0027よき人の よしとよく見て よしと言ひし 吉野よく見よ よき人よく見つ
天武天皇


紀に曰はく「八年己卯(きぼう)の五月庚辰(かうしん)の朔の甲申(かふしん)、吉野の宮に幸す」といへり。


【折口信夫訳】昔偉い人が、吉野をつく/”\と見て、いゝ處だというて、吉野と名をつけた此吉野を、其方等も、よく見るがよいぞ。昔の偉い人も、よくみたことである。(これは恐らく、昔から吉野に仙人がゐたといふ傳説があるから、それらの人が、其景色を愛でゝ棲んでゐた、といふことを根柢として、作られたものであらう。同音同義の語を頭韻風に用ゐてゐるが、其幼稚な技巧が、簡素な内容に適當してゐてよい。)


【愚訳案】

立派な人が、よいところだと見なし
じっくり見て「よい」と言った
この吉野をよく見なさい
その立派な人も じっくり見たのだから

日本書紀には、「天武天皇の八年五月六日、行幸される」とある。



●原文
天皇幸于吉野宮時御製歌
淑人乃 良跡吉見而 好常言師 芳野吉見与 良人四来三


紀曰、八年己卯五月庚辰朔甲申、幸于吉野宮。