「あの人はうちのお父さんとはちょうどおまえたちのように小さいときからのお友達だったそうだよ。」

「ああだからお父さんはぼくをつれてカムパネルラのうちへもつれて行ったよ。あのころはよかったなあ。ぼくは学校から帰る途中たびたびカムパネルラのうちに寄った。カムパネルラのうちにはアルコールラムプで走る汽車があったんだ。レールを七つ組み合せると円くなってそれに電柱や信号標もついていて信号標のあかりは汽車が通るときだけ青くなるようになっていたんだ。いつかアルコールがなくなったとき石油をつかったら、缶(かま)がすっかり煤けたよ。」

『銀河鉄道の夜』三、家

 

❛Your father and Campanella's father were close friends just like you two when they are little.❜

❛Oh, that's why dad used to take me sometimes to Campanella's house. Everything was so good then. I used to go all the time on my way home from school. They had a train that ran on an alcohol burner. When you hooked up seven rails it made a circle with telegraph pole and signals, and the train could only go when the signal light turned green. Once we ran out of alcohol so we put in some kerosene, but the little boiler got all sooty.❜

 

「あなたのお父さんと、カムパネルラのお父さんは、彼らがかわいらしい少年だった時、まさにあなたたち二人のように親密なすきまのない友だち同士だったよ。」

「ああ、そういうわけだから、お父さんは私をときどきカムパネルラの住宅へとつれていった。あのときはすべてがとてもよかった。私は学校から家への途中でのべつ行った。彼らはアルコール燃焼装置をもとにして走る電車を持っていた。七つのレールをかぎで留めるとそれは電信柱や信号機のついた環状道路を形づくり、列車は、信号標の明かりが緑に変わるときにちょうど通ることができた。いちど、私たちはアルコールを枯渇させたので、いくらかの石油を入れたのだったけれども、そのちいさなボイラーは完全に煤だらけになったよ。」

 

 

 

💡逐語的に訳し、あえて場面を異化させるよう努めると、このような訳出もあり得ます。

 

 

明治期の小説家は、ロシア文学の翻訳(逐語訳)から、言文一致体を模索したんだけど、いまはそういうことをやる書き手も少なくなってしまいました。

 

 

 

 

おわり