大切な時間 〜大切な友〜 | meet the Football on 401

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セレゾンと私の足跡

ことあるごとに、彼を思い出す。

ランニングをする時は、彼のアドバイスを思い出す。

高校で3年間同じクラスだった陸上部の友。

種目は中長距離。

授業中にいつも赤鉛筆を片耳に引っ掛け、机上には競馬新聞。

真剣そのもの。

授業中に...

と思うかもしれないが、他の教室とは違う、異質な3年間だった。

ここでは書けないようなことが、日常だった。

それがこの教室のスタンダード。


ひとたび、競馬新聞から目を離せば、人をからかったり、おどけてみたり。

人を楽しませることが得意なヤツ。

これが彼のスタイル。

教室では見せない一面もある。

いつも登校時間よりも早く学校に来て、トレーニングルームでトレーニング。

学校には、フィットネスジムのような、マシントレーニングが出来る部屋がある。

ここで彼と一緒にトレーニングをした。

もう一人。のちに北京オリンピックの選手に選ばれる友と、3人だった。

一緒にトレーニングをする中で、走り方のことを彼にはよく聞いた。

覚えているのが、

「腕で引っ張れ」
「アゴを引いてな」

この時間は、教室で見せる顔とは、全く違った様子でお互い少し真剣に話してた...

仲が良かった。


大学への進学で彼は順天堂大学へ。

関東の大学で長距離といえば、言わずと知れた箱根駅伝。

彼は、1回生ながら箱根を走るメンバーに選ばれた。

輝かしい未来を期待される選手。






箱根駅伝に向けての路上トレーニング。

その中で事故に遭い、還らぬ人となった...

彼が事故にあい、病院に運ばれたと、連絡がきたんだ...


当時、彼の死がマスコミに取り上げられた。

ドキュメント番組にもなった。


彼には双子の弟がいる。その弟も大学進学時に京都の高校から、順天堂大へ。

同じく陸上部。

彼が亡くなったことで、空いてしまった箱根の席を弟が走る。

もしそうなれば、よく出来たドラマのような...

当時の順天堂の監督は、力不足ということで弟には走らせなかった。

私には、その監督の選択がとても印象的で...

ドラマのような...美談のような...

世間の期待を裏切るような、その選択が...

亡くなった友と、その弟。順天堂の選手のことを一番に考えられた判断だと感じ、何故か安心したことを覚えている。


よく、彼を思い出す。

ただ走るとき。

競馬番組。

赤鉛筆。

大阪マラソンを走ったとき。

スポーツ番組を見たとき。

順天堂と聞いたとき。

箱根マラソン。

懸命に努力をしない選手を見たとき...


彼は目標に向かって、必死に走っている中で、突然の死をむかえた...


やりきれないだろう...



ランニングするときは、必ず彼のアドバイスを、心の中で唱えて走っている。

「腕で引っ張れ」
「アゴを引いてな」