【タイトル】
PEASANTS,PIGS&ASTRONAUTS
【アーティスト】
KULA:SHAKER
【リリース】
1999/2/27
【トラック】
[1]GREAT HOSANNAH
[2]MYSTICAL MACHINE GUN
[3]S.O.S
[4]RADHE RADHE
[5]I'M STILL HERE
[6]SHOWER YOUR LOVE
[7]108 BATTLES (OF THE MIND)
[8]SOUND OF DRUMS
[9]TIMEWORM
[10]LAST FAREWELL
[11]GOLDEN AVATAR
[12]NAMAMI NANDA―KANDANA

【総合評価】3.7


 英国ロックバンド、クーラ・シェイカー。ヴォーカルであるクリスピアン・ミルズを中心とした4人組。バンドロゴでは「A」や「H」が小文字になっていたりする。

 ブログ開始初期の頃に洋楽オムニバスである『MAX6』(評10)を取り上げたのだが、その中に『MYSTICAL MACHINE GUN』が収録されていた。イギリスで旋風を巻き起こし、日本でも1997年リリースのアルバム『K』が20万枚超えセールスを記録。普段から洋楽を嗜む方で知らない者はおそらくいない。洋楽に馴染みの無い当方でも確かに印象は強かったものの、そこからアルバムを追ってみようという気持ちまでには至らなかった。


 それが数年前レンタル落ちの商品を何気なく漁っていると見覚えのあるジャケットが。『MAX6』に楽曲やアーティストの紹介とともにモノクロのジャケットが掲載されている、それがインパクトがあって目に焼きつくほどではないが忘れてもいなかった。

 CD帯のキャッチコピーは、初見では何を言っているのかよく分からない。後々解ってくるが、おそらくバンドとりわけクリスピアンの世界観に引っ張られたのだろう。これではレンタル落ちいえども購入の決め手にはならない。しかし店舗側で「名盤」のシールが貼ってあった、成程もし何かあっても店舗がそう推していたと言い訳出来るなと思って結局購入した。


 結果からいえばそんな「保険」を掛けるほどではなかった。ロックサウンドは素人でも十分に凄さが理解できる、なおかつコーラスワークが抜群。単独のヴォーカルも魅力的ではあるが、バックの支えはかなり大きい。クリスピアンの端整な顔立ちも手伝って爆発的人気が出たのならば、本来もっと広く知られても良いはずではある。


 バンドの生命線がそのクリスピアン・ミルズ。インド宗教に傾倒しているのかこの作品でも中盤付近でインドに飛ばされる、しかし混在した音楽は音楽で実に興味を惹くものでその点はあまり問題ではない。歌詞に関してはかなり強烈でそこもロックの要素として消化は出来るが、それとは別に宗教要素が入り込んでくる。振り幅が半端無いがそういうものだと飲み込む。

 問題はクリスピアンが完璧主義者らしく制作に想像以上の費用と時間がかかっている事。加えて発言が度々極端だったり誤解されたりして叩かれるため更に紆余曲折していた模様。


 そしてこの年バンドは事実上の解散に追い込まれる。クリスピアンが一方的に脱退を表明し、活動継続が困難になってしまったのである。脱退にあたり如何にも清々しいコメントを出した当人だが、当然ながら「いやいや、脱退された方の気持ち!」と突っ込みたくなる。『MAX6』がちょうどこの時期にあたり残念がっているが、いずれにしてもバンドは5年で消滅し各々がソロ活動に入った。

 話はここで終わらない、何と2006年にバンドは再結成された。日本でもそうだが、結局音楽の核を担うヴォーカルにバンドメンバーが振り回されるのがお決まりのようだ。今度の再結成では10年以上経った今でも活動が続いており、日本でも最近では2016年に来日公演を行っている。


 正直このアルバムで一番困ったのはライナー・ノーツ。背景やら経歴やらを含めてクリスピアンの世界観を紐解こうとしているようだが、率直にただただ眠たくなる。筆者の私見まで入ると余計に難解を極める。一応10作品を超える洋楽ライナー・ノーツを見てきたが、こんなに読むのを投げ出したくなる説明はない。CD帯の訳が分からないキャッチコピーも結局そういう事なのかと思う他ない。作品内容がかなり良いだけにそこは分けて触れておく。(完)