Bondi StationからL82のバスに乗って、Bondi Beachを目指す。

窓から流れる景色も韓国とは全然違うので

少し眠たかったけど、僕は目を開けたままでいた。

サンセットビーチが僕らのバスを照らした。

吸い込まれるように見とれて乗り過ごしそうになった。


歩いて5分。自分の部屋でスニーカーからビーチサンダルに履き替えてリビングへ

セレナが夕食の準備をしていたので、すかさず手伝う。

ニックはデートで遅くなる様なので、三人分の準備をする。

今日は一人っ子の気分が味わえそうだ。


ホストファザーのジョンが帰ってきてすぐに、白身魚のパイ包みが焼けた。

今日はそれにサラダとごはん(パサパサのタイ米)

僕に気を使ってくれているのか、この後もよくこの

パサパサタイ米は登場したが、僕にとっては正直パンのほうがよかった。

、、、というくらい、苦手だった。


その日は語学学校や友人、そして自分のことについてじっくり話した。

父は公務員、母は専業主婦、妹は大学生。

高校ではバスケットボール部のキャプテンをしていた事。

韓国ではまぁまぁの大学の工学部を卒業してすぐに

2年海軍にいて、グラフィックデザイナーを目指していること。

大学三年の時に、ユンファと出会い付き合い始めた事。


ニックがいないからなのか、食後のアイスクリームが気に入ったのか、

セレナとジョンはじっくりと、そして根気強く僕の話を聞いてくれた。

その後僕はシャワーを浴びて、国際テレフォンカードを手に

「Can I use the phone ?」とリビングの二人に尋ねた。

子機を持っていっていいよ、とセレナ。

僕は照れくさくて、頷いて、うつむきながら早歩きで部屋に入った。


家に電話すると、家族はかわるがわる受話器を回した。

思わぬ電話だったのか、3人とも興奮して

僕は質問攻めに合い、一方的に話されるだけだった。

母さんは一度国際電話をしたらしいが、かけ方がいまいち分からず断念たらしい。

父さんはなぜか最近温泉にはまっていて、

妹は最近行ったコンサートで、大好きな歌手と何度も目が合ったと熱弁、、、

終盤で母さんが僕の食事や健康面について尋ねてきた。

僕は「米を食べてるから大丈夫です」と言って、電話を切った。

韓国では、両親に対しても敬語を使う。


ユンファに電話をする時、なぜか緊張した。

ユンファに1番最初に電話をした時を、思い出した。

「ヨボセヨ」ユンファの声

「ユンファ」

「ジウォン!!」すぐ気づいてくれる。

ちょうど僕からのメールを見ていたらしい。

僕は語学学校やホストファミリーについて話しに話した。

ユンファは、いつもと変わらない毎日らしい。

徐々に言葉少なく、声には張りがなくなった。



”どんな状況でも、取り残されるほうが辛い”

空港でユンファがくれた、手紙の最後の一列を思い出した。





 学校帰り、韓国人グループでも仲のいい5人で近くのパブに行った。

まだ5時過ぎだというのに地元の人たちが溢れ、満席に近い状態だった。

ここは普通のパブらしいけど、なんとゆうか、熱い。

僕とアダムでVBを5杯、テーブルへ運んで行った。


二歳年下のユンとラナは、韓国で同じ大学に通う女子大生。

大の仲良しで、二人揃って半年の短期留学らしい。

韓国にはどこにでもいる、普通の女子大生だ。

二人ともタケを気に入り、特に僕とおんなじクラスのユンは

今日一日のタケの動向をラナに熱心に話している。

なんでも、タケは日本のアイドルに似ているらしい。

特に、横顔が。

「ジウォンオッパ!(お兄さん)今度は隣の席を譲ってね」と言われた。

韓国では、女の子が目上の親しい男性の事をオッパと呼ぶ。


ミーハーだな、と話しを終わらせたのはジムだった。

それからみんな家族のこと、故郷のこと、自分の話しなどで盛り上がった。

なんとラナとジムの妹は、高校のクラスメイトだったらしい。

家にも来た事があるが、ジムは覚えてないそうだ。

本当に、世間は狭い。


僕は3つのVBを買いに席を立った。

ふと外を見ると、タケと日本人の女の子が二人で歩いていた。

女の子は僕が入学式に見た、あの子だった。

その二人からはなんとなく、知り合ってまだ日の浅い友達の感覚がなかった。

特に女の子は、別人のように雰囲気が違った。

二人の空気がそこにはあった。

それにしても、あの女の子はどこかで見たことがある。

日本のアイドルにでも似てるのかな?

ミーハーだな、と独り言。

VBが来たのでお金を払って、人ごみを縫いテーブルに戻った。


ユンとラナがまたタケの話しを夢中でしていた。

今見たことは黙っておこう。

ジムはアダムに英語の勉強方法を聞いている。

僕は耳を傾けながらぼんやりと

さっきの二人を思い出し、同時にユンファのことを考えていた。

あのボンダイビーチの虹を一緒に見たかった。

あんな風に、二人でこの街を歩きたかった。


 

 先生は女性だった、名前はシエナ。

長いブロンドをひとつにまとめて、目元の笑いじわも魅力的。

年はホストマザーのセレナと同じくらいだから、45歳くらいかな。


クラス全員が揃った。このクラスはみんな新入生なので

1人づつ前へ出ての自己紹介が始まった。

僕は不運にもタケの次、2番めだった。

タケは黒板にTAKE RUと書いて

「Hello.Everyone. I'm Takeru,call me take.

I'm 25, from Japan.

and Girls, You can take me to your room, any time.」

と言いつつ顔を赤らめていた。一気に空気が和んだ。

僕はタケに続きJiwonと書いて

「Hello, My name is Jiwon, come from korea.

24 years old. I came to here to lean English and try to surf.

thank you」


短い拍手の後、次に続いた。

もっとオモシロイ事言えただろうと、へこみつつも

みんなの名前と特徴と出身国を、ノートの最初のページに書き込んだ。


語学学校は

9:00~始まり10:30~30分Breake Time

その後また授業で、12:30~1時間Lunch Time

その後また30分休憩を挟んだ1時間の授業がふたつあるので

4時に学校が終わる。

学生ビザで来ている留学生はその後も、学校に残って1時間自習しなければならない。

結構ハードだけど、今は刺激的で楽しい。


Breake Time とLunch Time、両方とも韓国人で集まってしまった。

英語を学ぶのに最も悪い傾向にあると知りつつも、

今の僕には46時中外国人と過ごすのはムリだ。

みんなでお互いのクラスメイトの話しをする。

アダムとジムは、早速同じクラスにお気に入りの日本人の女の子を見つけたらしい。

女の子はみんな、僕のクラスのタケの話題で盛り上がっていた。

シドニーに来てもみんな気になるのは

一番近い国、日本人らしい。


 語学学校には30分早く着いた。

昨日のクラス分けテストの結果を早く知りたかったから。

僕はインターミディエイトの1だった。五段階のちょうど真ん中、の下のクラス。

インターミディエイト2ではないけど、希望どうりで思わずニンマリ。


クラスメイトを見てみると、韓国人3人、日本人3人にドイツ人とスイス人が2人づつ。

一般コースは、5クラス×上下の2つで10クラス、各10人編成で100人いる。

そのほかに大学、高校進学コースやビジネスコースなどもある。


アダムは僕より1つ下のプレインターミディエイト2、

ジムはなんと一番上のアドバンス2にいた。

ジムは一昨年までの2年間、カナダに留学していたらしい。

僕とアダムはこの語学学校に1年通うが、

ジムはワーキングホリデービザで来ていて通うのは2ヶ月、しかも午前中だけ。

早く仕事を見つけたい、と自信もたっぷり。

分からない問題や難しい状況では、心強い僕のヒョン(お兄さん)だ。

韓国では、男が目上の親しい男性の事をヒョンと呼ぶ。

でもジムは「ここはシドニーだから、ジムでいいから」と言っていた。


クラス一番乗りは僕だった。

日当たりがいい明るいクラスルーム。黒板の隣に

”同じ国同士、隣に座るの禁止”という張り紙。

、、、授業内容がわからなくなったらどうしよう。不安。

いきなり真っ黒に日焼けした日本人の男が入ってきた。

僕に気付きGood Morning!!と言いながら隣に座って

「Hi! nice to see you ! I'm Takeru, Call me TAKE !! 」

差し出されたので、握手をしつつ

「I'm Jiwon, nice to see you,too」

長身で筋肉質、なのに細身。

少し長い髪に涼しげな顔。

昨日韓国人の女の子達がカッコイイと騒いでいた奴だ。

確かに、僕に欠けている自信とゆうか、オーラが伝わってくる。


これがタケとの出会いだった。

1番最初にできた、1番の日本人の友達。


 家から最寄のバス停まで歩いて5分、Bondi Stationまでバスで約10分

そこから学校までは5分もかからないで行ける。アクセスは最高だった。

昨日はホストマザーのセレナが語学学校~Bondi Station周辺を丁寧に案内してくれたので、道に迷う心配はなかった。


しかし、語学学校。

メインストリートに繋がる小道を入ると、ピザ屋と電気屋の間に小さな二階建ての建物。

そこに流れて、二階のBreake Roomに集まる色んな国の色んな人たち。

色んな所からハングルが聞こえたが、この後のテストを考えると友達作りは二の次だ。

自分が緊張してる事に気づき、ペットボトルの水をひとくち。そしてため息。

目の前にいるの日本人の女の子の、日本人の友達の輪は猛スピードで広がっている。

きょろきょろ、にこにこ、ふむふむ、を繰り返している。、、、もう1回ため息。


英語の問題に英語で答える筆記試験と、先生と英語で話すSpeakingのテストを受けた。

わかってはいたが、問題用紙を見たときは動揺した。

その後、10人以上いる新入生の韓国人がひとつに集まった。

やはり、同郷の結束は固い。

年齢も出身地も目的もバラバラなのに、”韓国人”というだけの強い絆がそこにあった。

こんな状況は、韓国では味わえない。


気が合いそうなのは、同い年のアダムと2歳上のジム。

二人ともキリスト教で、外国名を名乗っている。

ちなみに、この外国名は自分で好きな名前を名乗れるんだ。韓国ではね。

僕は「I'm John」とか言うのが恥ずかしくて、外国名を持たなかった。


帰り際にPCから昨日の画像を送るため、3人でPC Roomに入った。

24台のPCが並ぶこの部屋で、さっきの日本人の女の子が近づいてきた。

目が合った時、ジムが話しかけてきたので答えた。もう一度見ると、その子はいなかった。

僕はユンファに画像とメールを送って、出国前ユンファから送られた画像を見つめた。

両親と妹、そして僕の彼女ユンファ。

シドニーで唯一、ホームシックにかかった一日だった。