インストラクショナルリーグ初日。
スプリングキャンプ以来の選手や、ドミニカアカデミーの選手など久々に会う選手も多く、僕のことも覚えてくれてた選手がほとんどだったので、「Good to see you!!(英語)」
「Comó estás(コモエスタス、スペイン語)」
なんてお互いが気軽に挨拶もできるようになり、コミュニケーションもバッチリでした。笑
思い起こせば、スプリングキャンプの時にほとんどコミュニケーションが取れなかった自分が今となっては懐かしく感じましたね。笑
僕も少しは成長できたかな…笑
初日からまだまだ少しではありましたが、役割も頂きコーチとしての一員だという意識を持てたのは、今の僕にとっては本当に嬉しいことでした。
そしてリーグが始まり何日かした後、僕はある1人の投手の専属を任せられたのです。
「シンジ、今日からはあなたが彼を指導して、改善してあげてください。」
その彼とは、ドミニカアカデミーから来たMAX103マイルを誇る投手でした。
僕はこの投手を今年ドミニカで初めて見た時に、ストレートは常時99マイル〜100マイル投げていてスライダーも良い!という…
その時の衝撃は大きく、わずか19歳にして「こんなに凄い投手がいるんだ!」とビックリしたのを思い出します。
しかし、彼は好不調の波も激しく、四球を連発するなどそのスピードボールを活かすだけのコントロールが無かったのでした。
また精神的にも少しムラが大きく、集中している時とそうでない時の差も大きかったので、このままではこの素材の良さだけで、成長は難しいのかなとも感じていました。
それでもこれだけのスピードボールを持っているので、当然チームの期待も高いのです。
「その彼を任せられるなんて…
これは大きなミッションになるなぁ…」
なんて、思いながらも俄然やる気が湧いてきました!笑
それからは、彼の投球をもっとしっかりと分析して、何がコントロールを悪くしている"根本的な原因"となっているのかを探し出し、そしてなるべく"シンプル"に伝えるようにしました。
その後は毎日彼とのキャッチボールやドリル練習に、付きっきりで一緒に取り組んでいきました。
受け持った初めの頃は、ドミニカでもあまり話したことがなかったので、人見知りでもある彼とはコミュニケーションも正直ぎこちない感じでした。
そこで僕はまずこちらから明るく挨拶をしようと心掛け、とにかくフレンドリーな雰囲気を出して心を開いてもらおうと考え、実行していったのです。
そうすると、段々と心を開き始めたように感じましたし、肝心な技術面のアドバイスの方も一発目から"ハマり"、本人の良い感覚を得られたことで、信頼関係が生まれていく瞬間を感じることができたのです。
その証拠に、グランドに来た時にはもう彼の方から、
「チンジー!(シンジがこう聞こえます笑)」
と笑顔で挨拶してくれるようになったのは、大きな変化というか進歩で、それまではほとんど彼から話してくることもなかったくらいでしたから。笑
そんな彼との日々は、目に見えて良くなっていっていくのが分かりました。
しかしまだ試合でそのパフォーマンスが見られるようになるには、まだまだ時間が掛かります。
やはり練習と試合では、メンタル面も変わり、パフォーマンスが変わってしまうことが多いのです。
四球で自滅する投手がそうならないまで改善するのには個人差はありますが、やはり時間が必要です。
なぜならコントロールを劇的に改善するのは世界で最も難しいコーチングだからです。
日本でもこちらでも投手コーチの誰もが色んな試みをしていますが、短期間で一気に改善した選手は見たことがありません。
これを確立したアプローチがあるなら、世界一の投手コーチになれるし、世界中で引っ張りだこになれるほど、投手コーチにとっては"永遠の課題"でもあるのです!笑
しかも彼にはメンタル面も含めて沢山の課題があるので、一筋縄ではいきません。
しかし、僕はこれまで一緒に取り組んできた彼の姿を見て、このまま続けられることが出来れば必ず改善すると確信しています。
またこの先は、僕がいなくても進んでいけるように、短い期間ですが全力で尽くしていきたいと思い日々接しています。
こうして僕はコーチとして、選手と一緒に歩んでいく日々を、"コーチング"の難しさと共に、そしてそれ以上の嬉しさを感じながら、毎日を過ごしたのでした。。