先週取り上げた年末のJASRAC関連話はなんの解決も為されていないのでただただガッカリしたが、一方で12月は革新的なニュースもあった。

 周知だとは思うが、ロックバンド[GLAY]がGLAY名義の358曲に関して結婚式の使用に限り「著作隣接権」を徴収しないと発表した。どういうこと?と思うのが普通であり、何となく解っていたとしても使用回数1件で考えると大したことが無いように思えるが大きく捉えればとんでもない。この権利を手放すには相当な決断が必要なのである。


 そもそも「著作隣接権」はざっくり言えば演奏によってその音楽を広めるための権利、著作権が作った側なら著作隣接権は実演するアーティストだったりレコード会社に権利がある。録音してまとめたり、音楽を付けて動画で投稿するにしても使用には著作隣接権と著作権の両方に許可を得る必要がある。例えばCDをそのまま流す時は著作権は発生するが著作隣接権は発生しない。

 一般に結婚式で使用する音源CDを纏めたときに前記「著作権」「著作隣接権」に加えて「演奏権」と「複製権」が発生する。複製した時点で「複製権」、それを再生すれば「演奏権」が生じる。許可を得る時と実際に複製を行ったときの権利が別々なのは頭では分かっていても何ともややこしい。業者に委託する場合が多いので手続き自体はそこまで面倒では無いが地味に費用がかかる。

 とにかく音楽が金を生み出すのは複製(コピー)というところにポイントがある。私的使用にしても録音用CDには私的録音補償金という著作権料が含まれていたりする。


 話を戻すが[GLAY](及びレコード会社を運営する所属事務所)は著作隣接権を徴収せず、許諾も必要ないとしたのである。機会が限られる上に、カヴァー使用等は除外されるがこれは凄いことである。著作隣接権徴収額は大体200~400円と言われているが、年間に行われる挙式の数で考えると相当な額。無論皆がGLAY楽曲を使用するとは限らないがかなり少なく見積もって1万組だったとしても年間200万円~300万円、10年で更に桁が増える。

 著作権料も当然回りに回って分配される。よって如何に一般使用される事がアーティストにとって大事で、違法使用がたとえ違法だと知らなかったとしても罪なのかお分かりであろう。


 思えばGLAYも色々あったと関係者でもないのに述懐してしまう、コンスタントに良い楽曲を作ってライブを行えば人を呼べるアーティスト。それなのに一時期見かけなくなった、単純に活動休止や休養なら仕方ないとは思うがそんな簡単な事情だけではなかった。芸能界は薄汚く、自分から離れる者に衆望があればあるほど妬み嫉む。活字では裏事情と呼ばれる情報がいくらでも書かれているのに、口では誰も言おうとしない所に本当の闇がある。TVやラジオから特定の人間を消すことは、マジックより簡単なのかもしれない。


 「著作隣接権」のこれからについては、何とも難しい。GLAYの今の立場が立場なだけに後に続くアーティストは現れる気がしない、アーティスト毎で個別に考えたとしてもアーティストと会社で一致団結して英断を下さなければならないのである。結婚式だけで言えば[K・K]あたりが「著作隣接権」を徴収しなかったらこれは正に革命と言えるだろう。今はとにかくアーティスト側、レコード会社側が今の徴収の仕方に少しでも疑問を示さないと徴収する側への不信と非難は絶対に無くなることはない。(完)