日曜日の誘いは断った。

めまぐるしい日々が続いたので、一人になりたかった。


久しぶりの一人の時間。

午前は家族と友達とユンファにエアメールを書いた。

学校はまだついていけてないところもあるけど、

毎日刺激的で、新鮮で、非現実的な毎日だ、と。

右手と目が疲れたので、誰もいないリビングへ向かった。

オレンジジュースを一杯飲み干して、テーブルを見回す。

これといったランチがないので、

気晴らしがてら、Bondi Beachに行った。


坂の途中にあるケバブ屋でTake away.

Bondi Beach Market を歩きながらケバブをたいらげた。

ドリンク片手にビーチのベンチへ。

いい天気。風が心地よい。

芝生に寝そべるカップル、フリスビーをする親子。

アダムたちはBlue Mountainに行くらしい。

それでも僕は一人になりたかった。


ベンチに座りながら180度見回す。

何度見ても、ため息しか出ない。完璧な外国の海岸。

せっかくだから、ビーチを歩くことにした。


水着の女性に目がいってしまう。

僕も男だ。トップレスの人もいた。

思わず目をそらしてしまう。僕はまだ男の子だ。

サーフィン区域に着き、気づく。

サーフボード持って来ればよかった。

でも初心者の僕には、まだ一人で練習する勇気はない。


いた。

オトノがいた。

波に乗っては、ひっくり返る。それでもまた波に乗る。

僕はずっと眺めていた。

がんばれ!

おしい!

よし!いい感じ!!

僕は心の中で、気づかず彼女を応援してた。


 もしかしたらあの時、オトノを探しにBondi Beachに行ったかもしれない。

 もしかしたらあの日、オトノに会いたかったから一人でいたかもしれない。







初めての週末、いつもの五人でオペラハウスを見にサーキュラーキーへ向かった。

電車で行くと乗換えがあるのでバスで行こうと、

ジムのナビで全ては進んだ。


Bondi Junctionからパディントンを抜けて、目指すはサーキャラーキーへ。

ジム以外はみんな始めてのCityだった。

バスに乗り込んだ時はみんなはしゃいでいたが、

景色が変わるにつれて、静かになった。


バスの終点は以外にもビル街だったが、

歩いて5分ほどでAustraliaのシンボル、オペラハウスとハーバーブリッジが見えてきた。

僕らは歓声を上げ、見とれ、写真を撮って、

自分は本当にシドニーにいるんだと実感。

僕は世界でも有名なランドマークを見ている自分に、少し酔った。


ジムのクラスの先生がおいしいと言っていたアイスクリームを買い、

食べながらオペラハウスの近くへ歩く僕らは

観光客と何の変わりもなかった。

近くで見るオペラハウスは思ったよりも大きく、外壁は少し古かった。

でもその古さはきっと、長い歴史を刻んでいるからだろう。

僕はまた自分に、少し酔った。


その後バスでタウンホールに向かった。

クイーン ビクトリア ビルディングは、衝撃的だった。

それまで見たこともない歴史あるヨーロッパ調の建物。

その中はよくあるショップが並んでる。

Town Hall Stationも、重厚な教会につながっている。

教会の階段には、待ち合わせの人がたくさんいた。

新しいものにはない良さが、ここには詰まっていた。

そしてここには、アジアのかけらもなかった。



韓国では見かけないオープンカフェ、

別れ際にキスをして手を振るカップル、

2台が連結された、長いバス。

シドニーの週末に飛び込んだ僕は、

小学校の入学式の様な感覚だった。

Australia は、すごい。



駅から外れた一角に、韓国料理屋を見つけた。

トイレに駆け込むかのように一斉に入った。

みんな前から、韓国の味が恋しかったんだ。

キムチ、チゲ、プルコギ、、、

この日はみんな食事を堪能した。

韓国料理は韓国人のハイオクだ。



帰りのCity Rail から夕日が差し込んだ。

車窓からの景色を照らし、映画のワンシーンに見えた。

こっそりデジカメで撮影。

1日の終わりは、なぜかいつも切ない。


それからは大体、ユンとラナのタケトークに付き合い、

アダムの相談にのり、ジムに英語を教わった。


放課後、たまにタケが話しかけてくれると

ユンとラナの目はハートになり、

瞬間”紹介して!”とゆう鋭い目で僕をチラ見する。

しかしタケは1言2言話すと、すぐどこかに行ってしまう。

「オパァア~~~」

不満をぶつけられる。

タケがせっかちなのか、僕がトロイのか。



木曜のBreak Time、アダムがいきなり提案してきた。

「サーフボード買いに行くって言ってたよな?」

、、、そうだ、サーフボードを買いに行くのをすっかり忘れてた。

「あぁ!そうだった!」

「ボンダイビーチ辺りに、有名なサーフショップがあるんだって」

途端にもじもじするアダム

「それで、、、今日は自習サボって行かないか?」

「え?なんでだよ」

「なんとなく、、天気もいいから早く外に出たいんだよ」

「別にいいけど」

ジムも誘って、僕らは3人でBondi Beachに向かった。



ブルーの看板が目印の、地元でも有名なサーフショップに着いた。

ジムが流暢に通訳をしてくれたのに、

話し好きな店員のせいか、優柔不断な僕のせいか

ロングボードを買ったのは1時間後だった。

店を出て、カフェでゆっくり座って休もうとすると

「せっかくだから、ビーチまで降りよう」と

アダムが言うので、まずボードを店に預けて、

ハングリージャックというハンバーガーショップでコーラを3つTake away.

take out をここでは take away と言う。


ビーチの右側がサーフィン専用区域だ。

そこで何人もの人が波に向かっている。

午後5:30、まだ日が暮れる気配もない。

天気もよくカラッとしているが、少し風が強かった。

「あ!いた!!オトノだ!!」


アダムが叫ぶ。僕はその目線を追う。

長い髪を1つに束ね、白いボードの上にオトノがいた。

パドリングをしながら、タイミングを待つ

波がやってくる

素早くキャッチ

そしてボードに立った瞬間、ドボン。

あ~ぁ、おしかったなぁと思いつつ、アダムを見ると

目が完全にハートだった。

すぐにオトノが海から上がってきたので

ジムと僕でアダムを引っ張って、彼女のほうへ向かった。


くたくたのオトノがビーチに上がるなり横たわった

白いボードには、オレンジの太陽が描かれている

「Hi,,,」冷やかされながら、アダムの精一杯の一言だった。

「Hi,,,Adam! you came here to see me !?」

ん!?

照れ笑いのアダム、、

後で聞きだすと、今日アダムは運良くオトノの隣に座り、

午後はBondi Beachでサーフィンをしてる情報を入手したとか。

ブルーの看板のサーフショップも、オトノ情報。

アダムの計画的犯行だった。



それからオトノはずっと笑顔で、僕にも声をかけてくれて、ジムにもにこやかに挨拶。

僕らの中でオトノ株は急上昇した。

話を聞いてると、近くのバッパーに住んでいるらしい。

とゆうことは、まさか、、、。

「There is close to the Buss stop near here」

多分間違いない。



タケとオトノは同じバッパーに住んでいる。

二人は付き合っているんだ。







 

 「たけ~」

近づいてきたのはタケと一緒に歩いていた、あの子だった。

日本語でタケと何か話してる。

よく笑う子だなぁ、日本人は韓国人より愛想がいいのかなぁ。

それかやっぱり、付き合ってるからかな。


僕はひとり黙ったままでいると、タケから

「Jiwon, This is Otono. Otono, This is Jiwon」

「Hi, nice to see you」ちょっと焦った。

「Nice to see you, too」すぐ手を差し伸べてくれた。

僕が握手すると

「I know your ,,,rucksack.」

僕はきょとんとして「Why you knou?」

するとオトノはもじもじしながら、「I saw ko,,,KOCHUJAN? 」

「あぁ~~~」

そうだ。リュックが開けっ放しなのに気づかず

空港のロビーに座ってたんだ。

恥ずかしくて頭を抱える僕に

「けんちゃなよ~」

とオトノは肩を優しくたたいてくれた。


その後すぐユンやジムが来たので、僕は引っぱられながら

そのテーブルから去った。

ユンとラナから質問攻め。

午後のクラスが終わったら、説明するよと言ってその場を離れようとすると

アダムに呼び止められた。

みんなと離れて、バルコニーに着くなり

「あの子とランチ一緒だったのか?」

動揺した。

「何話してたんだよ?」

「何って、、自己紹介しただけだよ」

「本当か?あの子、彼氏いるとか言ってた?」

ん?「いや、名前しか知らない」

あぁぁ~~っと息をついて

「あの子が、前に話した同じクラスの気になる日本人の女の子なんだ」

「えぇ!?」顔ぜんぶ目になった。   気がした。

「、、、なんだよ」照れつつふくれるアダム

「いや、、、びっくりしただけ。」恋敵は今やスーパーアイドルなんだぞ

なんて言えない。

「そっか~。オトノ、午前しかUES(語学学校)に来ないからなぁ」

ここ、Univarsal English Schoolの略である

「午後はつまんないんだよ。眠いし、オトノはいないし」


その日は午後の授業を終えるとユンとラナにタケ情報を流出し

ユンファにメールをして、アダムの恋愛トークにつき合った。


家に帰って四人で食事を取り、シャワーを済ませて部屋にこもった。

宿題をして早めにベッドに入る、

少し疲れていた。



それにしても、リュックからコチュジャンが見えてた事を知ってるって事は

あの時、オトノは空港にいたって事だよな、、、。

多分同じ飛行機だったんだ。韓国経由で来たに違いない。


考えながら、突然息が止まった。

思い出した。

飛行機の搭乗を待っている時、オトノは僕の近くにいたんだ。

あの時は設備点検とかで、かなり待たされた。

きょろきょろしていたら、UESのパンフレットを広げてる女の子を見つけた。

同じ学校に行くんだ!と声をかけようとしたら

さっといなくなってしまった。

見失ったまま、飛行機に乗り込んだんだっけ。

僕はまた顔ぜんぶ目になった。   気がした。


オトノは、日本人のアイドル似じゃなかった。

でも確かに、見たことはあったんだ。





 
 次の朝、セレナがランチを持たせてくれた。
ホストファミリーとの契約上にない、セレナの優しさだった。感謝。
紙袋を上からのぞく。サンドイッチらしい。
リュックの中で潰れるのは嫌だから、そのまま手に持って家を出る。
と、その時玄関で寝ぼけたニックに会う。
「Oh,Hi,,, You've lunch ? Ah... She loves You..」
僕は笑い流して、照れてうつむいたままバス停に向かった。


2つめのバス停で、タケが乗ってきた。
乗ってきたおばあさんに席を譲り、タケと立ち話し。
タケはあのバス停の近くのバッパーに住んでいて、
なんでもルームメイトはブラジリアンで、飲んでは大騒ぎらしい。
僕も近くにホストハウスがあるんだ、と言うと
「Really? You can come my room, Any time You want」
タケは、人見知りせず人なつっこい。
、、、と言うよりも外国人に慣れてる。
クラスでも、1番話せるのはタケだ。


バスを降りると、タケは僕の持ってる紙袋を指さし
「You've lunch? 」
「Yes」
「I have ,too! In lunch time, Let's have a lunch together! 」
「Sure!」
本当に人なつっこい。

語学学校に着くとタケはタバコを吸うためグラウンドフロアに残り、
僕はまっすぐ1階の教室へ向かった。
オーストラリアでは、地上がグラウンドフロア、二階が1階になる。
教室にはもう半分くらい集まっていて、ユンもいた。
「アニョハセヨ、オッパ」
挨拶をされたので、先手を打つ。
「ごめん、ユン。今日もタケは僕の隣の席だ」
ユンがぶーぶー言ってるうちに、タケが来た。
当たり前のように、僕の隣の席に座る。
ふくれっつらのユンをちらり。
なぜか、優越感。
タケは、韓国人の女の子のアイドルだ。


Break Timeでユンとラナに、タケの質問攻めに合う。
調子に乗って、朝一緒に登校したなんて言うんじゃなかった。
しつこそうだから、ランチの事は黙ってた。
「サンドイッチを持ってきたから、僕はStudent Roomに残るよ」
とだけみんなに伝えた。

みんなと分かれて、二階のStudent Roomに向かう。
タケはちょうど自動販売機でドリンクを買っていた。
僕は、タケのリュックが置いているテーブルに着いた。
緊張、、、
日本人と二人でランチなんて、想像したことがない。
会話が続かなかったら、どうしよう、、、。
「Here we are」
オレンジジュースを差し出してくれた。
その時からタケは、僕のアイドルにもなった。


髪の長いサッカー選手がよくするヒモを、おでこに巻いて
履きこんだジーンズにTシャツを着たアイドル。
このオーラの秘訣と個人情報を知るべく、
僕は芸能リポーターの様に話しを真剣に聞いた。

大学を出て二年間、企業で働いた後
外国人バーで英語を学びながら1年を過ごし
ワーキングホリデービザで、ここに来たらしい。

もっといろんな質問をしようとしたら、ツナサンドイッチをほおばりつつ
「And,You?」と言われてしまい、僕は必死に英語を並べる。
タケには語学力の他に、推測力もある。


ランチを食べ終えると、一人の女の子が近づいてきた。