朝倉千恵子『母の玉子焼き』

母の玉子焼き

玉子焼きを覚えたのは小学校二年生

両親は私が小さい頃からずっと
水商売をしていた

お好み焼きやさんからスタートし
焼肉屋、クラブ、スナック、スタンド、バー

幅広く事業を展開していた

幼い頃私と弟はずっと祖母と暮らし
祖母に面倒を見てもらった

大好きな祖母
おしゃれな祖母

法事のたびに祖父の遺影を前に
必ず泣く祖母

可愛いおばあちゃんだった
理想のおばあちゃん像は今も変わらず

夢は・・・
可愛いおばあちゃんになること

これは昔から変わらず
（随分途中から大きく理想と方向性が変わったことは事実だが）

祖母の白菜だけの水炊きが大好きだった

小学校に入ってもずっと鍵っ子
弟と二人一緒に過ごした

玉子焼きを教わったのは母から・・・

簡単にできるだし巻き玉子を作ることが
できるようになったのも

基礎があるからこそ

だし巻き玉子を作るために
玉子焼き用のフライパンで

なんそうもなんそうも重ねながら
だし巻き玉子を作る

とっても面倒くさい作業ではあるが
綺麗に巻いて巻いて巻いて作られた
だし巻き玉子は贅沢の極み

昨日三重県での講演を終え
実家に戻った

母は透析を終え
施設にもどらず実家で私を待っていてくれた

待っている間にだし巻き玉子を
作ってくれた

何年ぶりだろう？
母の玉子焼きを食べるのは・・・

もう５年以上は食べていない
いや、それ以上かもしれない

昔は母の手料理が嬉しかった

病気をしてからは
料理もしなくなった

私が実家に帰ると父は私の
手料理をとっても喜んでくれる

昨日は一度食事をしたにもかかわらず、
少し仮眠を取り
父が二階から降りてきた

「お願いがあるんやけど・・・」

いったんなんだろう？
父のお願いとは？

それは、
事前に買っていたカレイを煮付けてくれないかと言うことだった

夕食時は他にも沢山おかずがあったため出してこなかった

実家に戻って直ぐに冷蔵庫の
有り合わせで
酒のつまみを５点作った
（早いのだけは自慢）

そして食事をした

父が二階から降りてきたのは夜の１１時前

「遅い時間に悪いな
疲れているとこ悪いな」

二種類の魚のパックを出してくれた

鮭は小分けしてラップにくるみ、
冷蔵庫に・・・
（連携プレイをした）

カレイはその場で大根と一緒に
最後に青唐辛子を入れ煮付けた

１１時過ぎから
一緒にカレイをつまみに飲んだ

一寸前に名古屋での沖縄県フェアで
買っていた神村酒造 様の
芳醇浪漫を手に。。。

カレイの煮付けに
何度も何度も
「美味しい美味しい」といってくれた

新鮮なお魚だけに身離れがとってもよく
骨も綺麗にとれ
とっても食べやすかった

メイタガレイかな？

何年ぶりだろう？
魚の煮付けを作ったのは？

まず自分の為には作らない

好んで食べてくれる人がいるからこそ
料理はしがいがある

幸せなひとときを両親と共に過ごした

ずっと食べたいと母がいっていた
わらび餅も買って帰った

朝。。。
一緒に食べた。

昨夜お風呂にはいる前に
母が「はい。。。どうぞ」
と出してきたものが二つある

1つは老眼鏡（２、５）
もう1つはマニュキュアと除光液だった

「どないしたん？」

「あんたにあげようとおもてこうてん・・・」

と

一緒にマニュキュアをぬった

私は日頃マニュキュアはしない

母が１００均で買ってくれたマニュキュア・・・

嬉しかった

ラメ入りの綺麗なピンクだった

母は口紅もピンクが好き

久しぶりに顔を見たが
顔色もよかった

年を重ねると我が強くなる
わがままもいっぱい出る

過去に見たことのないこともする
聞いたこともない愚痴も出る

それも老い

いつかいく道

許す心を知るとイライラしない

それでも時々
自分勝手な突然の行動パターンに
一瞬ムッとする自分がいる

まだまだだ。。。

両親と一緒に過ごせる時間
至福の時

会うたびに老いていく両親

親孝行にし過ぎはない

しかしながら
どれだけ親孝行ができているだろうか？

まだまだだ・・・

「今年はな
次から次へといろんな事が起こるねん

試されてるんかな？」
と私が父にいった

父と色々話しもした

父が一言
「無理したらあかん・・・」

親に心配かけたくなくて
言っていないことも山ほどある

泣きそうになったが

グッとこらえた

「無理したらあかん・・・」

この言葉は深くて重い