レンジャーズのマイナーチームに合流し、本格的にコーチ研修が始まりました。

僕は長い間日本のプロ野球界にいたので、まずは環境や練習の流れの違い、システムや分析の仕方、量など、日本との違いも沢山あり、新鮮で驚くことも沢山ありました。

 

合流して初めのうちは、見ているだけでも刺激があり、楽しかった。

しかし、見て分かることはいいにしても、肝心な会話や説明が全く分からず…

それは話している言葉、英語が全く分からなかったからです。(泣)

 

これでもアメリカには毎年のように旅行に来ていたし、英語圏でもあるプエルトリコにのべ8か月ほど生活したこともあったので、こっちに来たら何とかなるだろうという甘い気持ちが正直ありました。

しかし、

「こっちに来るならもっともっと英語が出来る必要があった…」

「全然分からない。でももう来てしまっている…取り返しはつかない…」

 

渡米前の「通訳がいない状況でも同じ野球界だし何とかなるだろう」、という僕の全く根拠のない自信は3日で完全に崩れ落ち、本当に自分の甘さを痛感したのでした…

 

選手であれば、仮に全く英語が話せなかったとしても自分のプレーで自分を表現できる。

しかし、コーチは選手のことを見て、そして伝えるべきタイミングで話せないと何も自分を表現するものはない。

要は、「伝えること」が仕事です。

ということは、言葉が通じなかったら、仕事が全くできないのと同じです。

 

「それはボディランゲージで何とかなるだろ?」

「…なんともなりません!(泣)」

もちろん多少はそれでも通じますが、肝心な内容までは到底辿りつきません。

コーチの仕事というのはそれほど伝える力が必要なのです。

 

それでも今は便利な携帯ですぐに調べたりできます。当然必死で調べました。

しかし盲点が…

「野球の現場でネイティブが使う英語は、調べても全く理解ができないというか調べられないんです。直訳の英語とは全く意味が違うんです!!」

「ほんとどうしたらいいの?…(泣)」

 

 

もう八方ふさがりのような気がして、僕の気持ちもどん底でした。

そして自分の中で葛藤が始まります。

 

「最初は分からなくても慣れてきたり勉強しながら過ごしていけば、英語はそれなりに上達していくだろう。でもそのレベルですら何ヶ月かかるのか?

それまでに肝心な学びたい部分の意味も分からずこのまま過ごしていくのか?

そうじゃないだろ!僕はここに英語を習いにきた訳じゃない。野球を習いにきたんだ!」

 

「とにかく日本語を話せる人を探さないと。せっかくここまで来た意味がない!」

 

僕はこうして、チーム合流わずか3日目にして挫折感を味わうのと共に、自分の甘さを責め後悔し、果てしなく大きく感じる「英語の壁」にぶち当たったのでした。