アメリカで初めて過ごすシーズン。
2Aフリスコで素晴らしい経験ができ、いよいよメジャーに一番近いカテゴリーである3Aラウンドロックに合流しました。

本拠地はテキサス州ラウンドロックという街にあり、同じテキサス州の2A本拠地フリスコからは車で約3時間半くらい南に下った場所にあります。
チーム名は、「ラウンドロック・エクスプレス」
球場すぐ横に貨物列車が通る線路があり、試合中も時折「フォアーン!フォアーン!」と大音量の警笛音を鳴らしながら列車の通る音が聞こえてきます。
その名物ともいえる列車から名前が付いていますので、ロゴマークも列車をイメージしていますね。




この3Aはメジャーとマイナーの入れ替えをいつでも出来る選手の集まりみたいなもので、ほとんどがメジャー経験者です。

試合を見ても、2Aでもほとんどの投手が150kmを超えるストレートを投げますが、3Aの右上投げリリーフ投手はさらに速く、ほとんどの投手が155km以上のストレートを投げられることが印象的でした。
もちろんキレの良い変化球もありますので、明らかに2Aより高いレベルであることが分かります。

打者のパワーのレベルもさらに上がり、下位打線でも本塁打が沢山出ますので、大差で勝っていても逆転することがしばしば起こります。
一度僕たちのチームが、8対0から終盤3イニングで逆転負けするという、投手コーチとしては非常に肩身の狭い試合となったこともありました。泣

また本当に驚いたのが、投手の99マイル(158km超)のストレートを8、9番打者でも完璧に打ち返してヒットにするというのを何度も見た時でしたね。

こういうレベルでありながらも、メジャーに定着出来ず行ったり来たりしている選手などが日本でのチャンスを求めていたりもするので、日本のプロ野球のスカウトもこの3Aを特に注目して見ています。



また僕が3Aで一番新鮮に感じたことが、ABSシステムという機械でストライク判定をするという、いわゆる「ロボット審判」を導入していることです。
僕も一瞬イメージしてしまいましたが、実際に人間型のロボットがキャッチャーの後ろにいてコールしている訳ではありませんので!笑
(違った意味でそれはそれで見てみたいですが笑)

機械で測定したストライクボールの判定を、瞬時に主審が耳に付けてるイヤホンに送られコールするというもの。
将来的にメジャーで導入するかどうか、試験的にマイナーで使われています。
これについては僕の今のところの印象は、想像してた以上に使えるかもしれないということでした。

何故なら機械によるストライク判定によって、投手も打者も主審の判定に対する不満が全く出なくなったからです。

機械だから正確ということで判定に納得するしかないのです。

僕も選手だった時に、正直なところ主審の判定への不満は時折ですが、確かにありました。

「今のは違うやろー!」みたいな心の中で叫ぶことが無くなり(表に出してしまうと退場にもなりますので)、試合中の判定に対するストレスが無くなることは、本当に余計なエネルギーを使わずに済むように感じます。

そういう視点で言うとこれは有りなのかもしれませんね。


しかし一方で、主審のそれぞれの特徴や癖を掴み、それに対応していくという「投手の技術の一つ」でもあったことが全く無くなるということ、そしてそういった人間と人間が作り出すスポーツの「醍醐味」みたいなものが失われるのはどうかなとも思います。


「全てを機械に頼ることはスポーツの醍醐味がどんどん薄れていくのではないか?」

「機械であれば人による誤差みたいなものも無くなり、誰もが平等な判定となる。」

「実際にプレーしている人と、見て楽しんでいる人の感覚や価値観の違いがある。」


など、これは賛否両論、様々な意見が出て分かれるでしょうね…

色々な見方があるので、どちらが正解かという答えを導くことは全くできないことですが、僕の印象では将来導入される可能性は高いのではと感じてます。


何はともあれ、こんな新しい取り組みをどんどん積極的に行なっているのがメジャーリーグです。

日本はその後を追っているところは多々ありますが、僕がアメリカでこれまで学んだ球団の様々なシステムや組織論もしかり、こういう「変化を恐れずどんどん新しく進化させていく姿勢」は見習うべき部分でもあり、率直に「凄いなぁ」と思っています。



そして3Aには日本人投手の「有原選手」も同じチームにいます。

彼とはスプリングキャンプで会った以来なので、久々に色々と話ができるのが本当に楽しみです!

また彼はプレーヤーなので、僕とは違う視点で、日本とアメリカの野球の違いも感じているでしょうから、僕はこれから鬱陶しがられるくらいに(笑)、沢山色々なことを聞いてみたいと思っています。笑


こうして僕はまた新たな環境で、新鮮で刺激的な時間を過ごすことになったのでした。。