しかし病院はこちらから電話をして初めて危篤状態だと言って、もし電話をしなければどうしていたんだろう

危篤状態なら電話をしてくれれば旦那も不安で苦しい夜を過ごさなくて済んだかもしれないのに

ちょいちょい病院には不信感がある


旦那のお姉さんが病室に来た

私は主治医から鎮静剤を打つので準備ができたら看護師に連絡してくれと言われたと報告した

お姉さんはさっき看護師と話してそう伝えたということだった

少し釈然としなかったけどそうかと思い看護師が来るのを待った


みんながいなくなると我慢してたのが耐えきれなくなったのかしきりに酸素マスクを外そうとする

お姉さんは絶対に握った手を離さないでと強く私に言った

左手を握っていた

右手は脳の転移のせいかもう効かなくなっていた

だから左手を握っていてと言われた

必死に手を握った

お姉さんはマスクを外したらもっと苦しくなるよと旦那を叱った

苦しくて身の置きどころがないのだ

旦那はお姉さんが近づくと押し返した

何か怒っているようだ

旦那の気持ちがわからない


旦那を安心させようと旦那の耳元であなたの望むようにするよと言った

今度は私を押し返してきた

とても力がある

まだまだ力があるのだ

私は悲しくなってなぜ怒るのよと泣きながら言った

どうしたら旦那の気持ちがわかるのか

暴れそうになっている旦那に、できることなら代わってやりたいよと泣きながら言った

お姉さんもそうだよ、代わってあげたいよと言った

そしたら旦那はおとなしくなった

酸素は大きく上下する

30まで下がることすらある

看護師はまだ来ないのか

これ以上は待てないとナースコールを押した


旦那にモルヒネを打ってもらうから呼んだよと言った

旦那はそれをはっきりと意識して明らかに表情が変わった

私の顔を見て起き上がって暴れそうになっていたのにとても冷静にベッドに戻った