【タイトル】
久保田早紀 ベスト・コレクション
【アーティスト】
久保田 早紀
【リリース】
1986/4/21
【トラック】
[1]異邦人
[2]ギター弾きを見ませんか
[3]真珠諸島
[4]25時
[5]九月の色
[6]オレンジ・エアメール・スペシャル
[7]キャンパス街'81
[8]上海ノスタルジー
[9]愛の時代
[10]ネフェルティティ
[11]お友達
[12]ピアニッシモで…
[13]夢飛行
[14]最終便
[15]星空の少年

【総合評価】3.4


 もしかすると1曲しか知られていないアーティスト、俗に「一発屋」などと言われたりもするがタイプも事情も皆同じではない。特に狙って取り上げるということではないが、機会があれば掘り下げていく。


 今回は久保田早紀、この名はデビューから一線を退くまでの僅かな期間に使用された名義であり本名の「久米小百合」で検索して見つかる場合もある。
 ただ『異邦人』を聴きたいのならば、この作品を参考にするまでもない。今は年代ごとにヒット曲を集めたオムニバスが数多くある、ヒットした「1979年」に関するCDにはまず間違いなく入っている。『異邦人』の「その先」に少しでも興味を持った方に向けて今回の評である。


 このアーティストはとにかく反動に泣かされた。デビューシングル『異邦人』は144万枚という驚異的なヒットとなるが何より恐ろしいのが当時本人は20代前半、それでいてあの歌声と雰囲気。曲そのものもエキゾチックな曲調で中盤からメジャーに変わるあの絶妙な間、採用されたCMも印象深いものとして効果は抜群であった。

 ところが2枚目の『25時』のセールスは8万枚弱にとどまった。何処か『異邦人』のラインを継承し個人評としては良いのだが、『異邦人』とは違い一貫してマイナー調。

 そして3枚目の『九月の色』はセールスが2万枚、オリコン50位にも入れなかった。しかしながら個人評ではこの曲が最上位、この曲は前記2曲よりも感情が前に出ている。


 以前、大ヒットした楽曲とその次の楽曲のセールスの差異を比較する企画番組があった。はっきり言って何が面白いのか、リアルタイムで大した取り上げもせず暫く経った後に数字だけ比較して視聴者の興味を惹く。ヒットした楽曲もその次の楽曲も価値としては同等、にも関わらず見方はまるで違う。
 そもそもヒットした後の「2番目のシングル」ほど聴きごたえのある楽曲はない、ということに気付いている人間は多くない。全てのアーティストに当てはまる訳ではないが、実力派には割と多い傾向。


 アーティスト「久保田早紀」はその後路線変更をするがセールスは伸びず9枚目『ピアニッシモで…』を最後に一線を退く、活動期間は僅か5年であった。 『異邦人』の反動は確かに大きいが、各シングル曲を聴いていくと本人には申し訳ないが時代が進むごとに評価に困るというのが正直な感想。


 流石にそれでこの回を締めると取り上げた甲斐が無い。1つ情報として、シングルは9枚だがその数に近いオリジナルアルバムのリリースがあり楽曲数は多い。掘り下げる余地はかなりある。

 今回の作品に関しては『25時』『九月の色』も無論聴いてもらいたいが他に個人評の高かった曲として『異邦人』のB面『夢飛行』や共にアルバム曲の『キャンパス街'81』『最終便』を挙げておく。(完)