ノービスの島田麻央ちゃんが13歳で4Tを決めました。

大変凄い事なんですが、今の私はそれを単純に喜ぶことができないでいます。


まだライトにフィギュアを見ていた頃、ジャンプのメカニズムなんて何も知らなかった頃の私なら単純に「凄い凄い」と喜んでいたと思うのですが、ジャンプについて色々理解した今は、その厳しさに喜ぶことができないのです。

ミキティが4Sを決めたのは14歳の時ですが、その後ずっと私は
「4回転決めれば勝てるよ!」
と思いながらフィギュアを見ていたんですね。

オリンピックの時には既に跳べなくなっていたんだと思うんですが、それでも
「ミキティには4回転がある!逆転できるよ!」
なーんて思いながら見ていたんですから、知らないって残酷なんです。



かつて、樋口新葉ちゃんの岡島コーチは
「成長期に高難度ジャンプをやらせると体に影響が出る」
という理由で、成長が安定するまで新葉ちゃんに3Aの練習をさせなかったという記事を読んだことがあります。

その時は「確かにそうだ」と凄く納得したんですが、その後ロシア女子が次々と4回転を跳んできて状況は一変しました。



ロシアのコーチに言わせると、幼いうちにそのジャンプを跳んだ記憶があった方が、歳をとっても取り戻すのは容易ということらしいです。

確かに、それも一理ありますよね。

ただ、子供の頃にあまり多回転の練習をさせると怪我のリスクもつきまとうので、どっちがいいのかは簡単に判断できません。



エテリコーチについて、周囲の人達は「全ての選手達に対して平等」だと言います。

まあ、良くも悪くも平等なんです。


それはつまり、同じメソッドで育てれば次々と強い選手が育つので、誰か1人に肩入れする必要がないってことなんだと思います。

普通はそうはいきません。
オリンピックメダルクラスの選手は、大体1人のコーチにつき1人くらいしかいなかったんですから。

でも、エテリコーチの元にはロシア全土から金メダルを夢見て才能ある少女達が集まってくるわけで、そうなるともう全員同じメソッドで育てるだけで十分強い選手に育つわけです。

誰か1人に肩入れする必要はないんです。


誰を出してもオリンピックでメダルが取れるなら、その時、タイミングの合った選手が勝つだけです。
それだけ才能を持った選手が大勢いるんです。



何度も書いてきましたが、今までの選手を見ていると、ロシアっ娘は13で頭角を表し15でピークを迎え17から下降していきます。

体型変化が始まると試合で転倒するようになるので、多分、コーチ達にとっても転倒はひとつの目安です。

これを理解していれば、オリンピックで勝てるのは生まれた年で大体決まるのが分かってきます。
以前私が「エテリ3強は怖くない」と書いたのはそういう理由です。


エテリコーチとしては、15歳までにそれらの選手を最高のレベルにまで引き上げてやればいいだけです。
あとはその子の運です。

成長期を迎えてもその技術をどれだけ維持できるかは、その選手の努力にかかっているのです。


15歳までに最高レベルに仕上げることができたとして、シニアに上がってからその後やってくる成長期にどのように対処すればいいかというと、もう過酷な食事制限しかありません。




大人になってからの怪我や不調を心配する声もありますが、彼女たちにとってはそんなことよりオリンピックの金メダルなんです。

今こんな無理をさせたら将来辛い思いをするよ、なんて言葉はロシア人には通用しません。

勝てば年金や家がもらえる。
家族にも楽をさせてやれる。
将来の苦労なんて将来考えればいいんです。

まるで選手を使い捨てにしているようだと批判する人もいるでしょうが、彼女達が欲しいのは金メダルなんです。

自分の価値を認めてくれる優しいコーチではなく、勝てるコーチじゃないとダメなんです。



日本人を含むアジア人はロシアっ娘達よりもう少しピークは後です。

ソチ後、色々読んだ中に「女子選手のピークは19歳、男子選手のピークは23歳」と書いてあったのを見た記憶があります。

でも、今ではこれはアジア人にしか当てはまりませんし、ジャンプの高難度化が進んだことでさらに年齢は若くなっている気もします。


日本人の場合、あくまで私のイメージですが「女子17歳、男子20歳」くらいが、何をやっても上手くいくピークなんじゃないかと思っています。


ロシアっ娘は、体型変化が始まるとジャンプにミスが出るようになり、10代で引退を余儀なくされたりします。

でも、彼女達は本当にもうダメになったのかと言われたら、多分ダメになったわけじゃないんです。
もしかしたら体型変化が落ち着いた頃、また復活するかもしれないんです。
トクタミシェワのようにね。


ただエテリチームにはそんな選手のいる場所がないだけです。
なにせロシア中から金メダルを目指して選手がやってくるんですから。



そんなことを考えると、ちょっと憂鬱になってしまいますよね。


まあ、身体の出来上がっていない子供に3Aや4回転を教えることのリスクと、得られる名誉を天秤にかけて判断するしかないんでしょうが、高難度化はシニアに上がれる年齢が変更になるまで続くんじゃないでしょうか。

もしシニアに上がれる年齢が17歳になったら、その時は高難度化が落ち着くのか、それともジュニアの戦いが熾烈になるのか、それは誰にも分からないのです。





痛いところがどこもないトップアスリートはいないと言われますが、それに年齢というか生まれた年による運不運も重なってくるのがフィギュアの厳しいところです。

今のロシアっ娘は特に、オリンピックに2回出るチャンスなんて回ってきそうにありませんよね。

アジア人なら7~8年くらいは何とかなりますが、ロシアっ娘には4年ですら長すぎるのです。

どんなに才能があっても、ピークの時にオリンピックが回ってこなければオリンピックに出ることすら叶わなくなってしまいます。
本当に、ロシアの選手の美しい演技を見るたびに、この演技は3年ほどしか維持できないんだなと、その残酷さに少し悲しくなってしまうわけです。



島田麻央ちゃんは今13歳。
来年はまだオリンピックに出られないので、出られるとしたら18歳でしょうか。

それまで、身体を壊さないように指導してあげて欲しいですね。




最近は、目がすぐ疲れるのでGPSも飛ばし飛ばし見ています。

日本男子はそれぞれ調子も上がってきているようですね。

日本はテレ朝が放映権を持っているためオリンピックの選考基準の中に「GPSの上位選手」という項目がありますが、他の国にはそういった縛りがないので4年前も結構ファイナルを棄権する選手がいたようです。

というのを自分の過去記事で気付きました(笑)



そういえば、結弦くんが怪我をした時、プル様が
「GPSは大きな試合じゃないんだから棄権しろ」
と言っていて、結構驚いたんですよね。

それまで私は、ファイナルに向かうこのグランプリシリーズは、世界選手権に並ぶくらい重要な大会だと思っていたので。


もちろん賞金も出るしポイントもつくので重要な試合ではあるんですが、海外勢にとっては怪我をおしてまで出る必要のない大会ということなんでしょう。

最近は試合が少ないせいか、アサインの縛りのないCSの方に選手が集まっているようですし、制限の多いGPSはこれからちょっと衰退していくのかもしれないですね。


全試合放映権をまとめて買わなきゃいけないんだとしたら、テレビ局にも負担が大きいですからね。


ヨーロッパでは絶大な人気を持つスキー競技のワールドシリーズも、試合がテレビで放映されているのを私は見たことがありませんし、マイナー競技なんてそんなもんなんでしょう。




とにかく、大切なのは全日本やオリンピックにピークを合わせられるかどうかです。

結弦くんも梨花ちゃんもエントリーをしているようですが、怪我の回復具合がどんなものか。
そこが本当に心配です。


選手達は怪我の危険と隣り合わせで頑張っています。
できるだけ、望むような結果になるようにと、そう祈る次第です。