松田さんが富士山の話を書いたとき、「次は富士山のネタを書こう!」と思ったのですが、毎日ネタがあり過ぎて、なかなか書くことができませんでした。

そうこうしているうちに一か月(笑)苦笑 通勤時間帯にコツコツと携帯に打ち込んでいた話を、なんとかまとめましたので、お暇なときにでもお読みいただければ幸いです。

(あ、ハッキリいって、富士登山の参考にはなりませんあせ



もう10年ほど前になりますが、チベットに行く前の高度順応のため、富士山に登った事があります。

(ええ、最近話題のチベットにも行ったことがあるんです)


チベットというところは大変高地にあるので、そのまま飛行機で一気に行くと体調を崩すこともあるそうです。

それで「一度3000メートルの高さを経験してみましょう」という、旅行会社の甘い言葉に誘われてホイホイ行ってしまったのですが、5合目から登り始めて30分で後悔する羽目になりました苦笑汗


大体、人の1/10くらいしか体力がなく、駅の階段で息を切らし、高尾山にだって登ったことのない私が、初登山で富士山だなんてナニ考えてんだ!怒って感じですよね?

(つまり、何も考えてなかったんです。汗


実をいうと、富士山は子供がスニーカーで登ることもできる、ルートとしてはチョロい山です。
一本道だし、渋滞する程人が多いので道に迷う事もないし、山小屋がいくつかあるので食事もできるし(笑)
はき慣れない登山靴をはいて靴ズレを作ったら嫌なので、足首まであるスニーカーにジーンズ。それにハイネックのノースリーブという

「ゴルァ!キサマ山を舐めとんのかぁ!怒

というような格好で行ったのですが、大丈夫でした。(もちろん!ちゃんとリュックにセーターは入れていきましたよ~苦笑

でも、体力なしの私のこと。登り始めて30分。6合目で早くも脱落し、7合目に着く頃には「7合目でやめる~!!あせとどうやって旅行会社のお兄ちゃんに切り出すか、そればかりを考えるようになっておりました汗

しかし、カレーを食べながらもそんな事を考えている私にカツを入れるべく、神様が使徒を差し向けてくれたんでしょうか。山小屋でバイトをしている若いお兄ちゃんが、ヘバっている私に笑顔で「どっから来たの~?」と人懐こく声をかけてきました。
「埼玉~」
と返事をすると、そのお兄ちゃん「これから頂上まで行くんだ~。いいな~」と言います。何を言っとんじゃ。キミはその山の7合目でバイトしてるんじゃない、と思ったんですが、お兄ちゃんいわく、自分は山が好きなんだけど、高山病になるから8合目より上に行く事ができない、との事。


マジ!?そんな事があるの!?


「も~、ブロックで殴られたみたいに頭がガンガンして死にそうになる」
へえ~…。私はどうなんだろ。
うーん、いまんとこ頭は痛くないからなあ。取り敢えず行けるところまで行ってみるか~。
という事で、陽気なお兄ちゃんに笑わせてもらい、元気ももらって、私はまた歩き始めました。

そして、歩き始めて15分でまたしても後悔しました(笑)




「もうダメ!もう無理!もうやめる~!泣あせ


駄々をこねる私をなだめるように、旅行会社のお兄ちゃんは

「ほら!富士山の影が見えますよ~。あ、すごい!夕日が綺麗ですよ~。ホラ、S田さん、夕日をバックに写真をとりましょう!ハイ、チーズ!」

もはや景色など見る余裕など私にはありません。

帰って写真を焼いて、初めて美しい桜色の雲海だった事を知りました。

そして美しい雲海の前に、ゾンビが一人立っておりました(笑)


私の荷物を持ってくれているにも関わらず、旅行会社のお兄ちゃん達は伸び切った列の先頭と最後尾(つまり私)の間を何度も行ったり来たりして走り回っています。(君達、ヒビキさんの弟子になったら立派な鬼になれるよ・・・汗
そして、ヘタレを扱うのに慣れている彼らは「あとどのくらいあるの?」という根性無しの質問に、決して具体的な数字を教えてくれません。
「もう少しですよ」
「だから、あと何分くらい~?」
「ホラ、あそこに山小屋が見えるでしょ?じゃあ、あそこまで行ってみましょうか。すぐですから」


「ホント?ホントにもうすぐ?」
と、私は騙され騙され登ったのでした(笑)



「…ってなんだよ8.5合って~!8合目の次は9合目じゃないのかよ~!また騙しやがったな~!号泣あせ

「あと何時間。あと何キロ」と明確な数字を言わないのは、残りが長いと登る気を無くす人が多いからだと思いますが、その作戦にまんまと引っ掛かり、私は歩き続けました。

途中、岩場を全身使って登らなきゃいけない場所もあるんですが、私の身体はそんなハードな動きをしていい身体ではありません。前日まで、家と会社で一日16時間机に座っていた人間です。


「ムリムリムリムリムリ!私の身体、こんな事していい身体じゃないもん!明日死ぬよ?いや、歳だからあさって死ぬ!絶対死んじゃう~!!桃わーんあせ



ご来光を見るために登る人は8合目で泊まり、日の出に合わせて登って来るのですが、高度順応が目的の私達は頂上まで一気に登ります。
友人からは2時間以上、先頭からは3時間以上遅れているため、8.5合目の前で日は落ち、5合目の売店で慌てて買った懐中電灯の光を頼りに登り続けました。
不思議なものですが、日が落ちると明るい時より疲れなくなります。足元しか見えないため集中するのか、それとも疲れ過ぎてランナーズハイになったのか、原因は定かではありませんが、明らかに楽になりました。


8.5合目を過ぎる時、さすがのお兄ちゃんも真面目な顔でこう言いました。

「ここを越えると、頂上まで約2時間。もう山小屋はありません。辛くなっても休む事はできませんが…行きますか?」

「はーい!大丈夫でーす!ピース
私は、明らかにエンドルフィンの出過ぎで、ランナーズハイになっておりました
泣



夜9時過ぎ。頂上の山小屋に到着すると、皆さんもうすでに就寝されておりました。

翌日の朝は早いので当然です。
山小屋に心地良いベッドなんかはありません。私の場所として空けておいて貰った、わずかな隙間に潜り込みます。予約した人だけの分しかスペースはありませんので、突然やって来ても土日はまず泊まれません。
頂上は冷え込んでいますが布団は湿ったせんべい布団だけ。なので当然セーターも着たままです。
そして、ガイドブックにも書いてあった事なんですが、頂上は空気が薄いせいか寝付きが悪くなるのだそうで、元々寝付きの良くない私はなかなか眠れません。

それなのに



グオ~グオ~!
ガーガーガーガー!
ズピ~ズピ~ズピ~!
ドンドン、ドンドン

イビキうるせー!怒


山は寝付き悪くなるんじゃなかったのっ?なんであんたたち爆睡してんの?つか、最後の音はナニ?妖怪がこの山小屋の戸を叩いているの~?まさかその音もイビキ~?
山小屋中がイビキと寝言の大合唱です。しかし、朝まで起きているのを覚悟していた私も、あまりの疲労から何とか眠りにつく事ができました。


と思ったらすぐさま叩き起こされました(笑)

富士登山の最大の目的。ご来光を見るためです。
冬用の防寒着に身を包み、友人と二人、良さ気なポジションに座り、寒さに震えながら朝日が昇るのを待っていたのですが、私達の周りには、三脚を立てて一眼レフを構えている人もたくさんいます。
「あれ担いで登ってきたのか~。有り得ないよ~汗
私は自分の荷物もお兄ちゃんに持って貰って(いや、山登りに不要な荷物は5合目のロッカーに預けられるので、小さな水筒と防寒着とパンと財布しか入ってないのですが…。笑)身ひとつで登ってきても、こんなボロボロになったのに!
そしてみんなが一斉にシャッターを切る中、太陽が登りました。


「なんまいだぶなんまいだぶ…お願いしますキラキラ


なんとなく、手を合わせたくなるのは日本人だからでしょうか。おごそかな雰囲気に包まれながら、太陽はあっという間に高く登っていきました。


つづく