背の山を越えし時に、阿閇皇女(あへのひめみこ)の作りませる御歌


0035これやこの 大和(やまと)にしては わが恋ふる 紀路(きぢ)にありといふ 名に負(お)ふ背(せ)の山
阿閇皇女


【折口信夫訳】これがその、即大和の國でいうて見れば、私がこがれてる夫の君の、夫《セ》といふ名を持つた、それでゐて、紀州に在るといふ、背の山であるのだ。


【愚訳案】
これが 大和にいるとき
恋こがれていた 背の山
ここから向こうは紀伊国
もう畿内ではないのだと


●原文
越勢能山時阿閇皇女御作歌
此也是能 倭爾四手者 我恋流 木路爾有云 名二負勢能山