境内の桜が咲く季節となりました。

 二本あるうち一本は四月三十日にほぼ満開となり、今は散りはじめています。もう一本は一週間ほど遅れ、ちょうど今が見ごろです。お近くの方はお参りのついでに、どうぞご覧ください。


 張継の詩の一節に、こんな句があります。


 年年歳歳花相似
 歳歳年年人不同


 花は毎年同じように咲くが、人は毎年同じではない。相似たり、同じようにですし、花ももちろんよく見れば少しは変っているのでしょう。人もまた、よきにつけ悪しきにつけ、変っていきます。


 有名なフレーズですので、小説を読んでいるとたまにこの句に出会います。今ぱっと思い出すところで阿刀田高『サンジェルマン伯爵考』と、阿川弘之『年年歳歳』。ところがこのふたつの作品、物語の場所も時間も違えば、この句の使い方もまるで異っている点で、面白いです。ただ、それぞれの作品において重要な位置にあるのは同じです。そこまで紹介してしまうような野暮はしませんので、興味を持たれた方は一度ご覧ください。


 雪のある頃に比べれば、ずいぶんと暖かくなってきましたが、まだ春の陽気を感じる日はあまりありません。もしかすると、私がじじむさくなって、寒がりになってしまっただけかもしれません。そんなふうに変ってしまっただけかもしれません。人同じからず。


~新川の社務所から~-201105101328000.jpg