今から24年前の平成7年。
私は、ある番組を見てゐた。
NNN「けふの出來事」である。
櫻井よしこさんが出演してゐた。
この頃、「藥害エイズ事件」の報道があつた。
エイズウイルスが混入した血液製劑を使用した血友病患者が、
大勢亡くなるといふ事件。
その中で、責任者とされたのが、
帝京大學副學長の安部英氏である。
櫻井氏は、安部氏に注目し、街頭で話を聞かうと、
マイクを向け、接觸を試みる。
冒頭に出た言葉が、表題である。
「安部先生・・・」とマイクを向ける櫻井氏。
安部氏、黒いコートを着てゐたな。
眼鏡はかけてゐなかつた。
安部氏の反應といふと・・・。
まずカメラを押したのだ。
映像が亂れた。
私の記憶では、バタ、バタ、と音がしてゐた。
食ひ下がる櫻井氏とカメラマン。
安部氏は、カメラを小突き、反擊する。
私の朧げな記憶では、
カメラマンを蹴飛ばしてゐた?
これは、記憶違ひかもしれない。
その後、國會の參考人招致では、
眞つすぐに右手を擧げ、
「失禮ですが、
責任とは何でせうか、
私に責任はあるので
せうか。」
と、質問者の議員に迫つてゐた。
これは、新聞で大きな寫眞があつた。
別の會見でも、
「私を、魔女狩りのやうに責めて・・」
と例の甲高い聲で反論してゐた。
この事件、安部氏は無罪判決となる。
眞相は、私には分からぬ。
事件について意見を述べることはできない。
そのやうな力量はない。
ただ、あの當時、安部氏を見て、
「本當にこの人が一番惡いの?
もつと惡い人がゐるのでは?
役人は?」
と思つたことはある。
安部氏は、平成13年、
地裁での無罪判決後、病の爲、
公判停止。
平成17年4月25日死去、享年88歲。
判決は確定しなかつた。
何故か、あの櫻井氏の取材映像は、覺えてゐるのだ。