真珠のため息 -5ページ目

オレンジ②

気付いてたかなぁ??
昨日の帰り、自転車の後ろに乗せた七菜子が小さく感じて、少しでも一緒にいたくて遠回りして帰ったこと。いつもより、スピードを出して困らせたのは、背中に感じる南菜子の温っかさを忘れないようにさ。


バスに乗るとき少し躊躇った。俺は、これでいいのかって…でも、今はきっとこうするしかないんだ。
バスの窓から見える夕日は、もう沈みはじめていて、今まで見たことないくらい綺麗なオレンジだった。

そろそろ南菜子が、俺のいなくなった部屋に来る頃だ。

突然、バスの後ろから雨が降り出した。一瞬の内に雨は辺りを濡らした。まだ街はオレンジに染まったままで空は晴れたままだった。きっと、南菜子が泣いている。

バスは慣れない大きな駅に着いた。見知らぬ街まで行く夜行列車の発車まで、まだだいぶ時間がある。
俺は公衆電話を探した。ケータイは、部屋に置いてきた。南菜子といつまでも繋がっていたら、離れていく意味がないから。

ケータイがなくたって、忘れる事のない番号。ボタンを押す手が震えていた。これが最後だ。迷惑ばかりかけてきた俺の最後のわがままだ。

(つづく)

オレンジ①

俺は、この街を出てく。
ごめんな、七菜子…。

七菜子と俺は、この街でずっと暮らしている幼馴染み。
誰よりもお互いをわかりあっていて、二人はいつまでも一緒にいられると思ってたのに…。

誰もいない夕方のバス停、今まで過ごしてきた沢山の思い出がよぎっている。
小さい頃から、七菜子はいっつも一緒にいてくれたんだなぁ。

小学校も中学も高校も入学式の席が隣同士だった。
なぁ??南菜子、お前ゎいつから俺を好きでいてくれたんだ?
なんか、照れくさくて上手く話せない時もあったよな。『学校では話しかけるな』とか言ってたっけな…
なのに、そんな俺に南菜子は愛想つかすなくずっと隣にいてくれた

(つづく)

オレンジ(曲)

小さな肩にしょいこんだ
僕らの未来は
丁度今日の夕陽みたいに
揺れてたのかな

いたずらな天気雨が
バスを追い越して
オレンジの粒が街に
輝いている

遠回りをした
自転車の帰り道
背中に温かな鼓動感じてた

『さよなら』と言えば
君の傷も少しは癒える
だろう
『会いたいょ』と泣いた声が今も胸に響いている


不器用すぎる二人も
季節を越えれば
まだ見ぬ幸せな日々
巡りあうかな??

なんとなく距離を保てなくてずハニカンでは
歯がゆい旅路の途中で
寝転んだね

『さよなら』と言えば
君の傷も少しは癒えるだろう
『会いたいょ』と泣いた声が今も胸に響いている


人波の中でいつの日か
偶然に出会えることがあるのなら
その日まで…

『さよなら』
僕を今日まで支え続けてくれた人
『さよなら』
今でも誰より大切だと思える人

そして何より二人がここで共に過ごしたこの日々を

隣にいてくれた事を僕は忘れはしないだろう


さよなら…
消えないように
ずっと 色褪せぬように

『ありがとう…』