合流して2週間ほど経ったある日、投手コーディネーターから、

 

「今度みんなの前で話してね。」

「題材はなんでもいいからね。」

 

と、軽い感じで、僕にコーチミーティングで日本とアメリカの違いなどを話してほしいと言われ、プレゼンテーションの時間を僕のために設定してくれました。

 

「ん…?待てよ?軽い感じだったけど、これは自分にとってとてつもなく重要なんじゃ…」

 

これまで僕は見て学ぶことがメインで、周りもアジアから勉強しにきた今までにもよくいた研修コーチの1人でしかないという認識で、僕に何か聞きにくることもほとんどありませんでした。(後日日本人かどうかも分かっていなかったことが判明しました笑)

 

僕が思ったことや気づいたことがあっても、コーチや選手と野球のことで深く話すことはほとんどなかったので、

 

「これは自分のことをアピールできる絶好の機会だ!

自分のキャリアや考え方などを知ってもらえたら、僕に対して何か興味を持ってもらえるはず。今の自分の状況を変える絶好のチャンス!

これがうまくいくかどうかで、今後の人生が変わると言っても過言ではないやろーー!!」

 

と、もう鼻息が荒くなりまくりで…(笑)

 

そして、僕は日本では講演をこれまでに50回以上も経験してきたこともあり人前で話すことには慣れてるからプレッシャーは感じていない。

ただ、英語で話さなくてはいけないので、そこは自分の力では無理だから、通訳のヒロくんに頑張ってもらうしかない!と。

 

実は僕は過去2016年にイタリアローマでも通訳をつけての講演を行なったことがあるんですね。

その経験もあったので、いかに通訳付きの講演が難しいのかも分かっていました。

何が難しいのか。それは日本語での表現とニュアンスが、違う言語になるとそのまま伝わる訳ではないし、直訳できるような表現、言葉自体がないことも多いのです。

そして通訳によってはニュアンスや意味が変わってしまう。

僕はこれまで日本でも外国人選手と話す時に通訳を通して話してきましたが、その通訳によっても表現の仕方が全然違い、伝わり方も変わってくることが僕の英語レベルでも分かり経験してきました。

 

「本当に自分の伝えたいことが伝えられるのか?」

 

野球で使う英語は、直訳英語では全く意味が通じないことが多く、感覚的な表現も多いため、微妙なニュアンスも含めかなりの英語力が必要で、通訳によってかなり左右されるのです。

 

しかし、今回レンジャーズの通訳であるヒロくんには僕は絶大な信頼を置いています。

何故かというと、彼は両親が日本人ながら生まれてから間もなくアメリカにずっと住んでいるので完全なネイティブ英語で、しかも難しい野球用語も、彼自身が高校まで上を目指してガッツリ野球をしていて、野球でも優れた力があったようなので難しく細かいニュアンスも理解でき、ほとんど完璧に伝えてくれるので、安心して任せられます。

 

そのヒロくんにも今回僕がどれくらいこのプレゼンに賭けているのかも話した上で、ヒロくんも気合い入れて準備してくれました。

 

 

肝心の内容は、これまで僕がここで見てきて、アメリカと日本の野球の違いや、日本の優れているであろう部分などですが、ありきたりの話ではなく新鮮で興味を持ってもらえるような内容にしないといけません。

日本で講演するときと同じようにしっかりと考え、伝えたいことをなるべく簡潔に伝わるように、まとめていくという準備を、時間をかけて行ないました。

 

また時間にも限りがあるので、時間配分も考えなければいけません。僕がキリのいいところまで話し、その後通訳してもらう。その繰り返しなので、自分1人で話す時間の倍の時間が掛かります。

それも考慮しながら、40分くらいの設定に対し、20分くらいの内容で、いかに中身を濃くできるか。

これはなかなかの作業で、短い時間で自分の伝えたいことをどれだけうまく伝えられるか?

これが一番の課題にもなるのです!

 

そして、いよいよ命運を分けると言っても過言ではないプレゼンの日がやってきたのでした。

 

つづく