【あらすじ】音楽教室での音楽利用に『演奏権』(=公衆に直接聴かせる目的で演奏を行う権利)が発生するとしてJASRACが音楽教室から著作権料を徴収すると発表。要は著作権保護期間にある楽曲を演奏した時点で除外条件である教育の範疇から外れ著作権料が発生するとみなしたのである。これを受けて音楽教室業界が真っ向から反対し対立、目下係争中であるがJASRACは徴収を一方的に開始を宣言。


 JASRACは3月に約850の事業者・約7300の教室に、契約を促す文書を送付。内容として楽曲の著作権料として受講料収入の最大2.5%を支払うというもの。加えて9月末までに契約を済ませれば1年間徴収額が1割引というセコいサービス付き。

 これに対し6月末までに契約したのは21事業者36教室。教室数で見れば0.5%、個人的には多くの教室が折れてしまいもっと多いかと思われたが結局はここまでにとどまった。中立的立場になるなら善し悪しを言うのは控えた方が良いのだろうが、契約しなかった音楽教室側を褒めるべきだと思う。ただし全体の0.5%でも「僅か」という数字ではない、音楽教室側の総意として応じないということで一致団結しているからである。


 そして経過を受けたJASRAC会長(作詞家)の会見、予想通りと言おうか内容は支払いを拒む音楽教室への批判。

「会長というより作家、権利者の一人として言うと、世の中に、仕入れが全くない商売ってあるんだろうか」

「たたき売りは、がまの油やバナナが仕入れ商品で、口上を述べて売るのは技術。同じことで、教えることは技術、仕入れは音楽や歌と考えれば、仕入れ代を払うのは当たり前だ」
※ほぼコメントそのまま

 内容が支払い拒否への批判というのが今の時点では間違っている、更に発言自体も意味不明で正にやっちまったなという他無い。それは何故か。


 そもそも3月に契約文書をJASRACが各音楽教室に出したのは、その月に文化庁内の文化審議会で1つ判断が出た事による。しかし、その内容は

★JASRACの徴収開始を認める
★徴収拒否の立場をとる音楽教室には「司法判断」が出るまで督促を行わないことを求める

かなり中途半端な対応だがそこには督促を行わないようにと、はっきり明記されている。その「司法判断」については問題が表面化し直ぐにJASRAC側が提訴されてから未だ最初の判断が出ていない。長期化は誰もが予想していた事だが、ここまでTVから全く関心も持たれず泥沼化。放送局は本当は知っていて看過している確信犯ばかり。

 JASRACは音楽教室の大元が大手楽器メーカーで結局は楽器販売に繋がっていると商売であることも指摘している。しかし、音楽教室だけを見ると一般に純利益は数パーセントという教室がほとんどというデータもある。それで受講料収入の2.5%を徴収するというのはかなりの負担を強いると言える。

 「仕入れ」に著作権料が発生するというのなら本来は仕入れた時点で徴収するのが妥当。ただ、それが出来ないから使った所から支払えということなのだろう。どちらにしろ、JASRACは民間での指導は《教育》から外れているとしか恐らく思っていない。

 上同士の協議が破綻した時点で、JASRACは著作権料徴収の契約文書を配布して終わりではなく、音楽教室1つ1つに意義を説明するしか方法は無かったように思う。それをあたかも上の立場からまとめて物申すようでは何も解決するわけがない。そしてJASRACに罪があるとしたら何も取り上げないTV番組及び放送局も同罪、最早馬鹿を見るようで何の期待もしていないが。


 因みに会長会見の同日、外国映画で使われている音楽の上映権使用料の値上げを目指している問題について、8月頃の決着を予想している。これまで1作品につき18万円の定額だったものを「興行収入の1~2%」という歩合制とし、その切り替えを求めて映画館などで作る全国興行生活衛生同業組合連合会との協議を行った結果段階的な合意が得られそうというもの。ここは海外からも問題視されていたので仕方のない部分はあるが、そうなれば映画館側の負担が上がるのでチケット代にも当然影響を及ぼす可能性がある。(完)