私が昔から親しんでいる、北海道のラジオ局、STV札幌ラジオは大きな改編期を迎えた。
私が大好きなパーソナリティ、アナウンサーの方が12年ぶりにラジオに復帰、の話を聞いた時は感激したが、
その数週間前、最もラジオに夢中になっていた中学生時代に聞いていた深夜番組「アタックヤング」の終了を嫁から聞かされた時は、大きなショックを受けた。
(1970年スタートの番組は3月31日ウエスギ専務こと上杉周大氏担当の回が最後の放送となった。)
そして平日朝の番組で「オハヨー!ほっかいどう」という、こちらも1975年から続いている番組がある。
その番組を担当していたのは巻山晃(まきやま・あきら)さんというアナウンサー。
現在75歳、アナウンサー歴52年。
1964年4月にSTVに入社し、アナウンサーとしての仕事をスタート。
2003年の定年退職まで、数多くのニュース。テレビ、ラジオ番組を担当。
定年退職後もフリーの立場で引き続き「オハヨー!ほっかいどう」を担当した。
「オハヨー!ほっかいどう」のメインパーソナリティになったのは1987年。
それから29年もの長い間番組を支え続けた方。
その巻山さんが、先日3月30日、健康上の理由の為、番組を卒業、アナウンサーを引退、勇退された。
実は私は昨年、チカホ空間のSTVのイベントで巻山さんにお会いして話をする機会があった。
ラジオから流れる声を聞いて、とても温かい人柄の方なんじゃないかな?とイメージしていたが、まさにそのイメージ通りの方だった。
その時に私はこんな事を話した。
「久しぶりに「オハヨー!ほっかいどう」を聞いて、巻山さんの凄さを実感しました。
声の安心感、安定感が巻山さんは全然違うんですよね。
これはやっぱり長年活動されてきたからなんでしょうね。」
「いやいや、そんな…」
そんなやり取りの中にも温かいお人柄が感じ取れたほどだった。
学校で居場所を見つけられず、ラジオに夢中になって、まさにラジオだけが友達だったような時期、意味も無く徹夜をして深夜ラジオを聞いていて、気がつけば巻山さんの
「全道~…のそして全国の早起きの皆様、おはようございます!」
の声で目を覚ました、なんて事もある。
あの時期、自分の気持ちを救ってくれたのは深夜の時間帯のラジオだけではなかった。
その3月30日、仕事に行く前に、使い慣れないラジオ録音ソフトウェアを駆使し、録音のタイマーをしかけた。
どうも使い慣れない、本当に大丈夫か?と不安になり、そのソフトをチェックしてみた。
無事に録音されていた!
いつもと変わらない巻山さん。
泣きそうになったところ、巻山さんの冗談で笑い声を上げたアシスタントの小笠原さん。
長年番組を聞いていたリスナーの皆さんからの沢山のメールや手紙、
「巻山さん、本当にお疲れ様でした。これ、皆さんで召し上がってください。」と地元の名産品やお菓子、お花を届けた方、中には何と直接局に届けに行った方までいたそうだ。
「巻山さんの声が聞けなくなると思うと寂しくなります。」
「今後は奥様、家族皆さんでゆっくりとお過ごし下さい。人生はこれからですよ!」
「長年本当にありがとうございました。」
沢山のメールやお便りを読む巻山さん。
そして最後の巻山さんのご挨拶。
「ああ、本当に巻山さん最後なんだな…」
聞いているこっちも胸が熱くなりそうになる。
そのご挨拶の中で何と同じ時間帯、他局、裏番組のパーソナリティの方まで
「巻山さん、本当に長い間お疲れ様でした。」とご挨拶していた、という事を話していた。
最後のご挨拶の一つ一つを噛み締めるように聞いて、番組は終わった。
…「慕われる」というのはこういう事を言うのかな、と思った。
本当に素晴らしいアナウンサー、パーソナリティでした。