先週からの続き。JASRACが音楽教室に対し著作権料の徴収を開始することを表明した事に対し「音楽教育を守る会」が文化庁に保留を求めた件について。文化庁内の文化審議会は、「徴収拒否の姿勢を示している音楽教室に督促をしない」補足を付けた上で徴収開始を認める答申を行った。

 これを受けてJASRACは4月1日から徴収開始の督促を行うことを決定。900事業者・7300教室が対象となり、前年受講料収入の2.5%をJASRACを収めるよう請求される。なお、9月末まで契約すれば1年間は徴収額が1割引になるというセコいキャンペーンを並行して実施。


 そもそも毎年1000億以上の徴収額のうち演奏による徴収額は全体の1/5を占める。徴収分が30%と大体10%の徴収である他の使用よりも断然に高いので、BGMで流したりカラオケで使用されるよりもよっぽど効率が良い。何も知らないと1000億という額で驚いてしまうかもしれないが、これでも最近は伸びていない。だから徴収額を増収すべく音楽教室に演奏権があると言い出したのである。

 CDのセールスが伸びない中で、ライブを行うことによって利益を生み出す傾向が最近はある。無論一部のアーティストではあるが、そうやってライブを敢行すればするほどにJASRACも徴収額を維持することが出来ている事実は知ってもらう必要がある。


 ここまで述べたが正直JASRAC側の話はどうでもいい、この回で大事なのは音楽教室側の立場。

 一説に音楽教室の総利益率は80%というデータがある、普通に考えれば儲けているのではと思ってしまう。しかしながら経常利益は0.8%というデータも同時に存在する、つまり80%の収益から様々な費用が差し引かれると本当の利益は1%にも満たない。

 JASRACが徴収するのは総利益の方から2.5%なのでこれでお分かりだろう、「黒」が「赤」に変わってしまうのである。これは大手でも当てはまる話であり、猛反発するのも関係者でなくとも納得がいく。

 次いでにもう1つ音楽教室に携わる講師の話、講師の収入というのは皆が想像するよりも恐らく低い。理由は大半が正社員ではないため、正社員となると本当に狭き門らしい。


 これらをいっぺんに解消する施策、それは同時に一番やってはいけない施策でもある。価格への転嫁つまりは値上げ、これが一番音楽離れを加速させる可能性がある。聴くよりも実際に触れる方が音楽を染み付かせる良い方法、それを一般市民の手の届きにくい場所に追いやろうとしている。音楽教室側だって、それは禁じ手だというのを知っていて実際「守る会」が徴収開始を止めようとした。

 それを文化庁はJASRACの圧に負けて徴収を認めた。今、政府に対してデモが行われているが文化庁にも差し向けてほしいくらいである。文化審議会は音楽教室の何を知ってて徴収開始を認めたのかよく分からない。


 JASRACは音楽教室からも徴収することで『秩序』を創ろうとしているのかもしれないが、音楽界がJASRACに占領されているこの状況が『無秩序』になっているとしか言いようがない。JASRACの正義は何なのだろう、歪んだ正義というかそもそも誰のための正義なのか。


 インターネットやSNSにはJASRACに対する不満が噴出している。JASRACからすれば一般人の意見など聞く耳を持たないかもしれないが、本来守るべきアーティストや作り手など音楽関係者からも疑問が出ている事まで無視する気なのか。

 今何が最悪かと言えば省庁の介入に関して非常にネガティブになっていることである、この空気では「行政」の力が及ぶ状況になるはずもない。願わくば現在係争中の裁判つまりは「司法」による、音楽教室にとって画期的な判決になるような判断を早急に出して欲しい。出したところでまたもつれるのは目に見えているが。(完)