのオーバーラップ等によって吸気を積極的に取り込むエンジンようなの場合は慣性過給等によって幾何学的排気量以上に吸気が入って体積効率100%よりも高くなります。110%とか。)計算します。
2771×2000 = 5542000(cc/min)
つまり5542Lの容積の空気をエンジンは飲み込みますが、ブースト圧1.5kなのでその2.5倍の"ノルマル換算の"空気がシリンダー内に入っていきます(吸気温度23℃として)。
5542×2.5 = 13855(L)
ノルマル換算で13855(L)の空気の重量はどれだけか?
ノルマル空気密度は1.293(kg/m3)です。
つまり1m3(=1000L)で1.293kgということなので、13855(L)だと13.855(m3)なので
13.855×1.293 = 17.915(kg)
これだけのノルマル空気質量が1分間にエンジンに吸気されます。
これをポンド(LBS)に換算すればコンプレッサーマップの横軸に当てはめることができます。
1(LBS)≒0.454kgですので、
17.915/0.454 = 39.459(LBS)ということになります。
およそ40(LBS/MIN)ですね。
再び、このコンプレッサーマップを確認します。

横軸(流量)で40(LBS/MIN)、縦軸(圧力比)で2.5の交差点を確認します。
このポイントは①サージングラインよりも右側でマップの内側に位置しますよね(効率68%付近)。
ということは、このエンジンで全開加速中に4000rpmでブースト1.5kまで立ち上がったとしてもサージングは発生しないということになります。
では全開じゃなくスロットル開度50%で同じく4000rpmでブースト1.5kまで立ち上がってしまったとするとどうか?(スロットル開度小さいので実際ブーストも上がらないと思いますが、仮にの話です)
流量20(LBS/MIN)で圧力比2.5は①サージングラインよりも左側になるので、もしそのような状況になればサージング発生します。
これを読み解きながら、サージングを発生しないターボを選定することができます。
サージングを発生しにくくするには、タービン側のA/Rを大きくするなどしてエンジン低速時にタービン回転数が上昇しにくくするとか(低回転でブーストかからなくする)、コンプレッサーを小さくして配管抵抗に対して過剰に空気を供給しないようなコンプレッサーマップのターボを選定するのです。
もしくはアクセル開度が小さい時のみサージングを発生するなら、EVCなどのブーストコントローラのアクセル開度マップを使って、アクセル開度が小さい時はブースト圧が低くなるように設定すれば良いのです。
②チョーキングライン
さらに分かり難いのはこのチョーキングラインのことだと思います。
サージングについては色々書かれている文献やサイトもありますし、経験した人はイメージできるかと思いますが、チョーキング(チョーク)とは何ぞや?と。
しかし内容は簡単で「そのコンプレッサーがその回転数でそれ以上の空気を送り込めない限界ライン」のことです。
扇風機を障害物の無い広い部屋で回して風が流れている状態。これがチョーキング状態と言って良いのではないでしょうか。この扇風機はこの回転数ではそれ以上空気を流せない状態ですから。
扇風機の外径に合ったダクトを扇風機の下流側にハメ込み、そのダクトでどこかに送風を持っていこうとしたら配管抵抗が生じて風量は低下します。さらにダクトの径を途中で絞ったり、途中で曲げたりすると配管抵抗がさらに大きくなって風量はさらに低下します。
これがコンプレッサーマップで言う「②チョーキングラインよりも左側の状態」です。
ちなみにダクトの内径を極限まで絞りまくっていくと①サージングラインよりも左側へ行ってしまうのです。ダクトをの下流側を閉じると、ダクトに流した空気は逆流してきて扇風機の羽根とダクト外径との間の隙間などから抜け戻ろうとしたりしますよね。
上手くその隙間から逆流して上流に戻っていってくれると、羽根の部分で「剥離」は生じなくなりサージングは回避できます。
隙間から上流に戻して、再度その空気を羽根のところで吸入する。羽根のところでの流量を確保することでサージングラインよりも右側の状態を作り出す。
その隙間を与えてやるのが「ポーテッドシュラウド」の役割なのです。
③コンプレッサー回転数
これは読んで字のごとく、コンプレッサー = タービン の回転数のことです。
エンジンを低回転から加速していき、ブースト圧が上がっていく様子をコンプレッサーマップ上で「リアルポイント」を描いてイメージすると、図の左下から右上に「リアルポイント」は立ち上がっていきます。
画像2で見ていくと、左下の50000rpmのポイントからコンプレッサー回転数もどんどん上がっていくのが分かるかと思います。
50000→67500→85000...と上昇していきます。
先ほどのRB26のチューニングエンジンで4000rpmでブースト1.5k(150kPa)に到達するエンジンで考えると、図で見ると40(LBS/MIN) - 2.5 の交差点ですから、そこでは100000rpm弱(98000rpmぐらい)だというのが見て取れます。
この車のブーストコントローラによる設定最大ブースト圧が1.5kだとすると、そこからウェイストゲートバルブが開いてブースト圧を1.5kを保ったままエンジン回転数が上昇していきます。
エンジン回転数が上昇するということは、エンジンが吸入する空気量(即ちコンプレッサー流量)が増えていくということで、この図の右側の方へ「リアルポイント」は移動していきます。
つまり先ほどの例でいくと、4000rpmで流量40(LBS/MIN) - 圧力比2.5 の交差点で「リアルポイント」の上昇は止まり、そこから真横右側へ移動していくのです。
圧力比2.5の高さで右へ移動していくと、流量50(LBS/MIN)<ここは比例計算で5000rpm付近と思われる>でコンプレッサー回転数は100000rpmを超え、さらに右へ移動して68(LBS/MIN)あたりで110000rpm、83(LBS/MIN)付近で120000rpmに到達します。
ではこの2771ccのチューンドRB26エンジンを8000rpmまでブースト圧1.5kのまま回転させたらコンプレッサー回転数はいくつになるのか?を計算してみましょう。
計算は簡単で、先ほど体積効率100%で計算して4000rpmで39.459(LBS/MIN)と弾き出されましたから、8000rpmだとその倍の78.918(LBS/MIN)ですね。
しかし実際はコンプレッサーで圧縮されたことや高速で回転する羽根との空気摩擦によりコンプレッサー出口空気温度は上昇するため、ノルマル換算だともう少し上の領域になるかと思います。
さらに、高回転時におけるエンジンポートの慣性過給やバルタイのオーバーラップ効果によって体積効率が100%より上になっている可能性もあります。
体積効率110%だとすると、78.918×1.1 = 86.810 (LBS/MIN)となりますし、さらに吸気温度上昇を考えるともう少し上になるかもしれません。
逆に背圧が高まって排気が糞詰まって吸気も入らずに体積効率が落ちることも考えられますが。
前者の場合で考えると、この画像2のコンプレッサーマップでは130000rpm付近、右端のチョークラインに触れてしまうあたりを考えなくてはなりません。
つまり、このエンジンで体積効率110%付近で8000rpm - ブースト圧1.5kで回すと、このコンプレッサーはチョーキング(これ以上空気を流せない)状態になるということです。
チョーキングラインということは、例え回転数を130000rpm、140000rpmと上げたところでブレード(羽根)的にそれ以上の空気を流せません。
無理矢理回すとコンプレッサーがオーバーレブして負担がかかってしまいます。
もうキャパいっぱいいっぱいといったところでしょう。
このコンプレッサーはブースト1.5kだと流量はチョーキングラインで87.5(LBS/MIN)あたりです。
ここで馬力はいくつ出る計算になるか?
上の方で100(LBS/MIN)で917PSになると計算しました。
87.5(LBS/MIN)だと
917×0.875 = 802(PS)と計算されます。
コンプレッサーマップから見て、ブーストを1.6kまで上げたとしても130000rpmで88.5(LBS/MIN)あたりでそこがこのマップの流量限界になっています。811(PS)です。
それ以上ブースト圧を上げても、このタービンの想定MAX回転数が130000rpmなので逆に低い流量時にMAX回転数に到達してしまいます。
つまり、このコンプレッサーによる風量的MAX馬力は800(PS)程度と考えられます。
(あくまで270g/PS・hの熱効率のエンジンの話)
しかしコンプレッサーの断熱効率のことを考えなければなりません。
④断熱効率ライン
このコンプレッサーをブースト1.5k(圧力比2.5)で87.5(LBS/MIN)まで稼動させると断熱効率は60%あたりまで低下します。
ブレードは高回転でブン回っているけど、その回転に空気の流れが追い付かなくなってきて効率的に「回っている回転数の割に空気が流れていない」状態になります。
羽根と空気がスリップしているようなイメージでしょうか。
そうなるとコンプレッサーで圧縮された空気の温度がどんどん上昇します。
コンプレッサーで加熱された圧縮空気はその後のインタークーラーで冷却されますが、ΔT(温度低下量)が大きくなって冷却後の空気体積が減少します。
空気体積が減少するとその後のサージタンク圧が低下しますが、当然ブーストコントローラによってサージタンク圧が低下しないようにウェイストゲートバルブを閉めて、タービン回転数を上げるように働きます。
つまり、どんどん回転が上がるけど、それに比例して風速が入っていかない「効率が悪い状態」
になるのです。
ウェイストゲートバルブを閉めてタービンを目いっぱい回そうとするので、背圧も高まってエンジンの体積効率が低下することも考えられます。
何よりこの領域で使うとコンプレッサー回転数が限界付近まで高いので、軸受け等にも負担がかかりターボチャージャーとしての寿命に影響すると考えた方が良いでしょう。
恐らく70%ぐらいの断熱効率で使うのがコンプレッサーにとってもマージン持って稼動できる状態ではないかと思います。さらには回転数のMAXの9割ぐらいまでに留めておくのが良いかと。
そこはどれだけのスパンでオーバーホールするか?とか、エンジン背圧をどこまで高めるか?といった使い方含めて考えるべきところですが。
では70%付近の断熱効率で使おうとすると、このターボではどういう使い方になるか?
ブースト圧1.5k(圧力比2.5)のままで断熱効率70%に収めようとすると、画像2のコンプレッサーマップから72.5(LBS/MIN)付近になります。
馬力で言うと917×0.725 = 665(PS)となります。
先ほどのRB26だと、回転数は7300rpm付近でこの風量しょうか。
ちょっと物足りませんよね。
コンプレッサー回転数を120000rpmまでに抑えて、断熱効率も70%あたりを狙うなら、ブースト圧を1.7k(圧力比2.7)付近で使えば77.5(LBS/MIN)あたりまで流量を増やすことができます。
上記同様に計算すると、710PS/7800rpmあたりです。
チューニングRB26を長く使う想定で考えると、良いところまできましたね。
恐らくコンプレッサーマップを読み解くと、GTX3584RSはこの辺りで使うのに適したターボではないかと思われます。
では突き詰めていくとこのターボはどのようなエンジンでどのような使い方をするのが最も効率が良いのか?
それが次の⑤効率ピークラインです。
⑤効率ピークライン
これはコンプレッサーの回転数をなるべく抑えて、風量×圧力を(要は空気の分子量を)最も多く流せるか?のラインです。
空気の分子量をより多く流すということは、その空気をエンジン側が飲み込むことができるのであれば、より大きい出力を発生できるということです。
チューニングカーの場合はエンジンありきですから、エンジン仕様や目的に合わせて各ターボのコンプレッサーを見ながら最適なターボチャージャーを選択するといった流れになるでしょうね。