【タイトル】
無色
【アーティスト】
上原 あずみ
【リリース】
2002/11/6
【トラック】
[1]無色
[2]Lazy
[3]Tear Drop
[4]One's Love
[5]ask me
[6]Special Holynight
[7]Bye Bye My BLUE SKY
[8]Clash!Clash!
[9]Stay with me
[10]Deep Black
[11]I Love You
[12]青い青いこの地球に

【総合評価】3.8


 1984年生のシンガー。そういえば居たような…と思いながら今ではその名を全く聞かれなくなってしまった、結論から言うと第一線からではなく完全に業界から去った。その辺は追々述べる。


 [FIELD OF VIEW]の項(評75)でも触れたことはあるが所属レーベルである《GIZA》もしくはその大元である《ビーイング》の体系というのは特徴が分かりやすい。

 今回作詞は全て本人の名義だが、デビュー曲『青い青いこの地球に』だけは共同作詞として[GARNET CROW](2013年解散)のキーボード・AZUKI七の名がある。そして作曲・編曲は所属の作曲家や編曲家が主に手掛けるのだが、これらの音楽家はミュージシャンという肩書を持っている人間がほとんど。今回の作品でクレジットの多い川島だりあ・大野愛果・徳永暁人など業界では名が通っており、当然の流れで同レーベルの他アーティストにも提供が多い。

 大野愛果はバックコーラスにも参加しており、そこには宇徳敬子の名もある。これは割とよく見かける光景。要は制作からレコーディングに至るまで全てを「身内」で回している。分からない人間には全く気付かれないが、音楽好きには目に留まる要素が結構あったりする。


 今回の作品は良いかそうでないかにハッキリ分かれるのではなかろうか。セールスとしての実績を残したシングル5曲を収録し、作曲者がバラけていながらアルバムとして一体感があり非常に勢いがある。1stアルバムだが既にベストアルバムのような出来、会社として力を入れた甲斐があったというもの。

 一方で鼻にかかるその声が苦手だという方もいないわけではない。最初から最後までそこは不変であり、曲が良いからといって簡単に固定観念を覆すことは出来ない。そこは流石にどうしようもない、今回の紹介でアルバムまで聴いて印象が変われば取り上げた意味は大きいのだが。


 このアルバムに収録された5thシングル『無色』が2002年9月リリース、ところが次の6thシングルが2005年12月と3年以上の開きがある。理由はどうあれ、これからというアーティストの空白期間は「毒素」の蓄積を招く。何より戻ってきた時の反応が確実に小さくなってしまう。そのあとにリリースされたシングル及び2ndアルバムに1stアルバムをリリースしていた時の勢いは何処にもなかった。


 果ては2010年7月、契約違反による解雇。アイドルではないのだから余程の理由でないとそうそう契約解除などされない。この辺の経緯やその後についてウィキペティアでは触れていないが、いわゆる男性向けのゴシップ誌に詳しい記事があったのを読んだことがある。内容はここで詳細に伝えるような話ではない、端的に自制心の甘さが結果トラブルを招いた。普通なら記事の信憑性を疑ってかかるべきなのだが、このご時世「ウラ」がある程度取れているから記事になっているのであってそうでなければ噂でしか扱われない。その後の本人画像も出ており、それも当人と認めざるを得ないものだった。

 率直に悲劇的だとか、才能が惜しまれるだとかそういう感情は薄かった。芸能界というものは一般から見ても不条理・不合理の世界、華やかに突き進むも足を踏み外すもきっかけ1つなのだろう。そもそも今回の件は本人が多分悪い。

 契約解除の事よりも、5thシングルと6thシングルの間隔が大きく空いた事の方が勿体無いと思った。契約解除のおかげで高らかにその名を出すことが出来ないのもそうだが。


 かなり脱線しかけたので最後に所有音源であるシングル版『Special Holynight』について述べる。このc/w『fly away』が驚くほど暗く、A面との落差が半端無い。それが本人の闇かどうかは知らないが、そういう部分も当時からあったであろうことには触れておく。因みにこのシングルにはインストに加えて『Special Holynight』の別バージョンが2曲収録されている。(完)