本当は昨年忘年会をしたかった某料亭の予約がこの日しか取れず忘年会は新年会となった

旦那が私の会社の上司夫妻をご馳走したいと言う

上司というのは会社の代表だ

公私共に多大にお世話になっている

偶然だがわりと近くに住んでいる

もっとも上司は高級住宅街の品のいい人達が住むエリアに住んでいて、うちは庶民的な安いマンションを買って住んでいる

車だとすぐだが、電車だとかなり遠回りになる

昨年末から何度も予約を取ろうとしたが取れずこの日になった

旦那が車で上司の家まで迎えに行って料亭に向かった

私がケチケチして手頃なコースを予約しようとしたら旦那が怒ってもっといいコースにしろと言ってまあまあのコースを予約した

旦那はこれまでの御礼を生きてるうちにしたかったんだと思う

上司にはいつもご馳走になってばかりだった

先月末に余命半年以内と聞かされていたので上司の奥様も心配してくれていたが旦那の太った元気な姿を見て驚いたようだ

私には抗がん剤で抜けた髪や眉毛が痛々しく元気には思えてなかったけど他人からはそう見えるらしい

みんな癌というと痩せて頬がこけた姿を想像するようだ

たしかに旦那はやつれた様子はない

元々大食漢だ


うちの家族には旦那が癌だということを話してない

すぐ上の姉にだけ話していた

先月末の余命の話から旦那はうちの家族にも話した方がいいんじゃないかと言っていた

私は家族に話すのはよくなった時か、逆に悪くなった時と思っていた

今はどちらでもない

話すことで旦那の余命が現実になる気がして怖くて話せなかった

旦那にはそう伝えたらわかったと言った

でも姉にはこっちに来てもらった方がいいんじゃないかと思っていた

姉の旦那さんは定年退職して今仕事をしていない

姉もパートを先月やめて今仕事探し中だ

ちょうど1年前も旦那が癌とわかって夫婦で来てくれた

2人でこっち来たらと話したかったのに話せなかった

家族のグループLINEにこの日の旦那の写真を送ったらみんな旦那を見事に頭禿げ上がったねえと笑っていた

元々旦那はハゲでそれをネタにしていた

私はハゲ進行したのよと返した

誰も旦那が癌だとは気づかなかった


この日の上司は私ががんセンターに行く話をしていたのでがんセンターに転院したら治るとしきりに言っていた

上司は以前診察に同行して主治医とバトルしたので主治医をよく思ってない

がんセンターに転院すると通院が難しくなる

車で40分かかるとなると仕事を続けながらだと大変だ

そうなると入院となるかもしれない

それが私は気がかりだ

入院したら途端に体力が落ちるのが心配だ

私の父もそうだった

でもがんセンターなら専門的な治療を受けられるだろう

来週はがんゲノムの診察がある

それで決めるか