【タイトル】
THE PIECES VOL.Ⅱ ― LIVE IN THE SEVENTIES
(エリック・クラプトン・ベスト・ライヴ)
【アーティスト】
ERIC CLAPTON
【リリース】
1988/9/30
【トラック】
[1]TULSA TIME
[2]KNOCKIN' ON HEVEN'S DOOR
[3]IF I DON'T BE THERE MORNING
[4]RAMBLING ON MY MIND
[5]PRESENCE OF THE LORD
[6]CAN'T FIND MY WAY HOME
[7]SMILE
[8]BLUES POWER

【総合評価】3.3


 70年代のライヴ音源を集めたアルバム、ただの楽曲ではなく誰かしら著名なミュージシャンと共演したヴァージョンなので作品の価値が高いことをアピールするような宣伝はしてある。それこそ20年来、30年来のファンであれば豪華に見えるかもしれないが。


 前々回、前回と『HISTORY OF ERIC CLAPTON』という「まぁまぁなベスト盤」と言えそうな作品を取り上げた。まぁまぁという表現もどうかと思うが、とにかく普通のベスト盤とは雰囲気が異なる。なのではっきりと断定はしにくい。そもそも演奏時間が長い楽曲が多くてそれが原曲もしくは原曲通りなのか正直よく分からない、それもこれもレンタル落ちで歌詞カードの類いが一切入っていなかったせいなのだが。

 それでもそのアルバムによってたとえ何も知らないという方でも、エリック・クラプトンの楽曲がどういうスタイルでどのような曲調なのか大枠ながら掴む事は出来ると思う。端的にとにかく歌よりもギターありきで各楽曲が構成されている。

 ただ、『HISTORY OF ERIC CLAPTON』と共通して収録されているのは最終曲である『BLUES POWER』のみ。しかも似たような曲調でもない、個人的には今回のヴァージョンの方が評価が良かったりもするが。


 共演している主なアーティストはボブ・ディラン、レオン・ラッセル、スティーヴ・ウィンウッドなど。さらっと紹介したがボブ・ディラン以外では恥ずかしながら辛うじてレオン・ラッセルを知っているくらい。またしてもと言おうか、詳細な日本語での説明による冊子が付属しておらず英語表記のペラッペラに薄い見開きだけの説明書きのみ。不親切だとは思ったがレンタル落ちとなったのはその付属書の不足が決定打となったのではと考える。


 『SMILE』はチャールズ・チャップリンと言えば誰でも分かる、数え切れないほどのアーティストにカヴァーされてきた楽曲でクラプトンも例に漏れずカヴァーしている。原曲よりかなりテンポは落としているが、そこまで悪くはないという感想。


 この作品はエリック・クラプトンの何かしらの楽曲集を聴いてから聴くのが適当と言える。当方が言える立場ではないが、内容を理解するにはあまり易しくない。普通なら純粋に聴くだけならば…などと「音楽は誰にでも平等」的な事も言ったりするが、今回の作品に関してはある程度勉強しておいた方が良い。率直に何の知識も無しに聴くのはあまり意味がない。


 エリック・クラプトンも70歳をとうに越えた。世界的に見れば間違いなく後世に残るアーティストだが、日本における若い世代にとっては後世に残るどころかそもそもはっきり認識されていないような気がする。それは洋楽だけではなく、邦楽でも同じ。古き良き音楽をないがしろにしているわけではないだろうが、あまりにも関心が向いていない。個人的意見として義務教育で近年のJ-popを扱うのはどうも納得がいかない、そこまでしなければ教育として音楽が近い存在にならないのかと思うと危機感しかない。この話は後々「小話」で扱うかもしれないが、とにかく若いからと言って生まれる前の音楽があまり分からないまま多感な時期を過ごす環境を普通にしてはならない。(完)