果てがないのならするべきではないかもしれない、しかし端緒が出てくるとどうしても自分の考えを忘れないうちに活字にしておきたいと思ってしまう。

 きっかけは簡単なことで、音楽番組を観ていた身内がとある歌手に対して「この人、大した上手くもないのに何でこんなに持て囃されるの」と言われた時に的確な回答が出来なかったこと。自分なりの答えは出せるが、納得させるほどの説明となれば一言では済まない。


 この些細な話からありとあらゆる説明に繋げる前に閲覧者の方々にも問いを投げかけ、それぞれ自らの認識を確認していただく。


【命題】
世の中の「歌手」と呼ばれるアーティストのうち『上手』と『下手』の割合


算出するにあたり、条件をいくつか挙げておく。

《1.『上手』に入らないものは全て『下手』》
酷な話だが今回は順守していただく。『下手』が心苦しいなら『上手くない』でも良いがどちらにしろ否定形、判断は直感で構わない。

《2.[J-pop]に限る》
一定の技量が問われる演歌・民謡等は除く。その他パンク、メタル、ヒップホップ、レゲエ、アニソンなど範疇に入るかどうかは各々の裁量に任せる。

《3.アイドル系統は除く》
「アイドルは歌唱力ではない」だとか「上手いアイドルもいる」など不毛な議論になりそうな意見を一切排除するため。アイドルというより歌手だと思えたのなら判断対象に含めれば良い。

《4.比較での判断はしない》
この人より上だから上手、この人より下だから下手という具体的な基準は持ってほしくはない。

《5.過度な私情は除く》
「好き=上手」という感覚は否定する。あくまで客観視して判断してもらいたい。

 以上の条件から全ての〈J-pop〉の中で『上手』であると認識するアーティストがどのくらいいるか。無論正確な算出など求めない、あくまで個人の認識を大まかに確認する問い。


  当方が出した数字は

 【上手:下手=2:8】である。

 細かいことを言えば「2割近くいるのではなかろうか」という判断なので、2とは言いにくい。正確に表すならば【2弱:8強】となる。

 これを厳しいと見るのかどうか、むしろ甘めだと思う。[1:9]や[0.5:9.5]と見ても、今の状況では厳しい数字には正直思えない。

 [5:5]や『上手』が過半数だと考える意見があったとしても真っ向からの否定はしない。しかし、そのバランスで今を進んでいるのならば正直こんな停滞した状況にはなっておらず十分過ぎる位の活気と競争意識で溢れているはずである。


 この当方なりの数字を示すことによって強調したい点、それは『上手』とされる割合が少ないという点ではない。『上手』が少なくとも音楽とりわけJ-pop業界は一応の成立をするという点である。それが冒頭の話に対する回答の材料である。[上手い=売れる/売れている]という方程式は今や絶対ではない。下手でも売れる、という言い方は何とも雑で正しくはないが「ねじれ」の様な現象が生じているのは確かだろう。

 人間と言おうか日本人の心理では極端な選択を避けたいがために『普通』という選択肢を頭の中で作りたくはなる。それが良い面の一方で悪い面、もしかしたら深刻な状況であるかもしれないのに薄めようとしてしまう。だとすれば『普通』の定義とは何なのか、2択のどちらにも当てはまらなければ押し込むだけの箱になるだけなのではないか。


 2択の【命題】はせいぜいネット記事で出来るようなアンケートだろう、ゴールデンの時間帯でやるようなTV番組で正直にやればその結果に周りの大人が真っ青になる可能性がある。抽出するモニターを超がつくほど慎重に選ぶか、もしくは編集・改竄があってもおかしくない。それくらいにTVはネガティブを公然と受け入れる気は無いのである。とはいえ案外音楽の「平和ボケ」で良い結果になる可能性も十分に有るが。

 そのテーマを扱うのならば逆説的に「本当に上手いアーティスト」としてそちらをピックアップするだろう、専門家や関係者が選定すれば説得力があるようには見えるが賢い視聴者には強かに逃げたなと見透かされている。


 今回は閲覧者それぞれの考える命題の答えが出ればそれで意味をなす。ここから突っ込んだ話は次回以降になる、次回と言っても来週かどうかは未定であるしタイトルのようにいつまで述べても完全な「果て」は無いのだが。(完)