2008年11月5日第2回期日  意見陳述書 (弁護士渡邉恭子) | 新宿区ホームレス生活保護裁判を支える会blog

2008年11月5日第2回期日  意見陳述書 (弁護士渡邉恭子)

平成20年(行ウ)第415号,第539号
生活保護開始申請却下取消等請求
原告 Y
被告 新宿区
処分行政庁 新宿区福祉事務所長

                   意見陳述書

                              2008年(平成20年)11月5日
東京地方裁判所民事第2部D係  御中
原告訴訟代理人 弁護士 渡 邉 恭 子

先ほど,原告代理人の酒井から,貴裁判所の判断に社会的な意義があることを申しあげました。それに関連して一点だけ述べます。
さる8月13日,東京地裁の民事2部に対し,本件の関連事件として申し立てた仮処分事件において,裁判所は全国の裁判例,裁決例にもおよそ類のないきわめて特異な法解釈を展開し,ホームレスになった人が生活保護の申請に来たら「稼働能力を活用していない」ものとして申請を却下することを是認しました。およそ路上生活に陥る際には,何らかの何かがあってのことですから,8月13日決定は,自立支援に行かなければなんとでも理由をつけて生活保護を受けさせなくてよいと,司法府がお墨付きを与えたということなのです。
東京都台東区では,これまで,路上生活者が居宅保護を希望して生活保護申請をした場合,保護開始決定まで民間の簡易旅館等で待機するための宿泊費を支給していました。ところが,このたびそれを改め,自立支援システムを利用しない者には,保護開始決定までの宿泊費を支給しないことにしました。自立支援システムを利用しないのであれば,開始決定までの2週間は外で寝なさいというのです。
このような運用は10月27日から始まりました。
10月半ばに開催された東京都の会議で新宿区より示されたのが,8月13日決定であったということです。
10月27日に台東区に生活保護を申請した路上生活者の中には,結核を患っている方もいました。その方も,路上に放り出されました。
これから寒くなります。東京でも冬は凍死者が出ます。
すでに,8月13日決定は,全国の福祉現場が支援者と協同し手探りで築いてきた運用に混乱をもたらしています。裁判所の責任は極めて重大です。
適切な法の解釈適用,及び,人権に対する配慮を,切にお願いする次第です。
以上