【タイトル】
ツインズ ~スーパー・ベスト・オブ YMO 《DISC2》
【アーティスト】
YMO
【リリース】
1999/6/15
【トラック】
[1]Pure Jam
[2]Seoul Music
[3]Taiso
[4]Key
[5]君に、胸キュン。 ―浮気なヴァカンス―
[6]音楽
[7]希望の河
[8]Lotus Love
[9]邂逅
[10]Chaos Panic
[11]過激な淑女
[12]以心電信
[13]Linbo
[14]Shadows On The Ground
[15]See Through
[16]Perspective
[17]Prologue
[18]Epilogue

【総合評価】3.1


 一見聴き易そうに思える《DISC2》。ヴォーカル入りの楽曲も入っているので尚そう思えてくるが、総合すると《DISC1》あっての《DISC2》。《DISC1》を聴いて得るものがなかったと感じた場合、《DISC2》では尚更難しいものとなるかもしれない。


 [YMO]といわゆる通り名で取り上げているが正式には「Yellow Magic Orchestra」。黒魔術でも白魔術でもない黄色の魔術、つまり黄色人種による魔術である。蔑視表現に過敏な今では黒魔術や白魔術が人種を指すことに否定的な見方をするだろうが、指したところで決して蔑視ではなく明らかに奮起と向上の決意を示した表れである。

 日本にも伝統音楽は存在するが、今の音楽シーンを動かす要素にポップスを中心とした現代音楽が間違いなく入ってくる。そこに日本のオリジナリティーが確立しているかという問いかけである。それをYMOの活動時期である1970年代後半~1980年代前半当時、アイドルやロックバンドのトレンドが転換する時期にというのが着目すべき点。

 そしてYMOが影響を及ぼしたかと聞かれれば間違いなくそうだと言える。[はっぴぃえんど]では大瀧詠一や松本隆、[サディスティック・ミカ・バンド]後の「サディスティックス」にもフュージョンの大家・高中正義や後藤次利、坂本龍一も山下達郎などのレコーディングに参加していた。周りも含めてあらゆる人間がアーティストに作品を提供し更にそこから影響を受けた人間が多大に広がっていった。


 並々ならぬ細野晴臣と坂本龍一のエネルギーが増大し接触すると時に融合せず衝突を起こす、険悪と表現するものでは無いが意見の対立はあって当然。それを高橋幸宏が1つのエネルギー体として繋いでいたという3人の関係性、高橋も活動は多岐にわたり十分エネルギッシュではあるが誰かしらそういう役に徹するのがグループの掟。

 デビューは1978年だが、既に1981年には解散の空気が満ちていたらしい。しかしそこでレコード会社が自分達の都合で慰留させた模様。普通ならばそれを批判的に見たくはなる、現に翌82年は各々の活動が中心でグループとして活動していない。


 しかし1983年にリリースした『君に、胸キュン。』が最高2位にランクインする大ヒット。ヴォーカルが入っていることを踏まえればそれまでの作品と一線を画しているようにも思えるが、単純に延長線だと思っている。その後も『過激な淑女』や『以心電信』をリリースし、同年10月に年内での解散を表明。全国ツアーを行った後に〈散開〉した。

 YMOファンは1981~83年の2年をどう思っているか分からないが、果たしてレコード会社の私欲が功を奏した結果と言えるのだろうか。そこを不思議に思う一方で、一度の再結成を除けば長い間3人が揃うことも無かったのは〈散開〉を引き延ばした反動も一因となった気がする。

 一般に『君に、胸キュン。』の方が知られているが、それよりも『以心電信』の方が間奏などを含めてYMOらしさがあってこちらを推す。別のアーティストが後に同名曲をリリースしているが、(YMO本人たちが言うつもりが無くとも)当方がYMOが先に発想したものであると強調しておく。俗に言う「パクり」かどうかはどうでもいい。


 もう1つ、YMOに欠かせない人物として松武秀樹の名を挙げておく。細野や坂本が元の楽器に加え使用しているシンセサイザー、演奏に合わせ打ち込む姿はよく思い浮かぶだろうがそれだけではなく予め打ち込まれ自動演奏された音も加わっている。初期の技術からYMOとともに注目されるほど飛躍したのは松武氏の功績とされている。少しでもYMOに興味を持ったのならば頭の片隅に入れておいてほしい。


 他国と比べることもなければ対抗する気もない今のJ-pop。そもそも国内の空気にすら疑問を感じないようになってきているし、何より競争意識が感じられない。「作り手=歌い手」はまだいいが、作り手と歌い手が違うときの歌手は自分たちの事しか考えていないのかもしれない。だから現状比較対象は過去しかない。当然お分かりだろうと思うが過去と比較するのが一番不利を受けてしまうのである。(完)