【タイトル】
YOURS
【アーティスト】
FAIRCHILD
【リリース】
1988/9/7
【トラック】
[1]偽名の口唇
[2]悪戯の森のレイン
[3]PUPPY LOVE
[4]Q・Q・Q
[5]さよならは短い言葉
[6]アウラ
[7]おまかせピタゴラス
[8]双子のバイオリン
[9]NEUTROPIC
[10]嘆きの健康優良児

【総合評価】3.4


 これより前に発表された楽曲は当然ながら無数にあるが、ここまで時代が遡るオリジナルアルバムは今ほとんど見ることが無い。所有CDとしては無論一番古い、中古とはいえよく良い状態のまま残っていたものだと購入時に感心してしまった。


 [FAIRCHILD]はタレントとして活躍するYOUが在籍していた3人組バンド。YOUがダウンタウンのコント番組に出演していた事を知っている人間はリアルタイムで観たことの無い世代も含め割と多いが、その前から音楽活動をしていた。[FAIRCHILD]を知っていたとしても芸能活動の原点はここではなく更に前で、実はアイドルだった事を知るのはあまりいない。当方もそこまでは知らなかった。


 この作品は1stアルバム、デビューシングル『おまかせピタゴラス』及びc/w『Q・Q・Q』と2ndシングルのc/w『嘆きの健康優良児』が収録されている。全楽曲の半分で作詞をYOUが担当(連名含む)、全ての作曲をメンバーの戸田誠司が担当している。ヴォーカルは勿論YOUであるが、『NEUTROPIC』のみメインヴォーカルが戸田誠司になっている。

 YOUの歌声は誰かに似ている、まず少なくとも今の話す声とはかなり違うのでそこからの想像はしない方がいい。声質としては川本真琴に似ているが、川本と違い極端なハイトーンになることは無い。そして歌唱は[LINDBERG]の渡瀬マキ、これは似ていると言うより近いというやや遠ざけた表現が適当。

 サビが評価の核心にはならず、その前のメロディ(Bメロ)が巧い事に耳が向く。総合的に音も今に比べれば割とシンプルではあるが、イントロや間奏にも手がしっかり入っていてメインヴォーカルを支えるコーラスも手厚い。

 曲調は正に80年代という感じはするのだが、所々に用いられるメインではないサウンドに90年代前半のような雰囲気がある。今だからそういう印象で感じ取れるのであり、つまりはその先の傾向がある程度見えていた。活動は1988年の結成から約5年だがアルバムを5枚以上リリースしているあたり、先端を行くバンドだったのかもしれない。


 ただ、大ヒット曲が無かったことで知名度がそれほど広がらず後世にもあまり伝わらなかった。加えてバンド解散の原因がメンバー内の確執だった(らしい)ので、今本人が活躍していてもバンド時代に触れる機会はほとんど無い。当方過大評価しているつもりはないのだが、それだけ当時は群雄割拠していたということか。今の時代に合わせて編曲すれば、新たな音楽として今でも普通に取り上げられてもおかしくないような気がする。


 当方のように超安価で音源を入手できそうなルートがあるのなら是非とも聴いてみて欲しい、聴く価値はかなりあると思っている。「YOURS」に関してはジャケットも歌詞カードも画質の粗さに驚く、例えるなら一昔前の家庭用コピー機並みでまるで自主製作。CDはオーソドックスな色で、曲目リストも丁寧に入っていてクラシックのCDかと言いたくなる。(完)




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※余談
 YOUは宮城県の沿岸部の街を時々訪れている。ローカル番組に出演したことで公にはなったが、そこは震災の影響を大きく受けた地域の1つでもある。本人は飲食店やスナックに寄るくらいなので復興支援だとかそういう目的ではなく頻繁に訪れるわけでもないとの事で特に公にもしていなかったらしい。

 しかしながらそれが一番楽な支援になっているように感じる。公式な訪問ばかり良いように取り上げられるのは不公平、正直現地の人間からすると感謝の一方で「仕事や取材で訪れている感」がかなり透けて見えたりする。逆にただのプライベートで、取り上げられたくはないにしても現地の人間からはかなり有り難いと思われているはずである。更には宮城なら県北、岩手なら県南を中心に被害が大きかった地域がピックアップされているが沿岸部はどの地域もかなりの被害を受けたことを忘れてはならない。他県の方にあまり伝わっていない地域があり、そこを訪れる人間も多くはない。

 YOUがどこに出没するかは検索するなり今回のハッシュタグを見てもらえば判る。松島も近いので機会があれば観光に来てもらいたい。