鎮静剤モルヒネを打つには病院的には事務処理があり決裁がおりないとすぐには実行できないようだ
一体どれぐらい待てばよいのだろう
午前中には来てくれるだろうか
旦那にはもう少しの辛抱だから我慢してちょうだいと言った
手を握り見守ることしかできない
しきりに頭に手をやる
脳から出血してるから頭が痛いんだと思う
どうにかならないものだろうか
旦那とは死んでからの話はよくしたが、看取りそのものは話してなかった
実際は現実感がなかった
数ヶ月後には余命がくるとは覚悟していたが、こんなにも早く心の準備ができないままにこの時が来るとは思いもよらなかった
まるで旅行先で空港に着いたとたんこれからバンジージャンプしてもらいますと言われるような感覚だ
でもその時が来た
私にできることは安心して旦那を旅立たせること
それだけは全うしたい
それにはこうやってそばにいて手を握ること
もう少しだからもう少しだからと旦那に言った
12時を過ぎ看護師が来てモルヒネの準備をした
まるで死刑執行を待つかのようだ
でも個室に移ったことで私はどこか気が緩んでもいた
モルヒネを打つと呼吸が止まってしまうという怖さもあるが、やっと旦那に平穏が訪れるという気持ちもあった
今晩はもう起きないかもしれない旦那を見守ることになるだろうと考えたりしていた
事前にお姉さんにはモルヒネについて聞いていた
昨日は私はLINEで安易にモルヒネは打ちたくない、モルヒネ以外の選択肢はないのか聞いていた
最後まであきらめたくない気持ちがあった
お姉さんはもう限界だとの意見だったが、決めるのは私と旦那だと言われた
もうよくなる見込みはないのだ
私も覚悟を決めていた
12:35 モルヒネ0.5mlの皮下注射が投与された
旦那は自ら注射を刺すために腕を差し出した