モルヒネ投与開始されて旦那はすぐに眠りについた

お姉さんと2人で見守った

私は私の家族と連絡を取り合っていた

ベッド脇の酸素の数値を絶えず見ていた

お姉さんはモルヒネ0.5mlはとても少量だと言った

しかも皮下注射だから徐々に入っていくらしい

ホッとした

酸素は90まで上がった

個室でゆっくり眠る旦那を夜まで見守ろう

そう思っていた


でも酸素は下がり出した

私はよくわからなかったが血圧の数値も表示されていた

お姉さんは酸素より血圧を注視していた

血圧も酸素も数値が大きく動く


旦那に私の声が聞こえたら手を握り返してと言ってみた

よく意思疎通ができなくなった時に耳は聞こえていて握り返してくれたというのを読んだりしていたからだ

でも旦那は握り返してこなかった


私は姉とLINEでやり取りしていた

旦那は静かに寝ている

旦那の甥っ子が面会に現れた

お姉さんが私にLINEなんかやってる場合じゃないよ!と声をかけた

血圧の数値を見て、あーダメだダメだと言っている

呼吸の回数も表示されていた

1分間に何回呼吸しているかということだろう


今まで言えなかったけど旦那に、

「○○、愛してるよ誰よりも」

と手を握りながら言った

そばにいた甥っ子は照れた顔をしていた

お姉さんは旦那に

「よかったねー、愛してるって言ってくれてるよー」と言った

すると旦那は、

「あああー、ああああああー」

と言葉にならない声でしゃべった

しゃべれないのに最後の力を振り絞って言葉を返してくれた


呼吸の数値を見ると1分間に10回程度になっている

お姉さんは録音していた旦那の実家の近くの海の波の音を旦那の耳元で聴かせた


「○○、ずっとそばにいるよ ○○のことずっと忘れない」

「最後まで仕事を全うして立派に責任を果たした○○のこと私は尊敬してるよ」

「○○!生まれ変わってもまた私の下に現れてよ!」

呼吸はだんだん数値が下がって、7回、5回、3回と下がりついに0を示した

ゆっくりと呼吸をしたのを最後に旦那の呼吸は止まった

○○ー、旦那の名前を呼びながら旦那を抱いた

微かに体はまだ温かかった


殺された!殺された!

旦那はこの病院に殺された!

ひどいよ!ひどいよ!

心で叫んだ


待ち構えていたかのように看護師と主治医ではない医師が現れ、心臓が電気に反応しないので臨終ですと告げた

モルヒネ投与を開始してから1時間とわずかだった

最後はいつもの眠っている時と同じ旦那の顔だった


旦那の51歳の生涯がここで終わった

もう少しで52歳だった

何もやってやれなかった

だけど旦那との33年はいくらケンカをしたって幸せだった

誰よりも旦那を愛してる

何度生まれ変わっても私は旦那を愛する