HOTEI POI

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selfish analysis of tracks sound like Hotei and BOOWY
布袋っぽい音をわがままにランダムに紹介しています

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デスペナルティ×ジョン・ライドン

アレンジャー布袋としての意欲作

 

CHU-RU-LU はBOOWYの3rdアルバムB面の2曲目に入っている氷室氏の作詞作曲による作品なので、ここで取り上げるものではないと思われがちですが、そんなことはありません。 

BOOWY期は、この曲の他にも氷室氏の曲をたくさん編曲している布袋氏ですが、編曲力の秀逸さが発揮された作品として、このCHU-RU-LUをあげておきたいですね。

 

この曲は、氷室ファンならご存知、デスペナルティ(氷室氏、松井氏がBOOWY以前に在籍した高崎のバンド)が79年のバンドコンテスト出場で発表した彼らの代表曲。 

デスペナルティ CHU-RU-LU   (1979)

氷室氏が相当なやんちゃな人だったことが想像できるショットです(カツアゲされたら絶対に反抗できない感じ(笑))が、歌声はもうこの頃から仕上がっています。20歳前後でこの完成度はハンパないですね。

曲のほうは、ロックというよりは、ザ・歌謡曲で、アレンジも懐かしいお茶の間な感覚がします。

 

BOOWY結成後は、パンク・ニューウェーブ的なアプローチで突き進むこととなったので、氷室氏の歌謡曲的な世界観はなくなったのですが、BOOWYの3rdアルバムで転機が訪れます。

BOOWYの3rdアルバムで、デスペナルティのCHU-RU-LUを取り上げた理由は、以前、Dreaminのところでも書きましたが、2ndまでのニューウェーブ感覚にメロディアスさやポップさを加えたいというコンセプトがあり、それを実現するために、氷室氏がそれまで封印にしていたメロディ重視の曲を選択肢にあげてきたのではないかと推測します。そして、きっとホテイなら、カッコよくアレンジしてくれるだろうという氷室氏の大きな期待があったんだと思います。

 

で、その期待に応えるために、布袋氏が取り入れたスパイスは大きく2つありまして、

その1つめが、ジョン・ライドン氏。

元セックス・ピストルズで、80年代以降はPIL(Public Image Ltd )として活躍した人です。

 

こちらの曲が、CHU-RU-LU のメインテーマのフレーズとなる大もとであると断言できます。

Public Image Ltd - (This is Not a) Love Song (1983)

メインのフレーズをビックリするくらい潔く拝借している感じなのですが、この素材にCHU-RU-LUのメロディをのっけようなんて誰も思わないですもんね。

当時のPILを知っているファンからすれば、CHU-RU-LU については、「おいおい!何をしてくれてんだ!」って人と、「おーオシャレじゃん!」って人に分かれたと思います。私は両方でした(笑)

 

で、さらに布袋氏が取り入れたもう1つのスパイスとしては、

キリング・ジョーク

Killing Joke - Change (1980)

こちらは、メロディやコード進行ではなく、曲全体を構成するリズムの構造をマネているのがわかります。

PILとキリング・ジョークは、どちらもスタイル的には似ていて、80年代のポストパンクといわれていました。古いスタイルに固執することなく、わりとストイックにパンク以降の新しい音楽を模索していた人達だといえます。

このタイプの音楽は、リズムで全体を引っ張っていき、ボーカルも歌い上げるというよりは、雰囲気を醸し出して拡がりを作るというようなスタイルだといえます。

 

なので、布袋氏の頭の中では、PILやキリングジョークのようなポストパンク的無機質なバックトラックに、デスペナルティのこってり歌謡曲メロディだけを乗っけることで、新しいCHU-RU-LUのミックスが仕上がる=デスペナルティの油が全部削ぎ落されて、氷室氏の旨味成分だけが残った感じになる と計算していたんだと思います。

結果的に他に類を見ない、絶妙なラブソングになったといえます。

(ジョン・ライドンは、This is Not a Love Song と歌いましたが、CHU-RU-LUはThis is a Love Song だといえます)

 

こういった柔軟な発想は、作曲力というよりは編曲力であり、アレンジャーとしての布袋氏のセンスが垣間見えるところであります。単にミックスしただけじゃねえか!パクってるじゃねえかぁ!と言われればそれまでなんですが、大衆音楽というのは、共通性のないものをミックスすることで生み出されていく文化であるともいえます。発想し具現化する力があれば、それは表に出されるべきであります。

 

BOOWYの音楽性を手短に表現する言葉として、常に頭をよぎるのは、

歌謡曲×パンク・ニューウェーブ

という公式なのですが、メインとカウンターを常に意識して、どこにも属さないという自分達のポジションを確立するのがBOOWYの真骨頂であり、その中でも、このCHU-RU-LUは限りなくポストパンクに近づいた逸品ともいえます。

 

BOOWY / CHU-RU-LU (1985)