【タイトル】
bond special!
【アーティスト】
bond
【リリース】
2002/3/21
【トラック】
[1]Victory (Mike Batt Mix)
[2]Quixote
[3]Wintersun
[4]Victory (Magnus Fiennes Mix)
[5]Oceanic
[6]Kismet
[7]Korobushka
[8]Alexander The Great
[9]Duel
[10]Bella Donna
[11]The 1812
[12]Dalalai
[13]Hymn
[14]Korobushka (Live at Royal Albert Hall)
[15]Viva! (!Del Mix)
[16]Viva! (!Del underground Mix)

【総合評価】3.1


 イギリスの《ストリング・カルテット》、ボンド。

○ヘイリー・エッガー (第1ヴァイオリン)
○エイオス (第2ヴァイオリン)
○タニア・エイヴィス (ヴィオラ)
○ ゲイ=イー・ウェスターホフ (チェロ)

 という4人構成。ヘイリーとタニアはオーストラリア出身、エイオスはウェールズ出身、ゲイ=イーはイギリス出身。


 この時平均年齢24歳。メンバー全員がモデルのような容姿でプロモーションでも大胆な露出になることもあって、当然ながら持て囃される。欧米だから半ば熱狂的になるのであって、意外と日本ではそこまでにはならない。

 特にイギリスは何でも妖艶な女性グループの例えに〈スパイス・ガールズ〉を使いたがる、1990年代末から既に後継となるグループを国民が探していただけに未だ引きずっている印象が否めない。当初のコンセプトは[ヴァネッサ・メイ・ミーツ・ザ・スパイス・ガールズ]、もはや確信犯。


 音楽の基本コンセプトが「バリアなき音楽」。クラシックの概念を打破し、今までクラシック音楽の世界では行わなかったような活動を展開していった。その点に関しては日本は見習う部分はあるだろう、見慣れないものが出てくると色物扱いして見慣れるまでに時間がかかるのが日本の良くない所。

 音楽に関してはクラシックの現代音楽版。全てがドラマティックで映画音楽のよう、この作品をサウンド・トラックと言っても通じるかもしれない。軸がしっかりしていてそこにロック要素が入ったり、民族音楽が入ったり、クラシックに寄ってみたりと実に多彩ではある。


 ただ今作品に関して個人的感想を述べれば、終始「刺さらなかった」。『Victory』は知名度もあり核となる楽曲なので印象に残るのは当然だが、その後が続かない。先に多彩と言った通りどれも全く違うテイストであると認識しているにも関わらず、心が揺さぶられる事がなかった。

 加えて良くなかったのが『Viva!』。これも『Victory』同様核となる楽曲なのだが、元のヴァージョンからアレンジした結果この曲の特長である疾走感というか緊迫感のあるテンポが失われた。台無しと言い切るのも何だが正直それに近い。実のところ[14]~[16]はボーナストラックで、今回の『Viva!』は未発表音源だったらしいが残酷な話収録されなくとも個人的に問題はなかった。

 ライナーノーツではクラシックのニセモノ感を何処か懸念していた所が見受けられたが、特にニセモノ感というものを感じることはない。伝統を重んじるだけでは聴く人間の幅をどんどん狭めていくだけだと素人は思う。


 一応これがスペシャル・パッケージ盤。ボーナストラックに加えプロモーション映像も収録、宣伝用のフォトグラフも付録され豪華ではある。状態も良かったが、結局はレンタル落ち。その事実を明かす必要があるのかと言われそうだが、こうでもしないと日本人がどれだけ洋楽に対して冷酷に興味が引いてしまうのか分かってもらえない。本当に全世代に知名度のある洋楽アーティストだけが残り、一過性や日本での認識期間が短いアーティストは活動が続いていても容赦なくアルバムがレンタル棚から落とされていく。J-popは見直され始めたが、洋楽も見直す必要がある。無論CMや芸人のネタに使用される事が全てでは無いとは思うのだが。(完)