【タイトル】
食物連鎖
【アーティスト】
中谷 美紀
【リリース】
1996/9/4
【トラック】
[1]MIND CIRCUS
[2]STRANGE PARADISE (Paradise Mix)
[3]逢いびきの森で
[4]汚れた脚 The Silence of Innocence
[5]my best of love
[6]WHERE THE RIVER FLOWS
[7]TATTOO
[8]色彩の中へ
[9]LUNAR FEVER
[10]sorriso escuro

【総合評価】3.6


 1976年生の女優。はじめから女優のイメージがある方もいるだろうが、実は「桜っ子クラブ」出身。1990年代初頭の番組でメインキャラクターという役割を務めたアイドルのようなグループではあったが、後に菅野美穂や加藤紀子、持田真樹、井上晴美など多くの元メンバーが各方面で活躍する。中谷美紀もその経歴があって女優よりも歌手としてのデビューが先になっている。今やこの経歴を誰においても出すことがなく、当方もグループについては本当に微かな記憶しかない。

 女優として躍進し始めた中で、坂本龍一と出会い音楽活動を再開したのが1996年。結果「歌手・中谷美紀といえば坂本龍一」という鉄板と言っていい構図が出来上がった。決定的にしたのはその後にリリースされヒットした『砂の果実』以降かもしれないが。


 この作品が1stアルバム。個人名義では1993年にシングルを1枚リリースしているので『MIND CIRCUS』は一応2ndシングルということになる。そして3rdシングル『STRANGE PARADISE』の別バージョンも収録。

 とにかくその歌声に刮目(かつもく)すべし。今のイメージからはかけ離れているほど声が明瞭で伸びる声が実に良い。聴いていたであろう世代でも案外忘れられているので、恐らく何処かの部分を聴いた刹那痺れるように思い出すだろう。そもそもいつからあんなにおっとりした独特のイメージを持たれるようになったのかその辺がよく分からない、映画などの影響もあったのだろうか。

 当ブログでは高橋由美子、薬師丸ひろ子、内田有紀、柴咲コウ、和久井映見などの女優や同じ「桜っ子クラブ」出身の加藤紀子を取り上げてきた。個人的に、と前置きするがその中では1、2を争う実力と言える。柴咲コウに関しては音楽活動と俳優が分離されている印象を受ける、薬師丸ひろ子は独特でまた別。ここではあくまで歌唱力だけの話でその中で中谷美紀が実質1位ではないかという一人言、決定事項ではない。


 今アルバム全楽曲の半分以上を坂本龍一が作曲や編曲を手掛け、シングル曲など半分の作詞を手掛けたのがヒットメーカー・売野雅勇。売野に関しては奥村愛子の項(評91『虹色ナミダ』参照)で過去の作品をほんの一部出しているが、とにかく昭和年代に膨大なヒット曲がある。それでいて『食物連鎖』は1996年、『虹色ナミダ』が2006年と平成に入っても存在感は健在。

 『逢いびきの森で』は作詞・作曲・編曲全てを小西康陽が担当。小西と言えば昨年元SMAPの3人がインターネット放送で72時間の大型番組を行った際テーマソングを手掛けた本人。プロデュースも多いが楽曲提供も多い。

 『my best of love』は作詞・作曲大貫妙子、坂本龍一と親交があるがそもそも[シュガー・ベイブ]で山下達郎(※前々回YMOの項参照)と共に活動している。『色彩の中へ』や『LUNAR FEVER』の作詞を手掛けたミュージシャン高野寛もやはり出発点にYMOが関係している。前々回/前回とYMOを取り上げて今回の中谷美紀は必然の流れだった、単純に坂本龍一との繋がりだけではなくYMOとその周りからの大きな繋がりである。


 『TATTOO』は中谷美紀本人の作詞。一瞬「TATOO」を当方が誤記したように思われるかもしれないがそうではない。この曲は『STRANGE PARADISE』のc/wであるが、曲名を「TATOO」と誤表記している場合がある。シングルジャケットを見れば判るがはっきり「TATTOO」と表記してある。


 個人評としては後半完全に落ち着いてしまったのが残念ではあるが、それでもこのアルバムは間違いなく当ブログ閲覧者は聴くべき作品と位置付ける。2001年で音楽作品が止まっていることは非常に惜しい、歌手を隠れたプロフィールにはして欲しくない。(完)